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ブックマーク / www.outsideintokyo.jp (13)

  • OUTSIDE IN TOKYO / ストローブ=ユイレの軌跡 1962-2009

    映画による抵抗運動を継続するジャン=マリー・ストローブとダニエル・ユイレ(ストローブ=ユイレ)。 その32作品を一挙上映し、47年間の軌跡を辿る。 ジャン=マリー・ストローブ(1933- )とダニエル・ユイレ(1936‐2006)は40年以上にわたって共同で挑発的な映画を作ってきた。ロレーヌ地方メス出身のストローブは、徴兵忌避のため58年に西ドイツに亡命、さらに69年にローマに生活・活動拠点を移した。彼らの作品の大半は先行する文芸作品に基づくが、その原典の文の扱いは厳密で、叙述内容の伝達を効率化する改変は避けられる傾向にある。高度に文学的なドイツ語、フランス語、イタリア語の3か国語を用いて作られる彼らの映画は、その音声言語の含蓄、音楽的抑揚に重きをおいており、その厳密な画面構図と時間構成、計算された身ぶりと廃棄しえない偶発性の弁証法は、映画表現の革命的な潜勢力を示唆している。

  • OUTSIDE IN TOKYO / アスガー・ファルハディ 『彼女が消えた浜辺』レビュー

    アッバス・キアロスタミやマフセン・マフマルバフらの豊かな映画言語に、有史以来連綿と続く吟遊詩人の伝統が息づく国、アフマディネジャド大統領政権下、ジャファル・パナヒ監督が拘束され、アーティストたちの表現が検閲を受ける不条理が存在する国、人口の7割が30歳未満、大学生の女性比率は65%を超え、全国民の識字率が90%を超えるという高い教育水準を誇る若者の国<イラン>から彼の国の新しい時代の感性を感じさせる映画が届いた。アスガー・ファルハディ監督の長編第四作『彼女が消えた浜辺』は、ベルリン映画祭で銀熊賞、トライベッカ映画祭で最優秀作品賞を受賞、国イランでも大ヒットを記録した作品である。 映画は、"神の名において"と訳されるペルシア文字と共に始まり、主要キャストの名前が表示されていく。その背景では、暗闇の中に配置されたキャメラが、小さな長方形の窓から光が差し込むさまを捉えている。その長方形の窓には

  • OUTSIDE IN TOKYO / 特集:映画作家マルグリット・デュラス

    現代フランス文学を代表する作家にして映画作家でもあるマルグリット・デュラスの、1972年から1981年までの10年間で作られた9作品が、アテネ・フランセ文化センターで特集上映される。トークショーのゲストとして、諏訪敦彦監督、岡村民夫氏(人文学研究者)、吉田広明氏(映画批評家)の登壇が予定されている。 デュラスが、「太平洋の防波堤」の映画化(『海の壁』ルネ・クレマン/57、その後2008年にはイザベル・ユペール主演『Un barrage contre le Pacifique』でリメイク)で得たお金で買ったというパリ西方の一軒家に遺されていたものを観察した彼女は、かつてその家に文盲の女性が住んでいたと推測する。そこで暮らしていたとデュラスが想像/創造した女性が発したかもしれない「家、時代、子供、夫の愛、昼の疲れを包括した彼女の無言」、その恐ろしい欠如、その女の痕跡が一切ないことを償うという「

    inmymemory
    inmymemory 2012/02/15
    アラン・レネ監督の傑作「二十四時間の情事」の原作/脚本であることを除けば、日本ではマルグリット・デュラスといえばヌーヴォー・ロマンの作家というイメージばかりが強いが、映画監督としての功績を再評価すべき
  • OUTSIDE IN TOKYO / トラン・アン・ユン 『ノルウェイの森』レビュー

    先頃、初来日を果たしたファティ・アキン監督に、初めての東京の印象を伺ったところ、「『ロスト・イン・トランスレーション』や『バベル』を観て思い描いたのとは全く違う印象の街だ」との答えが返ってきた。アキン監督が宿泊していたのは、下町風情を残す銀座の京橋寄りのエリアにあるホテルだったから、東京という街に対して『ロスト・イン・トランスレーション』(03)でスカーレット・ヨハンセンが宿泊していたパークハイアット・ホテルや『バベル』(06)で役所広司と菊地凛子が抱擁する高層マンションといった、都会的に洗練されたイメージを持っていたのだとしたら、そう感じるのも無理もない。映画作家は、自らのフィルターを通してその土地を切り取り、そして、そこであってそこでないような、この世のどこにも存在しないかのような場所を幻視し、映像化するが、『ノルウェイの森』のトラン・アン・ユン監督は、こと"68年の日"を幻視したと

