トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事 【書評】 パウル・ツェラン 飯吉 光夫 著 Tweet mixiチェック 2013年10月13日 ◆ユダヤ詩人の魂読む [評者]守中高明=詩人・早稲田大教授 戦後ドイツ語圏における至高の詩人パウル・ツェラン-その作品を半世紀にわたって傑出した翻訳を通して紹介し続けてきた第一人者による全論考をまとめた一冊だ。没後四十年以上を経た今日、ツェランはその栄光を極めつつあるように見える。たとえば、ドイツのズールカンプ社から全十六巻の歴史校訂版『ツェラン全集』が刊行されることによりその仕事の全貌が明らかになり、夥(おびただ)しい学術論文が世界中で書かれることで、詩人の地位は不動のものとなったかのようだ。 だが、ツェランを読む営みは、文献学的環境が整えば進むわけではない。著者はここであえて「研究」に背を向け、詩