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ブックマーク / newsweekjapan.jp (63)

  • 危機の第3幕は国家の財政破綻か

    世界経済危機の第1幕が銀行危機で、第2幕が景気後退だったとすれば、最終幕は国家の財政危機だろう。IMFによると、先進国の政府債務の対GDP比は、08年に75%だったのが14年までに115%という過去最高の水準に膨れ上がる(60%が一般に維持可能な水準といわれている)。 政府債務を維持可能な水準まで減らすための道程として、IMFは9月にこんな数値を発表した。10年に各国平均3・5%と見込まれる財政赤字を20年までに4・5%の財政黒字へと転換させ、さらにその後10年間は、事業の凍結や給付の削減で黒字レベルを維持しないといけない──。ただし、それほどの緊縮財政を実行できた惑星はまだ発見されていない。 世界経済を引っ張る先進国経済が、同時に莫大な財政赤字を抱え込むとどうなるのか。天井知らずのインフレから日型低成長の「世界拡大版」まで、予想されるシナリオはさまざまだ。1930年代以降、先進国が債務

  • 先進国がデフォルトする日

    次第に現実味を帯びてきた債務不履行。日米などが借金を続けられるのは、投資家の信認が保たれている間だけだ 先進国の政府が貸し手に「借りた金は返さない」と宣言する事態が起き得ると聞かされても、少し前なら誰も信じなかっただろう。アルゼンチンやロシアならともかく、まさかアメリカや日やイギリスに限ってそんなこと......。 その「まさか」がすぐに起きるとは思わないが、あながちあり得ない話とは言い切れなくなってきた。裕福な国々の政府が多額の借金を続けているので、「貸し手は将来も貸し出しを続け、政府はこれからも借金返済を続ける」という前提が崩れる日が訪れるかもしれない。 そんな事態に陥ったら世界にどんな影響が及ぶだろう。歴史を振り返っても、ほとんどヒントは見つからない。この疑問を考える上で重要なのは人間の心理だ。 別の大きな問題を元に考えてみよう。ドルが市場の信認を失って売られ、円やユーロ、金、原油

    iGucci
    iGucci 2010/07/05
    「今までうまくいったからといって、日本やアメリカなど先進国政府が好きなだけ借金できると考えるのは誤りだ。好きなだけ借りられるのは投資家の信認が保たれている間だけ。その信認はいつか消え去るかもしれない」
  • 欧州の新リーダー、メルケルの憂鬱

    欧州最大の経済を率い、金融危機を水際でい止めているドイツ首相。だが経済や安全保障の「現状維持」を求める国民のために、EUが必要とする指導的役割を避け続けている 債務にあえぐヨーロッパの国々をのみ込みつつある危機が、EU(欧州連合)内の深い亀裂をあらわにしている。特に欧州単一通貨ユーロ圏16カ国の間の溝は深刻だ。 ギリシャが債務不履行に陥るのではないかという不安は、3月に入りスペインに飛び火し始めた。ギリシャよりはるかに大規模なスペイン経済は、20%に達する失業率、長引く不況、GDP(国内総生産)の約12%に達する財政赤字という悪循環に陥っている。 ポルトガル、アイルランド、イタリアも似たような状況だ。フランスやドイツなどEUの裕福な国々は、苦しむ隣人たちに直接の金融支援をするつもりがない。 先行きが見えず、財政危機がさらに広まるのではないかという不安から、ユーロはわずか3カ月の間に対ドル

    iGucci
    iGucci 2010/07/05
    「冷静で現実的なメルケルは、対立関係をさばいて合意を打ち出す才能を実証してきた。現時点で彼女にかなう指導者はいない。サルコジ仏大統領は予測不可能で落ち着きがない。ブラウン英首相は事実上の「死に体」。」
  • ドイツはギリシャの財布じゃない

    無人島でもアクロポリスでも売ればいい──放漫ギリシャの救済に反感を募らせるドイツ人。戦争の借りを払わされ続けるのはもうたくさん? 「島を売れ、破産者ギリシャ人め。アクロポリスも売ってしまえ!」 ──2010年3月4日付け、ドイツ最大の大衆紙「ビルト」の見出しより。 この手のタブロイド紙の編集者は、多少正確でなくても話の核心だけ抜き出して見出しを付けることがある。上記ビルト紙の見出しはアンゲラ・メルケル独首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)のヨゼフ・シュラーマン議員の言葉を引用しているが、実際のコメントはこうだった。「破産した者は持ち物すべてを金に換えて、債権者に返還しなければならない......ギリシャは借金返済に使えそうなビルや企業、数々の無人島を所有している」 しかし彼が意味するところは、ビルト紙の見出しの方が正確に伝えているようだ。つまり、ドイツ人はヨーロッパのために金を払うのにう

