「SF界/文芸界注目の俊英」(コシマキの惹句)とうたわれるチャールズ・ユウの第一長篇。ふたつの"界"にまたがっている。なんだかカッコいい。 SFっぽい文芸も、文芸っぽいSFも、このごろずいぶん増えてきたとはいえ、なかなか垣根(上の惹句なら"/"の隔たり)は高い。 頑固なSF読者「うっぷっぷー、過去を甦らせるなんて言って、あんなバカ厚い小説を書くって、どれだけヒマなんだよ。SFだったらタイムマシンでスマートに収めるのに!」 狷介な文芸読者「うわー、時間テーマなんて言って、アホくさいタイムトラベル理論を捻くり回すって、めっちゃセンス悪っ。文芸だったらマドレーヌと紅茶でエレガントに済ませるのに!」 と、まあ、こんなふう(すみません、極端に模式化しています)。 そんなところへ颯爽とあらわれたチャールズ・ユウが「まあまあ、ケンカはやめて。これでも読んで」と差しだしたのが本書『SF的な宇宙で安全に