タグ

ブックマーク / davitrice.hatenadiary.jp (10)

  • 理性と論理に基づくリベラリズム(読書メモ『Liberalism : the basics』) - 道徳的動物日記

    Liberalism: The Basics (English Edition) 作者:Charvet, John Routledge Amazon 次のの執筆に向けて昨年からリベラリズムのことを勉強し続けているうちに気が尽かされたのだが、哲学や理論としてのリベラリズムの入門書は意外なほどに少ない。 中公新書の『リベラルとは何か』は思想史や哲学の話題は半分以下であり後半は現代の政治状況や国家制度の話が主であったし、オックスフォードのベリーショートイントロダクションの翻訳であるマイケル・フリーデンの『リベラリズムとは何か』も思想史がメインであって哲学としてのリベラリズム理論を解説するものではなかった(むしろ、ジョン・ロールズの扱いの悪さにあらわれているように、フリーデンは厳密な哲学的議論を嫌っているという印象も受ける)*1。 わたしがこれまでに読んできたでとくにリベラリズムの理論が勉強で

    理性と論理に基づくリベラリズム(読書メモ『Liberalism : the basics』) - 道徳的動物日記
  • 「進化政治学」はそんなにおかしいのか? - 道徳的動物日記

    www.asahi.com note.com 広島大学の伊藤隆太氏の発言が差別的であるとして問題視されており、それにあわせて、彼の研究分野である「進化政治学」も批判の対象となっている。 わたしの目から見ても伊藤氏の発言のうちのいくつかは差別的であり、解雇まで求めることが妥当であるかどうかはともかくとして、批判は免れないものだと思う*1。 しかし、Twitterなどでは、伊藤氏の差別発言が問題であるからと言って、彼の研究している学問分野までもが安直にレッテルを貼られて否定される、という風潮が散見される。それも、ほかの分野の学者たちがレッテル貼りや否定の先鋒に立っているようで、かなり嘆かわしい事態だ。 たとえば、シノドスに掲載されたオピニオン記事と、それに対する反応のひとつが、下記のようなものである。 synodos.jp これはあまりにも粗雑な論の立て方。遺伝子を政治的な意思決定と結ぶなど跳

    「進化政治学」はそんなにおかしいのか? - 道徳的動物日記
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2021/08/13
    “環境に適応するための性淘汰や自然淘汰に適応するための進化的な経緯” それは適応。果たして進化か?
  • メモ:「性的モノ化」とはなんぞや、村上春樹の『女のいない男たち』 - 道徳的動物日記

    女のいない男たち (文春文庫) 作者:村上春樹 発売日: 2016/10/07 メディア: Kindle版 先日に友人とやったラジオで「性的モノ化」に関することを口にしたけれど、自分で言っていてこの言葉についてきちんと理解していないことに気が付いたので、ちょっと調べてメモをまとめることにした。 まず、江口先生の現代ビジネスの記事。 gendai.ismedia.jp 女性を「性的対象物」として描くこと、あるいは「性的モノ化」「性的客体化」などと訳されている言葉と概念は、フェミニズム思想の最重要キーワードの一つだ。 この言葉は英語では”sexual objectification” であり、男性が支配的な社会においては、女性たちが性的な「オブジェクト」、すなわち単なる物体(モノ)として扱われているということを指す。現代社会においては、男性は「能動的な主体」であるのに対し、女性は「受動的(受け

    メモ:「性的モノ化」とはなんぞや、村上春樹の『女のいない男たち』 - 道徳的動物日記
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2021/03/14
    モノ化と言う翻訳でなくobjectification。一方的に対象をカテゴリーとして主体のない客体として扱う。という含意が抜け落ちていますね。一方的に女性性にそのような役割を押し付けていること。
  • 「人生の意味」の進化心理学 - 道徳的動物日記

    野蛮な進化心理学―殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎 作者:ダグラス・ケンリック 発売日: 2014/07/18 メディア: 単行 ダグラス・ケンリックの『野蛮な進化心理学:殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎』の白眉は、やはり、第七章の「マズローと新しいピラミッド」だろう。 このについて紹介している他のブログの記事やTogetterまとめでも、この章がメインとして扱われている*1。 画像もいろいろとネットに転がっているので、貼り付けてしまおう。上が「マズローのピラミッド」で、下が「ケンリックのピラミッド」だ。 なお、「ケンリックのピラミッド」は「生活史理論」によって補強されるものである、ということには言及しておくべきだろう。 生活史理論は、「どんな動物の生涯も二つないし三つの段階に分けられ、それぞれで投資におけるトレードオフが異なる」 (p.237)という発想に基づく。人間の場

    「人生の意味」の進化心理学 - 道徳的動物日記
  • ケアの倫理と二層理論/「アイデンティティ哲学」がつまらない理由 - 道徳的動物日記

    link.springer.com ヘルガ・クーゼ、ピーター・シンガー、モーリス・リカードによる共著論文 "Reconciling Impartial Morality and a Feminist Ethic of Care" (「公平な道徳と、フェミニストによるケアの倫理を調和させる」)を読んだのでメモ的に内容を記録。 この論文では、公平さや抽象性や客観性を重視する「正義」の倫理に対する、当事者同士の関係性や文脈依存性や主観性を重視すべきだと強調する「ケア」の倫理による批判が取り上げられながら、「けっきょく道徳は公平であるべきか(impartial)、偏ったものであるべきか(partial)」ということが問われる。 この問題に対して著者が提示する解決方法は「二層理論」だ。日々の生活や現場における直観レベルの道徳は偏っていて限定的であるくらいの方がうまく機能するので、その観点からすれば「