  • 世界経済の上下が逆転する

    最近ヨーロッパでは失態が続いている。 アイスランドの火山噴火に対する対応の不手際は、ネット上で冗談のネタにされた。「ヨーロッパより、(深刻な金融危機に見舞われ、他の欧州諸国の預金者の口座を一時凍結した)アイスランドへのメッセージ──ash(灰)じゃなくてcash(現金)を送れと言ったのに」という冗談は傑作だった。 それはさておき、最悪の失態の1つはギリシャが自国を「新興市場」としてPRしようとしたことだ。ギリシャは4月、資金調達のための国債発行に際し、途上国並みの高い利回りを売り文句にする始末だった(当然リスクも高い)。 文明の発祥地であるギリシャが名も知れぬ小国のように振る舞うとは、何とも嘆かわしい。今や貧困国に転落したギリシャは、IMF(国際通貨基金)とEU(欧州連合)による最大450億ユーロ(約5兆7100億円)の緊急融資を受けることになりそうだ。 しかしヨーロッパにはギリシャの上を

  • ギリシャ発、福祉国家「死のスパイラル」

    ギリシャ危機の元凶は手厚い社会保障の過大な負担が引き起こした負のスパイラル。同じ運命が、多くの先進国を待ち受けている ギリシャでは今、福祉国家が陥る「死のスパイラル」が起きている。といっても、ギリシャだけの問題ではない。だからこそ、ギリシャの財政危機によって世界の株式市場が混乱し、経済危機からの復活の芽が脅かされている。 アメリカを含む事実上すべての先進国が、ギリシャと同じ現実──高齢化で医療費と年金の支出がかさみ、税収だけではまかないきれない──に直面している。今回、財政破綻の危機に陥ったのはギリシャだったが、ほとんどの富裕国に同じような未来が待ち受けている。 国家が過剰な支出や借金を永遠に続けることはできない。なのに、政府は歳出削減と増税という厳しい決断を先延ばし、自ら袋小路に入り込んでいく。 裏切られたユーロへの過剰な期待 ギリシャの財政危機は単一通貨ユーロの危機と論じられることが多

    iGucci
    iGucci 2010/07/05
    「ギリシャと他国に本質的な違いはない」???
  • ユーロの夢が終わる日

    ギリシャの財政危機と暴動は、もっと大きな危機の序章にすぎない。第2幕では統一通貨が消滅する可能性もある 英語には古代アテネの人々から拝借した単語が多く含まれている。危機という意味の「crisis」もその1つ。語源は「病気の分岐点」を意味するギリシャ語の「krisis」だ。 そして今、古代ギリシャの子孫たちは「危機」の当の意味を私たちに見せつけようとしている。そろそろ「景気回復」という言葉を使ってもいい──そう考え始めたところで火を噴いたギリシャの財政危機は、世界経済に暗い影を投げ掛け、世界第2の通貨ユーロの存在自体を脅かしている。 ほんの10年前まで、EU(欧州連合)の単一通貨ユーロと経済通貨同盟(EMU)は素晴らしいアイデアに思えた。EUは既に共通の法制度を持つ政治体としても貿易ブロックとしても、驚異的なレベルの統合を成し遂げていた。 EMUはいいことずくめの制度に見えた。1970年代

  • アメリカは欧州経済の道連れになるか

    景気は上向いてきたが、安心もしていられないというのが世間の実感だろう。 この春、アメリカの就業者数はようやく少しずつだが増加に転じた。だが今、ヨーロッパを揺るがしている問題(アメリカをノックアウトした08年の信用危機をほうふつとさせるものも含まれる)が、アメリカの株式市場や経済全般に大きな打撃を与えるのではとの懸念が生まれている。 たしかに心配すべき理由がないわけではないが、パニックになる必要はない。今回のヨーロッパの問題はアメリカにとって、短期的にはいい面もある。 例えばフランスのニコラ・サルコジ大統領は1月、経済におけるアメリカのリーダーシップは終わったなどと豪語していた。だが今ではすっかり高慢の鼻も折られたことだろう。もっとも将来的には、アメリカへの悪影響も考えられる。 今回のヨーロッパの問題は国債市場から始まった。財政赤字がふくれあがり資金繰りが苦しくなったギリシャやスペインやポル

