戦後日本の総理大臣たちの暗闘を描いた伝説的名作劇画『歴史劇画 大宰相』(さいとう・たかを著、戸川猪佐武=原作)が講談社文庫から順次刊行されている。近刊の第7巻が扱うのは「昭和の黄門」として知られる福田赳夫元首相。以下に掲載する同書の解説は、赳夫氏の長男である福田康夫元首相が父について語った貴重なものだ。聞き手は成蹊大学教授で日本外交史が専門の井上正也氏が務めている。 権力をどれだけ「抑制的に」使うか 井上 戦後の日本政治は「官僚主導」と言われながらも、政治家による総合調整が上手く機能していました。例えば、大蔵官僚出身である福田赳夫氏は政調会長になった昭和30年代、大蔵省の言いなりになるのではなく、自民党が重点的に予算配分するところを決める仕組みを作っています。「五五年体制」の時代に宰相となった政治家たちは、総じて「官」の仕組みを熟知しており、それをしっかりコントロールする能力を持っていたよ