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2009年6月16日のブックマーク (13件)

  • 『少将滋幹の母』 谷崎潤一郎 - アブソリュート・エゴ・レビュー

    『少将滋幹の母』 谷崎潤一郎   ☆☆☆☆★ 『武州公秘話』が面白かったので続けて書を購入。「王朝もの」である。私は「王朝もの」にヨワい。新潮文庫でも出ているが、新聞連載時の挿絵がそのまま収録されているというのでこっちの中公文庫版にした。「王朝もの」に挿絵がついたら「王朝絵巻」ではないか。私は「王朝絵巻」にヨワい。 メインのプロットはとてもシンプルだ。若くして老人のとなった美女・北の方を傲慢な権力者・時平が酒の席の策略で強引に奪っていく。この北の方が、タイトルにある少将滋幹の母である。そして後年、滋幹は年老いた母と再会する。それだけだ。うーん、シンプル。ただそこに、かつて北の方の愛人だった色男の平中の話(侍従の君に言い寄るがなかなか相手にされず、北の方に未練が出て会おうとし、子供の滋幹の腕に歌を書いたりし、やがて侍従の君のせいで死ぬ)、時平の子孫の話(菅原道真の祟りでみな短命となり、滅

    『少将滋幹の母』 谷崎潤一郎 - アブソリュート・エゴ・レビュー
  • 『武州公秘話』 谷崎潤一郎 - アブソリュート・エゴ・レビュー

    『武州公秘話』 谷崎潤一郎   ☆☆☆☆ 谷崎潤一郎の『乱菊物語』が大好きなので、同じく伝奇ロマンということで書を購入してみた。『乱菊物語』の荒唐無稽さ、濃厚な幻想性には及ばなかったが、なかなか面白かった。かなり変わった小説だ。 これは武州公の少年期、青年期からその秘められた性癖を語るエピソードを抜き出して並べてみせる、という体裁になっている。秘められた性癖というのははっきり言うと変態性欲であり、彼の場合、生首と美女、という組み合わせである。美女の生首ではなく、武士の生首を持って撫でたり洗ったりする美女、に興奮するのである。自分がその生首になったところを想像すると特にイイらしい。これはもう間違いなく、かなりの変態である。多少の変態なら理解がある私でも、こればっかりは分からない。生首フェチ、とでもいうのだろうか。まあとにかく、そういう話なので生首が頻繁に出てくる。残酷な耽美性を持った伝奇ロ

    『武州公秘話』 谷崎潤一郎 - アブソリュート・エゴ・レビュー
  • 停電の夜に - アブソリュート・エゴ・レビュー

    『停電の夜に』 ジュンパ・ラヒリ   ☆☆☆☆☆ 再読。昔読んだ時は斜め読みで、結構地味だなと思った記憶があるが、今回じっくり読んでやはりピュリツァー賞も伊達じゃないということが分かった。題材はインド系アメリカ人の日常生活などから取られていて、それほどの起伏はない。どことなく劇的な事件が起きそうな状況であっても、結局大したことは起きないというパターンが多い。そういうところはちょっとモラッツォーニの『ターバンを巻いた娘』に似た感触があるように思う。たとえば『停電の夜に』では関係が冷えた夫婦が停電を機会に仲直りするのかと思っていると結局駄目なままだし、『ビルザダさんが事に来たころ』では祖国の戦争で家族と引き離された男が最後に悲劇を迎えるかと思うと、あっさり家族が見つかって終わりとなる。しかしこのアンチ・クライマックスな外し方がうまく、デリケートで複雑な余韻を残す。文体は静謐で、常に沈着冷静だ

    停電の夜に - アブソリュート・エゴ・レビュー
  • リンさんの小さな子 - アブソリュート・エゴ・レビュー

    『リンさんの小さな子』 フィリップ・クローデル   ☆☆☆☆☆ 日のアマゾンで購入。非常にシンプルな物語で、あっという間に読み終えた。雰囲気は静謐。ストーリーは悼みと哀しみを基調のトーンとしつつ、あくまで繊細に、淡々と進む。内省的で簡潔な文章がとても美しい。 船で異国にやってきたリンさんと、その国の住人であるバルクさんの穏やかな交流が描かれる。二人は公園で出会う。二人とも相手の話す言葉が分からない。それでも二人は相手に会うのを楽しみに、その公園にやってくる。リンさんはバルクさんにタバコをプレゼントする。バルクさんはリンさんに事をプレゼントする。時折回想が挿入される。それぞれの過去の痛みと、苦しく辛い中に見え隠れする人生の美しさを、この小説は静かに綴っていく。 タイトルの「小さな子」とは、リンさんの孫娘である。彼はこの子と一緒に異国にやってきた。そしてどこに行くにもこの子を連れて行く。リ

