広島、ソフトバンクのリーグ制覇が目前だが、過去には優勝を巡る数々のドラマがあった。その一つが1988年の「10.19」だろう。王者・西武を猛追した近鉄が、優勝の望みを託したシーズン最後のダブルヘッダー2試合だ。最終戦にして惜しくも優勝を逃しただけに過ぎない、と言うこともできる。だが、その優勝を逃したドラマが、四半世紀を経た今も語り継がれるのはどういうわけだろうか。この1日の、何が我々の心を揺さぶり続けるのか……。 「飛ぶ雲、飛ぶ声、飛ぶボール……」 「選手は一生懸命やってくれた。私には悔いはない」 仰木彬、53歳。彼は精一杯のウソをついた。とても美しいウソである。 敗者の美学……そんなロマンチックな響きはない。泥だらけになって、130試合、最後の1イニングで涙をのんだバファローズ。彼らと、仰木監督だけに許される、正々堂々の男泣き……。 10月5日。首位に立った近鉄だったが、仰木監督は顔をひ