乗組員はだれあつてこの船の全景を知らぬ 一つ一つの船室は異様に細長い。幅と高さとが各3メートルで、長さは10メートルといつた具合に(そして1×1×3メートルといつた狭い室もある)。隔壁はすべて厚い槇の板で作られており、室によつては粗笨な渦巻あるいは直線と弧を組み合せた抽象図形が彫り付けられてある。そのような細長い室、大小さまぎまなそれらが、上下左右前後に連らなり積み重なつて、五十? 七十? その正確な数を知るものはいない。 船外の景色を見たものもいない 乗組員の生活は、これら細長い船室から船室へと移り歩くことによつて営まれている。廊下というものはなく(あるいはすべての室が廊下であつて)、船室は小さなドア(と、上下には梯子と揚げ蓋)で直接他の船室と通じている。ドアによつては鍵のかかつている(それも時によつて変るのだが)のもあるので、船全体はおそらく時間の中で一種の迷路を形づくつているのだ。ド
峯澤典子『ひかりの途上で』(七月堂、2013年08月20日発行) 峯澤典子『ひかりの途上で』は、ことばがていねいに動く。たとえば「初冬」。 寝台そばの 枯れかけた野菊を わたしの…、と呼ぶと 花はもうそこにはいなかった わたしの、と告げたのも もはやわたしではなく 薄い霧の声 窓の外では 刈り残された花首が耐えられる分だけ 風が冷たくなっていた けれど野には まだ何も訪れてはいない ここに何が書いてあるか。ここだけでは、わからない。そして、ここだけではわからなということは、実は前後を読んでもわからないということである。わからなくてもストーリーはつくれるから(ストーリーを捏造してそれなりになっとくできるから)、わかろうがわかるまいが関係はない--と書くと峯澤のことばに対して失礼かもしれないけれど……。 けれど、ことばというのはストーリーに従属するものではないから、ストーリーはわきにおいておい
詩人 小池昌代 一月十五日、詩人の吉野弘さんが肺炎のため、八十七歳でお亡くなりになりました。 わたしがこの詩人の詩を初めて読んだのは、中学生のころでした。代表作といっていい「夕焼け」をご存知ですか。始めのところを少し引用してみます。 電車は満員だった。 そして いつものことだが 若者と娘が腰をおろし としよりが立っていた。 うつむいていた娘が立って としよりに席をゆずった。 そそくさととしよりが坐った。 礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。 詩では、この状況がもう一度繰り返されます。つまり、また、別のお年寄りが娘の前に現れ、娘はまた、立ち上がって席をゆずる。そして二度あることは、というように、また新たなお年寄りが彼女の前に現れます。けれど三度目のとき、娘は、うつむいたまま、席を立ちませんでした。なぜでしょう。わたしにもよくわかりません。娘のなかで何かがくじけたのかも
編集部より)東京荻窪にある『ブックカフェ6次元』の店主ナカムラクニオさんに、毎月1冊、おすすめの本を紹介してもらいます。 詩人 宮尾節子の言葉は、「いま」をバッサリ切り取っている。そして、「いま」の空気感を多くの人々に直接、伝えている。短い言葉の連なりが、たくさんの心を動かしている。詩が、本来の力を取り戻し、社会の中で機能している。これは、みんなの中に眠っている未来の記憶。必読です。 まいにち 満員電車に乗って 人を人とも 思わなくなった インターネットの 掲示板のカキコミで 心を心とも 思わなくなった 虐待死や 自殺のひんぱつに 命を命と 思わなくなった じゅんび は ばっちりだ 戦争を戦争と 思わなくなるために いよいよ 明日戦争がはじまる (ブックカフェ 6次元 店主 ナカムラクニオ) この本について 書名:『明日戦争がはじまる』 著:宮尾節子 出版社:集英社インターナショナル 価格
■日時 2004年7月29日(木)- 8月12日(木) ■日時 13:30~19:30(最終日は18:30まで。毎週水曜休廊) ■会場 啓祐堂ギャラリー ■日時 東京都港区高輪3-9-8 高輪インターコート1F →地図 高橋昭八郎は、1957年、北園克衛が主催する実験詩のためのグループVOU(ヴァウ)に参加することで詩作をスタートした。その後、日本における具体詩運動で中心的な役割を果たした新国誠一が組織した「今日のコンクリート・ポエトリィ展」(1970)、アムステルダム市立美術館で開催された「サウンド・ポエトリィ/?コンクリート・ポエトリィ/ヴィジュアル・ポエトリィ」展(1970)など、多くの重要な美術展に参加を重ねて現在にいたる。その詩歴は《意味の重力から詩を解放する》ための激しい闘いの連続であった。日本の特性から目をそらさず、一方では因習的な日本詩への叛逆を忘れず、間断ない緊張のもとで