    リンさんの小さな子 - アブソリュート・エゴ・レビュー
  • FETISH STATION - FC2 BLOG パスワード認証

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  • 四大奇書 - Wikipedia

    四大奇書(しだいきしょ)とは、中国で元代から明代にかけ、俗語体で書かれた4つの長編小説の総称。「奇書」とは「世に稀なほど卓越した書物」という意味である。「四大奇書」は清代前期の書店が販売促進用につけたキャッチフレーズであり[1]、その名は清中期の乾隆年間(1736年 - 1795年)に芥子園刊において確立した[2]。 「四大奇書」に挙げられているのは『三国志演義』、『水滸伝』、『西遊記』、『金瓶梅』の4作品である[3]。だが、中国では清中期になってから『金瓶梅』の代わりに『紅楼夢』を加えたものを「四大名著(中国語版)」と呼ぶようになり[注 1]、「四大奇書」よりこちらの方が一般的である[注 2]。 日の推理小説における「四大奇書」[編集] 日では、推理小説における小栗虫太郎著『黒死館殺人事件』、夢野久作著『ドグラ・マグラ』、塔晶夫(中井英夫)著『虚無への供物』の3作品を「三大奇書

  • 図書出版松籟社ホームページ :: 幻想と怪奇の時代

    における怪奇幻想文学ジャンルの、創成期の記録です。 ◆◆◆第六十一回日推理作家協会賞受賞作!!◆◆◆ 『幻想と怪奇の時代』 紀田順一郎 著 怪奇幻想の文学、幻想と怪奇、世界幻想文学大系、現代怪奇小説集――少年時代、青年時代の私を育み、鼓舞し、素晴らしき文藝の魔界へと導いてくれた叢書や雑誌には、いつも其の人の名前があった。 底知れぬ博識と、猟奇叛骨の気風と、巧まざるユーモアをもって、戦後日の幻想文学シーンを先導してきた、大いなるオルガナイザー紀田順一郎。 その足跡をみずから振りかえる書は、伝説の時代を生きた人々の夢と情熱を丸ごと封じ込めたタイムカプセルのごとき書物である。――東雅夫(アンソロジスト、「幽」編集長) このの内容 書は、1960〜70年代、日においてほとんど認知されていなかった怪奇幻想小説(ホラー、ファンタジーetc)を我が国に根付かせるべく

    inmymemory
    inmymemory 2009/06/16
    師匠・平井呈一に叱咤され、盟友・大伴昌司+桂千穂と励まし合い、後継者・荒俣宏の情熱にうたれた著者の、熱き時代の回想録+評論集 / 雑誌The Horror、「幻想と怪奇」の挫折、「世界幻想文学大系」の大成功
  • データベース ノーベル文学賞 : : 京都外国語大学付属図書館

    ノーベル賞は1901年に初めての賞が授与されて、2001年で100周年を迎えています。中でも文学賞は、戦争などで受賞者がなかった年、さらには複数で選ばれた年もありますが、受賞辞退者を含めて受賞決定者は2003年で丁度100人を数えました。 この文学賞では、受賞者に関わる国や地域に住む人たちの社会や文化を反映した作品を評価されることが多く、世界の人々の理解と平和希求に大きく貢献してきたものであります。 こうしたことから、図書館のこの所蔵データベースを通じて、多くの方々に「国と言葉の境界を越えて人々を結びつける世界文学」と言われるノーベル文学賞の受賞者作品を読んでいただければ幸いと存じます。 スウェーデンが誇るアルフレッド・ノーベル氏の偉業と栄えあるノーベル賞の伝統に敬意を表しながら。

  • 世界を感動させた作家たち : 京都外国語大学付属図書館

    このページは図書館が所蔵する外国文学図書を中心とした書誌データベースです。 名前の記載されていない作家については、別途OPACからお調べください。 少しずつ国や地域など新しいデータを増やしていく予定です。お楽しみに。