  • 崩壊危機でもユーロに参加する事情

    ユーロ圏の崩壊を危ぶむ声も聞かれるなか、ユーロ擁護派が勢いづく決定が発表された。エストニアが導入基準を満たしたとして、正式参加を7月に認められる見通しとなったのだ。これでユーロ導入国は17カ国になる。「ユーロ圏を脱出する国々の行列などない。参加を待つ行列があるだけだ」と、オリ・レーン欧州委員(経済・通貨問題担当)は誇らしげに語った。 もっとも、エストニアには特殊な事情がある。既に通貨クローンはユーロに連動しており、ユーロを導入した場合と同様のリスクを経験している。しかも貿易頼みの小国にとって、主要通貨圏に入ることは魅力的な選択肢だ。 受け入れ側も消極的に これとは対照的に、他の未参加国はますます及び腰になっているようだ。イギリスとデンマークを除くすべてのEU(欧州連合)加盟国は、必要な経済条件を満たした時点でのユーロ導入を義務付けられている。しかし、ポーランドやチェコでは導入支持の世論が約

    iGucci
    iGucci 2010/07/05
    「エストニアが導入基準を満たしたとして、正式参加を7月に認められる見通しとなった」
  • イラン核問題は新興国に任せて?

    トルコとブラジルが思わぬ外交得点を挙げた。両国の説得で5月17日、イランが低濃縮ウランの一部国外搬出に合意。膠着状態にあるイランの核問題解決に向けた突破口となる可能性もなくはない。 このトルコとブラジルの動きは、ジョージ・W・ブッシュ時代の善悪二元論の世界観では蚊帳の外に置かれていた国々が影響力を強めていることの表れだ。 今回合意された内容では、イランは保有する低濃縮ウランの半分強に当たる1・2トンをトルコに搬送し、イラン国外で医療用に加工されたウラン燃料と交換するという。放射線治療などの医療目的や原子力発電のためといった「平和的開発」を口実に、イラン政府は尋常ではない量のウラン濃縮を行ってきた。 もちろん、この口実をうのみにする者はほとんどいない。ヒラリー・クリントン米国務長官は 5月18日、上院外交委員会で、国連安全保障理事会常任理事国5カ国が対イラン追加制裁の米草案に同意したと発表。

  • 名を捨て実を取るオバマ流リセットの勝算

    オバマ米大統領とメドベージェフ露大統領の首脳会談が6月24日、ホワイトハウスで行われた。現在の米ロ関係は、95年のクリントン大統領のモスクワ訪問以来の雪解けムード。両国は今回の会談で、対イラン制裁やヨーロッパのミサイル防衛構想、NATO東方拡大の事実上の中止など、多くの重要課題で合意に達した。 とはいえアメリカばかりが譲歩している印象が残る。ポーランドとチェコへのミサイル配備は中止。親米国のグルジアをロシアが占領していることも、ほぼ既成事実扱い。ロシア国内の集会の自由に対する締め付け強化や、服役中の石油富豪ミハイル・ホドルコフスキーの新たな裁判についても沈黙を守っている。 ロシアは、アフガニスタンでの軍事作戦に不可欠なキルギスの米空軍基地を閉鎖させようとするのをやめた。4月には新しい戦略兵器削減条約(START)に調印。5月には(手ぬるい内容ながら)対イラン制裁に合意したが、アメリカの見返

