七月十六日(1) 「――動くな!」 活気溢れる銀行内にお決まりの怒号が響き渡る。 雑多な小火器を片手に振り翳し、申し分程度に口布を着用する三人組は何処に行っても一目で判別出来るぐらい立派な銀行強盗だった。 「……やれやれ。何で銀行に金下ろしに行く度に、ああいう輩と必ず遭遇するのかねぇ。不幸だわ」 多くの客人が突然の事に立ち竦み、仕事に従事していた銀行員達も日常を脅かす理不尽な強盗達の存在に動揺する。 そんな中、ワイシャツの裾をだらしなく出した赤髪の少年は、緊迫した空気を読まずに窓口に歩いて、無言で通帳と一枚の書類を提出する。書かれた金額は五万円ジャストだった。 窓口の女性が「え?」と疑問符を浮かべる中、銀行強盗達は自分達の警告を無視して平然と動いた少年に視線が集中した。 「テメェ、何動いてやがるっ!」 彼等は怒りで眉間を歪め、銃口を一斉に少年に向ける。 銃の引き金を引こうとする人差し指に力