話題の書『絶歌』を読んだ。出版自体の倫理を問う声もあるが、何らかの精神的な病理を抱え、それが犯行にも関与しているはずの元少年のこの手記を読まないわけにはいかない。 世間の感想とはかなり違うと思うが、私は一読して「痛々しい」と思った。当時は精神鑑定で「行為障害」という診断名を与えられたが、元少年は当時もいまも感情のない世界を生きている。おそらくその原因は、男性の脳の構造や機能の特徴というか、機能不全に由来するものだろう。 それは本質的には変わっていないし、そのことを本当の意味で異常だとは実感できないままだ。だから、こんな手記を書いてしまったのだろう。というより、彼にはこれしか書けなかったのだ。世間の人が言うような、自己陶酔でも自己顕示でもないと思う。彼なりに少年院やその後の生活で一生懸命、「感情とは何か」ということを“学習”し、それなりの成果はあげている。これはその発表なのだが、世間の基準か
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