  • 高くついた?オバマの対露リセット外交

    オバマ米大統領とメドベージェフ露大統領の首脳会談が6月24日、ホワイトハウスで行われた。現在の米ロ関係は、95年のクリントン大統領のモスクワ訪問以来の雪解けムード。両国は今回の会談で、対イラン制裁やヨーロッパのミサイル防衛構想、NATO東方拡大の事実上の中止など、多くの重要課題で合意に達した。 とはいえアメリカばかりが譲歩している印象が残る。ポーランドとチェコへのミサイル配備は中止。親米国のグルジアをロシアが占領していることも、ほぼ既成事実扱い。ロシア国内の集会の自由に対する締め付け強化や、服役中の石油富豪ミハイル・ホドルコフスキーの新たな裁判についても沈黙を守っている。 ロシアは、アフガニスタンでの軍事作戦に不可欠なキルギスの米空軍基地を閉鎖させようとするのをやめた。4月には新しい戦略兵器削減条約(START)に調印。5月には(手ぬるい内容ながら)対イラン制裁に合意したが、アメリカの見返

  • 混迷G20に答えを出せない経済学

    処方箋は? オバマもG20の他の首脳も、景気の二番底を回避したい思いは共通だったが(6月27日、トロントで) Jason Reed-Reuters 経済学者と政治哲学者の思想は、それが正しい時でも間違っている時でも、一般に考えられているよりはるかに強い影響力をもっている。自分はどんな知的制約とも無関係だと考える実際的な人間も、知らないうちに何かいかれた経済学の奴隷になっているほうが普通だ。 ──イギリス人経済学者 ジョン・メイナード・ケインズ(1883〜1946) 世界各国は、元気のない経済を活性化するために何か手を打つべきだ──誰もがそう思っている。誰も景気の二番底など見たくない。週末にカナダのトロントで開かれた世界20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)も、それだけは回避する決意に満ちていた。 OECD(経済協力開発機構)を構成する先進31カ国の失業者数は、07年以降50%増加して

  • 銃所持を支持する新リベラル派

    ──規律ある民兵は自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない。(合衆国憲法修正第2条) 憲法説明責任センター(CAC)は、「合衆国憲法の文と歴史に示された進歩的な約束の実現」を目的とする団体。08年の設立当初は、よくあるリベラル派の法的権利擁護グループに見えた。 実際、CACはリベラル派の運動一般を幅広く支援してきた。カリフォルニア州の温室効果ガス排出規制の取り組みや、「移民の刑事被告人のための正当な法的保護」には特に力を入れている。 そのCACがシカゴ市当局による銃規制の是非を争う「マクドナルド対シカゴ市裁判」について、3月2日の口頭弁論を前に意見書を連邦最高裁判所に提出した。そう聞けば、普通は被告のシカゴ市に味方する意見書だと思う。 残念ながら答えはノーだ。リベラル派は長年、憲法修正第2条にある武器保有の権利は州兵の設立のみ

  • 参院選が問うのは消費税ではない

    6月24日に公示された参院選で、440人の候補者が121議席をめぐって選挙戦を繰り広げている。 菅直人首相が鳩山由紀夫から民主党党首と首相の座を引き継いだことで、今回の選挙の重要性が浮き彫りになった。5月まで、参院選は鳩山と小沢一郎元幹事長のリーダーシップを問う国民投票という位置づけで世論調査で民主党の勝利は難しいと見られていた。 しかし、参院選は今や日の未来を占う選挙となっており、昨年の歴史的な衆院選以上にこの国の将来を左右するかもしれない。民主党が参院の過半数を確保すれば、衆院を解散しない限りこの先3年間は選挙の心配をしなくて済む。短命政権なら手を出せない消費税引き上げといった難しい政治的決断も、3年かけてじっくり議論することができる。 だからこそ、今回の参院選は日の未来にとって重要だ。日国民にとって、選択肢は明らかだろう。民主党政権下で、今の日には前任者にないものすべてをもつ

  • さらに大き過ぎて潰せなくなる銀行

    黄色は進め? 6月25日に上下両院が合意した金融規制改革法案では危機の再発を防げない Lucas Jackson-Reuters 6月25日の早朝、アメリカの上下両院は金融規制改革法案の一化で合意した。バラク・オバマ大統領はこの日、同法案を「大恐慌以来最も厳しい金融改革」と称賛した。 確かにこの法案には、07〜09年の金融危機を招いた問題点を改めるために、さまざまな措置が盛り込まれている。デリバティブ(金融派生商品)取引の透明化、銀行およびクレジットカード会社、住宅ローン会社に対する強力な監視機関の創設、経営難の金融機関を政府が清算するための新しい手段の導入などは、効果がありそうだ。 しかしある面で、今回の法案は、大恐慌直後の1933年に制定されたグラス・スティーガル法に及ばない。銀行と証券の分離などを定めたグラス・スティーガル法は、金融システムの構造と金融機関の形態を大きく様変わりさせ

