ドイツ連邦議会は昨年12月14日、男性でも女性でもない第三の性とされる「インターセックス(性分化疾患)」を認める改正案を可決した。対象者は、出生届に「多様」を意味する「ディバース」が書き込まれ、欧州で初めて公式認定されることになる。 性分化疾患とは、遺伝子的にも解剖学的にも、性が男性でも女性でもない状態のこと。例えば、外見が女性でも、子宮や卵巣がなく、精巣を持ち、多くが女性として一般認識されていく。 ドイツ政府は13年、この性別問題の取り組みを開始し、対象となる新生児の出生届で、性別欄の無記入を許可。左右連立のメルケル政権は、17年に改正案に着手した。今回の改正案通過で、当事者は出生届、パスポート、運転免許証など、行政文書に「ディバース」と記載することが可能になる。 しかし、対象者が性分化疾患かどうかを判断するには、医師の診断が必要とされ、これを不服とする声もある。「レズビアン・ゲイ連盟」
生まれたばかりの赤ちゃんは何も話せないのに数年後には母語を話すことができるようになっている。大人になって外国語を勉強してもなかなか身につかないというのに。当たり前じゃないかと思われそうだが、よくよく考えるとすごく不思議なことだ。子どもはいかにして母語を身につけるのか、その過程で何が起こっているのか。またその際に大人たちはどう接していくことが大事なのか。『ちいさい言語学者の冒険――子どもに学ぶことばの秘密』(岩波書店)が話題の言語学者で、東京大学総合文化研究科・広瀬友紀教授に話を聞いた。 ――人はどういう過程を経て母語を獲得するのでしょうか? 広瀬:子どもにとって、母語との最初の出会いとは、親をはじめ、周りから耳に入ってくる言語音。様々な音に触れるものの、その情報の「さばき方」は最初からわかりません。つまりその言語で使われる音は何通りか、とか、微妙に違う範囲のどこからどこまでを同じ音とみなす
先週、中国で大きな話題を呼んだのは、120周年の記念イベントを開いた北京大学。注目を集めたのは、学長の記念スピーチでの漢字の読み間違えだ。最高学府のトップが中学生レベルの漢字を読み間違えるという珍事と、その後の謝罪で世間の耳目を集めた。批判や同情、謝罪への賞賛、これを機に読み間違えやすい漢字を勉強しようという前向きな声など、さまざまな反響が入り乱れた。 晴れ舞台での珍事 北京大学といえば、清華大学と並ぶ中国の最高学府だ。特に理系の強い清華大学に対し、文系ではトップで、多くの著名な学者を輩出してきた。経済に強いとされている李克強首相の出身校でもある。創立から120年を迎える今年は祝賀イベントが盛大に催された。 教育熱心な中国人にとって北京大学はもともと有名観光地の一つ。しかも記念グッズの販売や記念撮影スポットが設置されるとあって、先週、大学構内は人でごった返した。そんな中、4日に盛大に執り行
日本人が苦手としてきた言葉の壁が、人工知能(AI)をつかった最新技術による克服されようとしている。AIによる翻訳、同時通訳技術を開発している国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)はこのほど、日本記者クラブで音声翻訳アプリ「ボイストラ」を使った日本語、英語、中国語による自動翻訳の実演を行った。研究開発を行っている隅田英一郎NICTフェローは「東京オリンピックまでには、いまの『ボイストラ』の翻訳の精度を高めて、世界最高の翻訳アプリを作り、あらゆる場所で音声翻訳が使われるようにしたい」と意気込みを述べた。 オールジャパンで開発 日本で音声翻訳が始まったのは1986年だったが、当時は決まった型の文章しか翻訳できず、文法に沿ってないものは翻訳できにくかった。翻訳された音声もロボットがしゃべるような声で、違和感があった。その後93年にできた音声通訳システムは1文を翻訳するのに30秒もかかり、実用
「英語の授業が文法ばかりだったから、英語が話せない」という愚痴を多々耳にするなど、日本の英語教育は度々批判にさらされてきた。それを受けてか、90年代以降はコミュニケーションが重視され、近頃では早期教育が過熱し小さい頃から英語教室へ通う子どもたちや小学校での英語の教科化などが話題となり、英語教育は変化の真っ只中にある。 そこで、異文化コミュニケーション論が専門で、『英語だけの外国語教育は失敗する―複言語主義のすすめ』(ひつじ書房)の著者代表である鳥飼玖美子立教大学名誉教授に、最近頻繁に英語教育で耳にする「CAN-DO」リストと複言語主義、学習指導要領や英語教育政策の問題点について話を聞いた。 ――最近の中学、高校の英語教科書は、文法をあまり教えず、コミュニケーション重視のため、会話が主体のつくりになっているとも聞きます。また、私が中高生だった90年代には聞いたことのない「CAN-DO」リスト
