幼児教育の無償化はマジックか?――日本の現状から出発した緻密な議論を 赤林英夫 教育の経済学/家族の経済学 教育 #幼児教育無償化 政府は幼児教育の無償化を早期に実現するという。子どもの貧困や教育格差が解決されるかのような美しい響きとは裏腹に、その目的は曖昧で、何が達成できるのかもほとんど議論されていない。どのような政策決定も、事実確認と論理的思考に基づく必要があるが、「幼児期の教育投資は収益率が高い」「国際的に見劣りする公的教育支出」と言った大義名分だけが先行して政策が作られようとしている。 我が国で幼児教育を無償化すべきという根拠として、幼児教育の収益率、すなわち所得上昇や経済成長への寄与が高いというノーベル賞受賞者のヘックマン氏の研究結果が「エビデンス=根拠」として引用されることが多い。しかしこれは米国と日本の社会的背景の違いを無視した暴論である。 米国は先進国の中でも就学前教育(米