NPO法人「SESSAME(組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会)」では,OJTを通じたスキルの伝承を研究している。その内容は情報システムにも通じる。理事の渡辺氏に,伝承の方法論を解説してもらった。 渡辺 登 情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター 組込み系プロジェクト 研究員 経営学のカリスマと呼ばれるP.F.ドラッカーは著書の中で次のように述べている。「今日求められているものは,知識の裏づけのもとに技能を習得しつづける者である。純粋に理論的な者は少数でよい。しかし,技能の基盤として理論を使える者は無数に必要とされる」(図1)。 知識は,紙やデータの形で伝達できる。ソフトウエア開発でも作業手順やツールについて多くの知識が紙やデータで存在し,受け継がれている。 一方,技能とは知識を駆使して作業を遂行する能力のことである。知識のように紙やデータで伝達することが難しい