「人類史の常識をくつがえす!」「今世紀最高の必読書!」と、大げさな惹句が帯に踊る。上下巻の大部にもかかわらず、「37万部突破!」ともある。NHKで「大特集」を放送したのだともある。どんなものだろうと、手に取った。 期待したほどの常識の転覆はなかった、というのが率直な感想である。原著のタイトル「Sapiens(副題 A Brief History of Humankind)」が示すとおり、既知の知見を大掴みし、端的な言葉でわかりやすく説明する、有名塾講師のベストセラー本の趣がある。 役に立ちそうな「歴史年表」 ただ、歴史書としては、三つの点で特筆すべきものがあると思った。 まず、本書の冒頭にある「歴史年表」。人類の歴史のあらましが、ひと目でわかる。これだけでも、学習に役立つ。 「135億年前、物質とエネルギーが現れる。物理的現象の始まり。原子と分子が現れる。化学的現象の始まり。」という記述か
もし日本語が英語に取って替わられたら?アイルランドで起きた言語交替 『英語という選択』 嶋田珠巳教授インタビュー 数百年後、毎日話す言葉が日本語ではなく英語になっていたら……。これだけ英語の早期教育が叫ばれ、小学校での英語の教科化が決定した日本ではあながちあり得ない話でもないのかもしれない。 事実、アイルランドは世界に名だたる文学などを擁していたにもかかわらず、わずか200年ほどでアイルランド語よりも、英語が多くの人の日常の言葉となってしまったのだ。 そのような言語交替はどのように起きるのか。また現在のアイルランドで話している英語はどんな英語なのか。『英語という選択 アイルランドの今』(岩波書店)を昨年上梓した明海大学外国語学部教授で、言語学が専門の嶋田珠巳氏に話を聞いた。 ――お恥ずかしながら、アイルランドと聞いてアイリッシュパブやギネスビールくらいしか思い浮かばなかったのですが、どんな
「英語を使える=グローバル人間」ではない! 『「グローバル人材育成」の英語教育を問う』 大津由紀雄教授インタビュー 昨年8月、中央教育審議会は学習指導要領改訂のまとめ案を公表し、12月には審議結果をまとめた答申を文部科学相に提出した。その中には、これまで小学校5,6年生で行われていた「外国語活動」を教科に「格上げ」することが盛り込まれている。グローバル化や世間で広まる英語の早期教育を反映した格好だ。 しかし、そもそもグローバルな人間とはどのような人間で、英語の早期教育は有効なのか? こうした根本的な議論が少ないように思う。そこで『「グローバル人材育成」の英語教育を問う』(ひつじ英語教育ブックレット)の執筆者の一人で、言語の認知科学が専門の大津由紀雄明海大学副学長・外国語学部教授に、先の2つの話題に加え、教科化までの経緯などについて話を聞いた。 (編集部注:インタビュー中の「言葉」はword
日本語は難しい。正しいと信じ込んで、知らないうちに誤用している言葉が実はたくさんある。自分が思っていたものと意味が全く違っていた単語も多い。新しい概念を含んだ、聞き慣れない日本語も多く生まれている。光文社新書の『「ほぼほぼ」「いまいま」?! クイズ おかしな日本語』を読むと、そうしたことに気づかされ、クイズ形式で自分の日本語力を判定することができる。著者の野口恵子さんに執筆の動機などを聞いた。 ――本書を書かれた動機は。 野口:文化庁の調査に基づいて、日本語にどんな誤用が起きているのかを調べました。例えば、「おざなり」と「なおざり」という言葉がありますが、間違って使っているのにそれを正しいと思っている人もいます。私は外国人学生のほか、社会に出る前の日本人学生にも日本語を教えていますので、やはり正しい言葉を身につけたほうがいい。そういう思いから本書でいろいろと考えてみました。 ――恥ずかしな
