これを夢だと認識できたのは、その光景が記憶の中にあったことと―――どれほど願っても、もう二度と会うことの出来ない顔ぶれがそこにあったからだ。 築10年ほどの市営マンションの三階。一組の夫婦が暮らすには丁度良く、その夫婦が新婚で、これから家族が増えることを考えると少し手狭なリビングで―――三人の男女が顔を付き合わせていた。一人は灰皿に押し付けた長いままの煙草を名残惜しそうに眺めながら憮然としている青年。一人はその青年と何処かに通っているが、表情は柔らかい青年。最後の一人は背中にかかる髪を一つに括った女性だ。 そしてその女性が瞳を輝かせて身を乗り出し、対面で憮然とした表情のままの青年に言葉を放った。 『―――で?で?で?ショウジ君はそろそろ良い人はいないのかなぁ?』 『あぁ?馬鹿か天姉ぇ。いや馬鹿だ天姉ぇ。―――今の俺にそんな暇あると思うか?』 舌打ちして吐き捨てるショウジと呼ばれた青年に、し