スケールの大きな漫画というのは、往々にしてウケやすい。 そんなのは当たり前のことだ。そういう漫画は読んでいてワクワクするし、予想もつかない話の展開に読者が釘付けになるからだ。 古谷実の描く漫画は、そういった大きなスケールというものからはかけ離れている。にも関わらず古谷作品が面白いのは、描くテーマが一貫しているからではなかろうか。 古谷実という漫画家の描く世界は、そのほとんどが将来に希望を見い出せないでいる少年たちが主人公だ。彼等は常に小さな世界で生きることを望み、決して大きな一歩を踏み出そうとはしない。極めて現実的でシュールな考えを持ち、周りに悪影響を及ぼすこともしばしばある。 いわゆる"青春時代"の少年にありがちなコンプレックスやジレンマを持っていながらも、その本質は他の少年たちと比較すれば、極端に偏っていたり、変態的であったりする。 古谷作品では、現実世界ではほとんど考えられないことだ