  • 女性のための幽霊物語  川本静子・佐藤宏子編訳『ゴースト・ストーリー傑作選』

    みすず書房から刊行された『ゴースト・ストーリー傑作選 英米女性作家8短篇』(川静子・佐藤宏子編訳)は、英米の女性作家による怪奇小説を集めたアンソロジー。怪奇小説ファンにとって、非常に嬉しい企画です。 ただ、『淑やかな悪夢』(倉阪鬼一郎ほか編訳 創元推理文庫)や、梅田正彦による二冊のアンソロジー『ざくろの実―アメリカ女流作家怪奇小説選』『鼻のある男―イギリス女流作家怪奇小説選』という、同テーマのアンソロジーが既にいくつも出てしまっているということ、収録作品が8つと少なめなことから、正直、あまり期待せずに読み始めました。 意外、と言っては失礼ですが、訳文はこなれていて、かなり読みやすくなっています。そして、肝心の内容の方ですが、こちらも安定した出来で、楽しむことができました。それでは、いくつか紹介していきましょう。 エリザベス・ギャスケル『老いた子守り女の話』 両親を亡くし、親戚の家に預けら

    女性のための幽霊物語  川本静子・佐藤宏子編訳『ゴースト・ストーリー傑作選』
    inmymemory
    inmymemory 2009/06/16
    英米女性作家による怪奇小説アンソロジー 『淑やかな悪夢』(倉阪鬼一郎ほか編訳 創元推理文庫)、『ざくろの実―アメリカ女流作家怪奇小説選』(梅田正彦編)『鼻のある男―イギリス女流作家怪奇小説選』(梅田正彦編)
  • 無限のエンディング

    セルビアの作家、ミロラド・パヴィチの『帝都最後の恋 -占いのための手引き書』(三谷惠子訳 松籟社)が刊行され、早速入手しました。 これは、タロットカードの1枚1枚に対応した22の章で構成され、章の順番どおりに読むもよし、タロットを手引きにランダムに読んでもいい、という凝った趣向の作品です。 タロットを使った小説といえば、イタロ・カルヴィーノの『宿命の交わる城』に前例があります。違いと言えば、パヴィチの作品の方が、読者の参加の余地が多い、というところでしょうか。 パヴィチの作品は、既に二冊ほど邦訳が出ています。ひとつは、どこからでも読める事典形式の小説『ハザール事典』(東京創元社)。もうひとつは、の両端から始まった二つの物語が中心で出会うという『風の裏側』(東京創元社)です。このパヴィチという人、作品がどれも非常に凝った趣向で書かれていて、読者の「読み」の可能性を広げてくれるというところが

    無限のエンディング
    inmymemory
    inmymemory 2009/06/16
    ミロラド・パヴィチ『帝都最後の恋 -占いのための手引き書』『ハザール事典』『風の裏側』『あなただけの物語』(未訳)/ジャンニ・ロダーリ『物語あそび -開かれた物語-』『ファンタジーの文法』
  • 奇妙な世界の片隅で : SFのふるさと  山本弘『トンデモ本?違う、SFだ!』正・続

    数あるSF関連ガイドの中でも、これほど楽しく読めるは、なかなかないでしょう。山弘『トンデモ?違う、SFだ!』と続編である『トンデモ?違う、SFだ! RETURNS』(ともに洋泉社)は、かってSFが持っていた原初的な面白さ、「センス・オブ・ワンダー」にあふれた作品を紹介しようというコンセプトのガイドです。 ここで取り上げられるのは、正統派のSFというよりも、読者をあっと驚かせてくれるアイディアに溢れた作品たち。結果、長編よりも短編、メジャーよりもマイナーな作品が多数を占めています。著者の山弘は、このあたりの事情を次のように語っています。 私見だが、SF作家の偉大さは「バカ度」で決まると思っている。世間の目を気にしてか、あるいは自己満足か、地味で飛躍のないブンガク的作品しか書かない作家は、普通の作家としてならともかく、SF作家としての適性には欠けている。異星人の侵略、パラレルワールド

    奇妙な世界の片隅で : SFのふるさと  山本弘『トンデモ本?違う、SFだ!』正・続
  • 機械のための機械  ヒース・ロビンソン

    SF作家の星新一は、欧米の一コマ漫画に興味を持っていて、その探求成果を『進化した猿たち』(新潮文庫)という楽しいにまとめています。これはテーマ別にスクラップした一コマ漫画を、文章とともに紹介するというものでした。僕がこの手のジャンルの漫画に興味を持ったのも、おそらく、このがきっかけだったと思います。 その後、一コマ漫画を扱ったをいくつか読む機会がありましたが、とりわけ印象に残ったのが、やたらと機械が出てくる漫画でした。来、機械というものは実用に役立てる便利なもののはずですが、その漫画では、やたらと複雑化して、どう考えても役に立つとは思えない機械がところ狭しと描かれていました。 気になったものの、その機械の漫画の作者名はわかりませんでした。こうした一コマ漫画を扱ったは、以前は作者名を記していないものが多かったのです。そんな折り、古屋で手に入れた『文藝春秋デラックス 世界のマンガ』

    機械のための機械  ヒース・ロビンソン