  • OUTSIDE IN TOKYO / ボリス・バルネット傑作選

    では戦前の1934年に『国境の町』が上映されて以来、長きに渡ってその存在が忘れ去られていた、あるいは、意図的に放置されてきたとされるソ連の名匠ボリス・バルネットは、世界的には1950年代にアンリ・ラングロワのシネマテーク・フランセーズが中心になり、ゴダールとリヴェットらカイエ一派がバルネット再評価の機運を高めたが、ボリス・バルネット人は、1965年に自ら命を絶ってしまう。蓮實重彦はバルネットが死の直前に作った作品『休暇』を評して、「これが映画だと何の根拠もなく断言することの喜びにあふれた作品であって、こうしたおおらかな肯定的精神の持ち主がどうしてみずからの命を絶たねばならなかったのかと心から残念に思われ」ると記している。その後、1975年にはニューヨークで回顧展が行われ、1985年のロカルノ国際映画祭では「最も完璧に近いかたちでの特集上映」が組まれたという。 そのロカルノ国際映画祭に

    inmymemory
    inmymemory 2012/01/24
    2012年1月21日(土)よりユーロスペースにてレイトショー
  • OUTSIDE IN TOKYO / 2011年日本公開新作映画ベスト10

    イーデン・コーキル(ジャパン・タイムズ編集局学芸部長) 小倉聖子(VALERIA/映画宣伝パブリシスト) 鍛冶紀子(OUTSIDE IN TOKYO) 江口研一(OUTSIDE IN TOKYO) 上原輝樹(OUTSIDE IN TOKYO)

  • OUTSIDE IN TOKYO / 2010年日本公開新作映画ベスト10

    ジャパン・タイムズ編集局学芸部長。1997年の来日以来、長沢アートパーク・アーティスト・イン・レジデンス事業、森美術館を経て、 2007年よりジャパン・タイムズ勤務、2010年より現職。シドニー大学文学部日文化学科では、名作文学を原作とした市川崑監督 映画(『野火』、『炎上』と『ビルマの竪琴』) を研究。

  • OUTSIDE IN TOKYO / 2009年日本公開新作映画ベスト10

    『しんぼる』松人志 『チェンジリング』クリント・イーストウッド 『3時10分、決断のとき』ジェームズ・マンゴールド 『イングロリアス・バスターズ』クエンティン・タランティーノ 『オーストラリア』バズ・ラーマン 『花と兵隊』松林要樹 『それでも恋するバルセロナ』ウディ・アレン 『アバター』ジェームズ・キャメロン 『パブリック・エネミーズ』マイケル・マン 『グラン・トリノ』クリント・イーストウッド 今年、映画館でもっとも面白い体験をさせてくれた作品は、松人志の手によるものだった。簡単に言ってしまえば、テレビのお笑い芸人として長いキャリアを持つ松の監督二作目(2007年の『大日人』に続く)『しんぼる』はこれまで見たことのないタイプの映画だ。 あるレベルでは完全に超現実的で、パジャマに身を包んだ松人が扮する主人公が、真白い部屋で、時折壁のレリーフとして浮き出る天使たちの陰茎を押しながら

  • OUTSIDE IN TOKYO / 日本公開新作映画ベスト10

    OUTSIDE IN TOKYO執筆陣が選んだ【日公開新作映画ベスト10】を以下に掲載しています。 2018年新作映画ベスト10 2019.1.17 update 2017年新作映画ベスト10 2018.1.18 update 2016年新作映画ベスト10 2017.1.19 update 2015年新作映画ベスト10 2016.1.25 update 2014年日公開新作映画ベスト10 2015.1.29 update アブデラティフ・ケシシュ監督選出暫定ベスト10 2014.4.4 update 2013年日公開新作映画ベスト10 2014.1.30 update 2012年日公開新作映画ベスト10 2013.1.16 update 2011年日公開新作映画ベスト10 2012.1.13 update 2010年日公開新作映画ベスト10 2011.2.14 update 2

