『黄色い雨』 フリオ・リャマサーレス ☆☆☆☆☆ ちょっと前に読了。久々の大当たり。私のツボにどんぴしゃりきました。最高。 読む前は、淡々とした文章によって綴られるエッセー的な小説を予想していた。物語性はあんまりないような。たとえばヨシフ・ブロツキーの『ヴェネツィア―水の迷宮の夢』のような。ところが読んでみると、そういう部分もありながら、マルケス的な強靭で骨太な物語性をも備えた小説だった。 人がいなくなり、ただ朽ちていくだけの村に残された一人の男の独白、というスタイルの小説だ。タイトルの「黄色い雨」とはポプラの枯れ葉のこと。ポプラの枯れ葉が降りしきり、すべてを覆っていく、それが村の崩壊の象徴的なイメージとなる。美しい。小説全体をこの詩的なイメージ、孤独の中に朽ち果て、滅んでいく、哀しくも甘美なイメージが包んでいる。「私」の回想という形式のため、すべてが遠い過去に起きたことという独特の感