  • オバマのBPたたきに政界は猛反発

    メキシコ湾原油流出事故で英石油大手BPは6月16日、被害補償原資として200億ドルを拠出するとオバマ米大統領に約束した。社名変更前の「ブリティッシュ・ペトロリアム」と呼び、批判の矛先をイギリスに向けたオバマの怒りがBPを動かしたのかもしれない。ただイギリスも黙ってはいない。 英保守党の重鎮ノーマン・テビット元幹事長は、英紙への寄稿でオバマの言葉について「党派政治家たる大統領の、多国籍企業に対する排外主義的パフォーマンス」と批判。保守党のロンドン市長ボリス・ジョンソンも、年金基金が運用するBP株の額の大きさを考えれば「(BPが)公共の電波でたたかれ続けることは国家的な懸念だ」と述べた。4月20日の事故発生以来、BP株は40%以上値下がりしている。 オバマ政権がイギリスの国益を損なう発言を続ければ、代償は思わぬ形で返ってくるかもしれない。保守派のイギリス人ジャーナリスト、ジェフリー・ウィートク

  • それでも海底油田をやめられない国々

    海の要塞 ブラジル国営石油会社ペトロブラスが操業するリオデジャネイロ近海の石油プラットフォーム Bruno Domingos-Reuters BPがメキシコ湾で起こした原油流出事故に関し、6月15日の米下院公聴会には石油メジャーのエクソンモービル、シェブロン、シェル、コノコフィリップスの幹部が出席。証言では、自分たちはBPと違うと口をそろえた。 さらにメキシコ湾の海底油田開発におけるBPのパートナーであるアナダルコペトロリウムも批判を開始。BPの「無謀な行動」が事故を招いたとして、自社への非難をかわそうとした。こうした動きを見れば、石油業界全体が怯えていることが分かるだろう。 では、何を怯えているのか? まず考えられるのは、大惨事となった原油流出事故によって将来の、またはすでに許可が下りているメキシコ湾での海底油田掘削権が永久に失われることだ。その影響はメキシコ湾にとどまらず、世界中の海底

  • 世俗主義を捨ててイスラム強国に変身?

    1世紀近くにわたって欧米への接近を続けてきたトルコが、その路線を変更しつつある。 国連安全保障理事会のイランへの追加制裁決議で、予想されていたとおりトルコが反対票を投じた。さらにエルドアン首相は6月8日、ボスポラス海峡の豪華ホテルでロシアのプーチン首相やシリアのアサド大統領をもてなした。今年トルコが、中東やアジアの主要国首脳が参加するアジア相互協力信頼醸成会議の議長国になったからだ。 イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに向かう支援船団を拿捕した事件で、トルコ政府はイスラエルを厳しく糾弾して国民の支持を集めている。「ガザ支援船に象徴される最近のトルコの外交姿勢がNATO諸国を動揺させている」と、米マサチューセッツ工科大学のフォティニ・クリスティア助教授(政治学)は言う。「これまでトルコは世俗主義を前面に打ち出してきたが、今はかつてなくイスラム国としての立場を外交に投影している」 ただこれまで

  • 菅流「第3の道」カギは日米同盟?

    遅ればせながら、日にも「第3の道」がやって来た。「第3の道」とは、90年代に欧米の中道左派指導者が好んだ政治スタイル。新自由主義的な経済思想の台頭と財政の緊縮化という大きな潮流と、中道左派の福祉国家的な政治理念の折り合いをつけるために打ち出された政治路線だ。 ほかの先進国と異なり、これまで日で「第3の道」が脚光を浴びることはなかった。しかし菅直人が首相に就任し、「第3の道」が日で新しい命を得るかもしれない。 6月11日に国会で行った所信表明演説で、菅は日経済を再建するために「第3の道」を歩む必要性を強調。具体的には、「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」を同時に実現するための政策を実行する方針を示した。 菅は、小泉純一郎元首相以降の日の歴代首相のなかでは最も雄弁に経済政策を語ったと言っていいだろう(少なくとも、鳩山由紀夫前首相流の曖昧で現実感の乏しいトリックはほとんどなかった)