  • OUTSIDE IN TOKYO:映画の21世紀をみつめて

    作において、劇作家・演出家、松田正隆の同名戯曲のセリフを一言一句変えずに映画化することに挑戦した越川道夫監督は、主人公の女を演じる河野知美と夫を演じる梅田誠弘の演技、存在感の素晴らしさも相まって、演劇の一回性を生々しく捉えた、”映画”ならではの見事な呼吸が息づく作品を創り上げた。ここに、間違いなく代表作の一つになるであろう作品『水いらずの星』を撮り上げた、越川道夫監督のインタヴューをお届けする。 『水いらずの星』は、劇作家・演出家、松田正隆の同名戯曲を越川道夫監督が大胆な映画化に成功した作品である。主人公の女を演じる河野知美の演技と夫を演じる梅田誠弘の存在感が素晴らしく、作のプロデューサーでもある、河野知美の”顔”は、映画の主戦場と化していて、何人もの女性が憑依しているかのように幾通りにも変幻する。ここに、主演を務めると同時に、自らの挑戦的な作品をプロデュースし遂げつつある河野知美のイ

  • OUTSIDE IN TOKYO / 対談:フィリップ・クローデル×高橋啓(翻訳家)

    高橋:まず「absence/不在」というテーマについて。思い出したのがabsenceを主題にした映画で、多分フランス映画の中で最も有名な映画があるとすれば、マルグリット・デュラスが脚を書いて、アンリ・コルピが監督をした『かくも長き不在(Une aussi longue absence)』(60)というのがあり、私はその映画を連想しましたが、その映画との絡みであるとか、補足するようなことがあればお話しして頂きたいです。 フィリップ・クローデル:「不在」というテーマに関して、確かにマルグリット・デュラスの『かくも長き不在』というタイトルが私の映画より先に存在していました。素晴らしいフランス語のタイトルだと思います。けれどもシナリオを書き、映画を撮っていた間、そのことは全く考えなかったと告白しなければなりません。デュラスは、私の個人的なパンテオンの中で高い地位にあるのですが。私にとって重要な作

    inmymemory
    inmymemory 2011/10/25
    フィリップ・クローデルが初監督と脚本を手掛けた「ずっとあなたを愛してる」 (2008)について http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=335117
  • OUTSIDE IN TOKYO / 日本公開新作映画ベスト10

    OUTSIDE IN TOKYO執筆陣が選んだ【日公開新作映画ベスト10】を以下に掲載しています。 2018年新作映画ベスト10 2019.1.17 update 2017年新作映画ベスト10 2018.1.18 update 2016年新作映画ベスト10 2017.1.19 update 2015年新作映画ベスト10 2016.1.25 update 2014年日公開新作映画ベスト10 2015.1.29 update アブデラティフ・ケシシュ監督選出暫定ベスト10 2014.4.4 update 2013年日公開新作映画ベスト10 2014.1.30 update 2012年日公開新作映画ベスト10 2013.1.16 update 2011年日公開新作映画ベスト10 2012.1.13 update 2010年日公開新作映画ベスト10 2011.2.14 update 2

  • OUTSIDE IN TOKYO / ペドロ・コスタ『コロッサル・ユース』インタヴュー

    詩情溢れるストイックな映像美で国際的な賞賛を浴びるポルトガル人監督のペドロ・コスタが、最新作『コロッサル・ユース』の公開に向けて来日した。これまでフォンタイーニャスというリスボン郊外の貧しい地区に暮らす、かつての植民地カーボ・ヴェルデ諸島の移民たちに焦点を当てる彼は、同じ場所を舞台に、前2作の『骨』『ヴァンダの部屋』を撮ってきた。だが同じ場所も、『コロッサル・ユース』では、家屋が崩壊し、廃墟と化しつつある。人々の笑い声は消え、半壊した街を亡霊のようにさ迷う、アフリカ系の初老の男、ヴェントゥーラを追う。住人のほとんどは、市が用意したこぎれいな白い公団に移動させられた。水道もガスも完備されている。若き日はパンク・バンドで世界を回ったペドロ・コスタは、まず、前作『ヴァンダの部屋』がクラブの音楽イベントで上映されると話し始めた。

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