最近Wikisourceなるものの存在を知った。 青空文庫にくらべるとまだまだ量は少ないが、萩原恭次郎の「死刑宣告」がすべて電子化されているのに感激したので紹介しておく。 →死刑宣告 - Wikisource 私は詩はそれほど感心があるわけではない。というより「詩は原文で読まないと駄目だよね」主義でいくと日本語しか使えないので、なかなか視野を広げられないところが壁になっている。なので、今のところ阿部日奈子、加藤郁乎、萩原恭次郎ぐらいしか押さえていない。 前にhttp://www.leibniz.co.jp/~monado/js/analyze.htmlで「装甲弾機」を使ったんだけど、「死刑宣告」は本当にヤバイ詩集だ。 どの詩でもいいから一読、いや一見してもらえればそのヤバさがわかってもらえると思う。特にキテるやつを紹介しおこう。 ラスコーリニコフ - Wikisource 広告灯! - W
倉田比羽子詩集 (現代詩文庫) 作者: 倉田比羽子出版社/メーカー: 思潮社発売日: 2012/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る ◇倉田の詩集は、もう十年以上前に『夏の地名』を読んだことがあった。 ほかの本は処分しても、なかなか処分しがたい一冊で今も書棚の奥にある。 昨日書店でこの現代詩文庫を入手して、今、解説や詩人論や、散文、それから、 『世界の優しい無関心』の抄録の部分をさっき読み終えた。 あわてて感想を書くこともない。 それはわかっているのだが。 ◇解説の詩人論は、倉田への瀬尾育生のインタビューになっていて、これは 私のようなものにはありがたい。さっき念の為に家にあるここ十年程の 十数冊の『現代詩手帖』のバックナンバーや他の詩誌の目次を見たが、 詩作品は全く発見できず、詩手帖の投稿詩欄の選者として倉田が講評を書いた号があるばかりだ。 ところで、今年の短歌研
『文学とは何か』(1950年) 『雑種文化―日本の小さな希望』(1956年) 『羊の歌―わが回想』(1968年) 『日本文学史序説』(1975年 - 1980年) 『日本人とは何か』(1976年) 『夕陽妄語』(1984年 - 2007年) 『日本文化における時間と空間』(2007年) 加藤 周一(かとう しゅういち、1919年〈大正8年〉9月19日 - 2008年〈平成20年〉12月5日)は、日本の評論家、小説家。医学博士(専門は内科学、血液学)。 上智大学教授、イェール大学講師、ブラウン大学講師、ベルリン自由大学およびミュンヘン大学客員教授、コレージュ・ド・フランス招聘教授、ブリティッシュコロンビア大学教授、立命館大学国際関係学部客員教授、立命館大学国際平和ミュージアム館長などを歴任。哲学者の鶴見俊輔、作家の大江健三郎らと結成した「九条の会」の呼びかけ人。妻は評論家・翻訳家の矢島翠。岩
日本の詩人萩原恭次郎(はぎわら きょうじろう、1899年5月23日 - 1938年11月22日)の詩集『死刑宣告』とその収録作品に関するカテゴリ。
この項目では、詩人について説明しています。朝鮮鉄道局庶務課長などを歴任した官僚については「秋山清 (官僚)」をご覧ください。 秋山清 秋山 清(あきやま きよし、1904年4月20日 - 1988年11月14日)は、福岡県小倉市(現・北九州市)出身の詩人、アナキスト。終戦まで局(つぼね)清のペンネームを用いる[1]。 経歴[編集] 1904年、福岡県小倉市(現・北九州市)で生まれる。小倉中学(現・県立小倉高)を経て日本大学中退[2]。1924年創刊のアナーキズム系の詩誌『詩戦行』に参加。1930年、小野十三郎と『弾道』創刊[1]。第二次世界大戦後、1946年、金子光晴、岡本潤、小野十三郎とともに詩誌『コスモス』を創刊[1]。アナキスト連盟や新日本文学会常任委員の活動のかたわら、『新日本文学』、『現代詩』に詩や評論を発表。詩史や自伝、作家論などの著作も多い。 著作[編集] 著書[編集] 『文
萩原 恭次郎(はぎわら きょうじろう、1899年(明治32年)5月23日 - 1938年(昭和13年)11月22日)は、大正・昭和時代の詩人。大正末期の芸術革命の先頭に立ち、はじめはダダイストとして活動したが、のちアナーキズム運動に傾倒。若くしてこの世を去った。詩集『死刑宣告』、詩篇「もうろくずきん」「亜細亜に巨人あり」などの作品で知られる。本姓は金井(養子になったことによる)。 略歴[編集] 1899年 群馬県勢多郡南橘村(現前橋市)生まれ。 1916年 萩原朔太郎との交友が始まる。 1918年 前橋中学校卒業。川路柳虹の『現代詩歌』に参加。 1920年 群馬銀行入行。詩話会会員になる 1922年 群馬銀行を退行し上京。正光社に入社し編集者として働き始める。 1923年 『赤と黒』創刊。同人に壺井繁治、岡本潤、川崎長太郎。のち林政雄、小野十三郎が参加。 1925年 『マヴォ』第五号から編
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く