先日当館で終わったばかりの「表現の生態系 世界との関係をつくりかえる」展について、もっとも多く耳にした感想は美術館と博物館の展示を横断している、というものだった。それは確かにその通りだが、企画意図とは無関係だと思って真剣に受け止めていなかった。しかし、今更ながらそうした感想に込められた「横断」することへの肯定的な見方について考えてみる必要性がありそうだ。 「美術館」や「アート」のそもそもの役割 この展覧会をつくろうと考えたきっかけは、地域の文化や歴史、あるいは教育や福祉と関わるアートプロジェクトを実施してきた経験を踏まえて、「美術館」や「アート」のそもそもの役割とは何かを見つめ直したいというものだった。展覧会というかたちでは表に出ない、アートプロジェクトなどの継続的な活動は、地域や個人などとの密接な関係性に支えられているため、批評的に考える機会を持つのは簡単ではない。しかし、美術館であれば