毎月のように、新しい子育て本、教育本が書店に並ぶ。教育熱心な親、子育てに悩む親がそれだけ多いということなのだろう。教育に関してはさまざまな考え方があり、どのような考え方を選ぶかは各家庭の裁量だ。ただ、一つの考え方に固執するよりも、他種多様な手段・方法・考え方を知って選択肢を持っておきたい。正解はないが、結果はあるのが子育て。あなたは親としてどう子どもと向き合いたいだろうか。この連載では、教育関連本を出版した著者の方たちにインタビューしていく。 あなたが子どもの頃、家のリビングはどんな様子だっただろうか。『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)は、そのタイトルの通り、リビングに「三種の神器」を置くことを奨励する教育本だ。インターネット全盛の今、分厚い辞書や図鑑を買いそろえる家は減りつつあるかもしれない。しかし著者である小川大介氏は、これこそが子どもの好奇
英国は一部の公立校で中国語を選択科目化する取り組みを始めている。 英国の中等学校では、伝統的には第二言語はフランス語を履修。2013年で見ると、15~16歳の生徒が受験する義務教育修了の資格試験(GCSE)で、フランス語を受験した生徒は約17万7000人で、スペイン語が約9万1000人、 ドイツ語約6万2000人に対して、中国語はわずか約3000人。中国語の基本会話をできる成人は1%にも満たないと推計されている。 こうした状況を打破しようと、キャメロン首相は13年に訪中し、小学校を訪問。「現在の子供たちが卒業するころには、中国は世界一の経済大国になっている。将来のビジネスを確実なものにするため、英国の若者は将来を見据えて、中国語を身に付けるべきだ」と公言した。 英国の公立校の中国語教員のアシスタントを倍増させ、教材費用など学校側の負担を補助することを約束。さらに小中学校の校長60人を中国研
「日本人の英語学習熱は非常に高い」? 「日本人と英語」にまつわる誤解を解き明かす 『「日本人と英語」の社会学』 寺沢拓敬氏インタビュー ビジネス誌をめくれば英語習得法の特集が組まれ、電車に乗れば英会話スクールの広告が必ずと言っていいほど目に入って来る。また、楽天を始めとする企業では、社内英語公用語化が進み、子供たちへの早期教育の効果が喧伝されている。まるで、これからの時代、英語が出来なければ食い扶持に困るとでも言うように。 果たして、そんなに多数の日本人に英語は絶対に必要なのか。こうした通説や俗説に対し、社会統計データを分析し、実態をつまびらかにしたのが『「日本人と英語」の社会学』(研究社)。そこで著者で、日本学術振興会特別研究員(PD)・オックスフォード大学ニッサン日本問題研究所客員研究員の寺沢拓敬氏に話を聞いた。 ――一歩街に出ると英会話スクールの広告が溢れていますし、ビジネス誌などで
ソウル中心部・竜山にある国立中央博物館の隣に10月、国立ハングル博物館がオープンした。地上3階、地下1階で、床面積は約1万1000平方メートル。展示室や子供用の体験コーナー、外国人向け教育スペースなどを備えた立派な施設だ。文化体育観光省のプレスリリースは、「ハングルの文字・文化的価値を広く知らしめ、科学・産業・芸術などさまざまな分野とのコミュニケーションを通じて、ハングルの新たな価値を創出する中心機関になる」と意義を強調している。 ハングルは民族の自負心を象徴する存在に ハングルは、朝鮮王朝きっての名君とされる王・世宗(セジョン)が「普通の人々が簡単に学べて使える文字」を作るよう学者たちに命じ、1443年に作られた人工の文字だ。ハングル制定後も公文書は漢文だったが、日本語教育が重視され、韓国語が迫害された植民地時代を経て、ハングルは、民族の自負心を象徴する存在のようになった。日本の敗戦によ
テレビのニュースには拾われないかもしれないけれど、ネットの一部で盛り上がったあの話題。知りたい人へお届けします。 まるでドラマみたい! 9時間の「暗号」解読劇 先週、「ネットの集合知」を示すようなできごとが、ツイッター上で話題になった。暗号で書かれた故人の日記が、ツイッターの有志によって見事に解読されたという。発端は、日記の持ち主が発信したこのツイート。 亡くなった親戚の叔父さんの日記が全然解読できない! pic.twitter.com/pazmryigoT リツイートされた暗号日記の画像を見たユーザーが、下記のようにコンタクトを取り、ツイッター上の暗号解読作戦は始まった。 はじめまして。大学院で言語学を学んでいる者です。もう少し、あるいは全部見せていただけたら解読のお手伝いができるかもしれないと思いリプライしました。もう少し見せていただくことはできますか? https://twitter
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く