    ケアの倫理と二層理論/「アイデンティティ哲学」がつまらない理由 - 道徳的動物日記
  • 「男性同士のケア」が難しい理由 - 道徳的動物日記

    男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望― 作者:イヴ・K・セジウィック 発売日: 2001/02/20 メディア: 単行 近頃では、「これからは男性同士でもケアし合わなければならない」と言った主張がちらほらとされるようになっている。 この主張がされる文脈は様々だ。「これまでの社会は女性にケア役割を押し付けていたが、これからは男性も平等にケア役割を担うべきである」という問題意識に連なる主張である場合もあるだろう。 また、女性の恋人やがいないことで「女性からの承認」を得られないと悩んだり「孤独」になることを恐れる男性に対して、「そもそも"自分は異性のパートナーにケアしてもらうべきだ"という発想を捨てて、同性との相互にケアし合う関係を築く可能性に目を向けてみるべきだ」という批判込みのアドバイス的な意味合いで、「男性同士のケア」が提唱される場合もある。 そして、「マウントを取り合う」「

    「男性同士のケア」が難しい理由 - 道徳的動物日記
  • 労働から逃避したところで幸せになれるの?(読書メモ:『隠された奴隷制』) - 道徳的動物日記

    隠された奴隷制 (集英社新書) 作者:植村邦彦 発売日: 2019/08/23 メディア: Kindleのタイトルはマルクスの『資論』に出てくるキーワードであり、このの内容もマルクス主義的なものだ。 第一章〜第三章では、ロックやモンテスキューからはじまってアダム・スミスやヴォルテールやヘーゲルなどの哲学者たちが「奴隷制(黒人奴隷制)」についてどんなことを言っていたか、というあらましが紹介される。そして、第四章では、マルクスの書いた「隠された奴隷制」とは何を意味していたのか、という詳細が明らかにされる。 第五章や第六章では現代社会の労働や資主義について話が移る。このの結論としては、一見すると自由で自発的に生きている現代の賃労働者たちが働く環境も、けっきょくは「隠された奴隷制」であるに過ぎない、というものだ。 個人的な感想としては、第四章までには思想史的な面白さがあった一方で、第

    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2020/07/06
    著者の「労働」の概念も狭いが、評者の「労働」の概念も狭いように思う。評者の労働はデスクワーク偏重で評者の言う企業は「会社」であるようだ。単純労働が抜け落ちている。残業しなければ生きていけないは人権侵害
  • 労働者のエートスとエリートのエートス(読書メモ:『アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々①』) - 道徳的動物日記

    アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々 世界に吹き荒れるポピュリズムを支える“真・中間層”の実体 (集英社学芸単行) 作者:ジョーン・C・ウィリアムズ 発売日: 2017/10/27 メディア: Kindle版 2016年の大統領選では多くの人がヒラリー・クリントンの勝利を確信していたが、実際にはドナルド・トランプが勝利することとなった。それをきっかけに、「リベラルなエリートは世の中を読み違えていたぞ」とか「メディアや知識人は人種的マイノリティや性的マイノリティにばかり注目して、マジョリティである労働者に目を向けていなかったのだ」という問題意識がにわかに湧き上がり、それについて語る様々な記事やが矢継ぎ早に登場することになったものだ*1。そのなかでも『ヒルビリー・エレジー:アメリカの繁栄から取り残された白人』や『壁の向こうの住人たち:アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』は

    労働者のエートスとエリートのエートス(読書メモ:『アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々①』) - 道徳的動物日記
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2020/06/11
    日本にも共通する、ピューリタニズムだな。。。。日本で違うのは嫉妬か。。。同クラス内での嫉妬すごいもんな。クラスチェンジを許さん。
  • 読書メモ:『AI時代の労働の哲学』 - 道徳的動物日記

    AI時代の労働の哲学 (講談社選書メチエ) 作者:稲葉振一郎 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/09/11 メディア: Kindle人工知能と労働の哲学、といえば「人工知能が発達してシンギュラリティを起こして人間を凌駕する存在になる」ことを前提として、そこから「社会の生産性がすごくなるので人間は働かなくて良くなりみんなが好きなことをして生きていけるようになる」的な楽観論か「仕事人工知能に代替されることない一握りのエリート階層の人間と、仕事を奪われて失業してしまう大多数の底辺階層の人間とに分かれてしまう」的な悲観論のどっちかを唱える、というのがありがちだ。流行りのベーシックインカムなんかも、前者の場合には人間が好きなことをして生きていけるのを保証するというポジティブなイメージで描かれるが、後者の場合は底辺階層の人間たちが最低限の生活を過ごせるようにするためにお情けで与えら

    読書メモ:『AI時代の労働の哲学』 - 道徳的動物日記
  • 「負の性欲」論についての雑感 - 道徳的動物日記

    gendai.ismedia.jp ↑ この記事に関する雑感。 ・この記事では「負の性欲」という概念がさも画期的な発明であるかのように大げさな言葉で説明されているが、実のところ「負の性欲」が指し示す現象はこれまでにも俗流の男女論や恋愛心理学で散々言われてきたものだ。 つまり、「男は加点方式、女は減点方式」というアレだ。この言葉でググれば俗流の男女論や恋愛アドバイスを提示しているWEBページがいくらでも見つかるし、上記の記事と同じように進化論を持ち出してこの理論を補強しようと試みるページもいくらかある。 そして、一般論やステレオタイプが往々にしてそうであるように、大方の男女の行動や価値評価については「男は加点方式、女は減点方式」は当てはまる部分があるかもしれない。さらに、それらの行動や価値観の背景には進化的な影響もある程度は存在するだろう。 しかし、当然のことながら、すべての男女にこのステレ

    「負の性欲」論についての雑感 - 道徳的動物日記
  • 1