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ブックマーク / blog.livedoor.jp/yamasitayu (178)

  • 上村剛『アメリカ革命』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    9月14 上村剛『アメリカ革命』(中公新書) 9点 カテゴリ:政治・経済9点 アメリカ合衆国の独立は世界史の教科書などでも「独立革命」という名称で書かれています。一方、例えば、インドの独立を「インド独立革命」と記載するケースはほぼ見ません。なぜ、アメリカの独立は「革命」なのでしょうか? 書はこれを「成文憲法の制定」こそアメリカ独立革命の最大の功績とした上で、その憲法がいかにしてつくられ、そして以下に運用されて政治が定まっていったかを比較的長いスパン(ジャクソン大統領の登場あたりまで)で見ていきます。 煩雑にならないようにわかりやすく書かれていながら、それでいて今までの一般的な見方を覆す刺激的な議論が行われているのが書の特徴で、「新書らしい」新書です。 入門書としても、それなりに知識がある人が読むとしても面白い内容で、フランス革命に比べて教科書の記述としては「わかりやすい」アメリカ独立

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    kaikaji 2024/09/17
  • 中井遼『ナショナリズムと政治意識』(光文社新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    6月8 中井遼『ナショナリズムと政治意識』(光文社新書) 9点 カテゴリ:政治・経済9点 ナショナリストといえば、政治的には「右」であり、「保守」であり、近年は「嫌韓・嫌中」などの排外主義的な傾向を持つ者ものも多い。日で暮らしているとおおよそこんなイメージだと思います。 ところが、世界的に見るとそうでもないのです。例えば、デンマークでは「左派」と見られる社会民主党のもとで移民を厳しく制限する政策が進みました。 また、何が「ナショナリズム」なのか? という問題もあります。スコットランドの独立を目指すスコットランド民主党は「ナショナリズム」政党と言えるのか? 韓国では、北朝鮮との統一を目指すのが「ナショナリスト」なのか? それとも北朝鮮との対決姿勢をとるのが「ナショナリスト」なのか?というのは一概には決められないでしょう。  書は、既存の「ナショナリズム」、「右と左」といった概念を大きく揺

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    kaikaji 2024/06/12
    "この二次元の軸ですが、実際の政治の争点も経済的なものから社会文化的な軸に移りつつあるといいます(先進諸国の政党のマニフェストをみても非経済的な物が増えている"
  • 川名晋史『在日米軍基地』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    5月3 川名晋史『在日米軍基地』(中公新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 副題は「米軍と国連軍、「2つの顔」の80年史」。この副題が書のポイントになります。 日にある米軍基地は1952年に締結された日米安全保障条約を根拠にして使用されています。これにそれこそ中学や高校でも習うことですが、それに対して書は実はもう1つの根拠があるのだと指摘します。 それが朝鮮戦争のときに結成された「国連軍」の基地としての役割で、実際にその後方司令部は横田にあり、国連軍後方基地として横田・座間・横須賀・佐世保・嘉手納・普天間・ホワイトビーチの7ヶ所が指定されています。 あくまでもこれは形式的なものだろうとも思いますが、書を読むと、国連軍基地であることはアメリカにとっては都合が良く、それを密かに維持してこようとした歴史が見えてきます。 日における米軍は日米地位協定のおかげでNATO国内の基地などより

    kaikaji
    kaikaji 2024/05/03
    "米国側は普天間の代替施設は国連軍の基地としての能力が必要だとしておりこれだと国外移設はできません。嘉手納への統合も考えられましたが嘉手納の拡張の難しさ攻撃をされたときのリスクヘッジの観点から退けられ"
  • 鈴木真弥『カーストとは何か』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    2月28 鈴木真弥『カーストとは何か』(中公新書) 9点 カテゴリ:社会9点 インド社会の特徴としてあげられるのが「カースト制度」です。このカースト制度のもとで「ダリト(不可触民)」と呼ばれる被差別民がいるということも知られていると思います。 ただし、このカースト制度というのはかなり複雑です。学校などではバラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャ、シュードラという4つのヴァルナ(種姓)があるということを習うかもしれませんが、実際はもっと複雑で外部からはそう簡単には理解できないものになっています。 書はそうしたカースト制度の実態を教えてくれるだけではなく、差別されている不可触民(ダリト)へのインタビューなどを通じて、どのように差別され、どのような生活を送り、差別についてどのように感じてるのかというとを教えてくれます。  差別というのは非常にデリケートな事柄であり、なかなか外部からは見えにくいことで

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    kaikaji 2024/03/26
  • 橋本陽子『労働法はフリーランスを守れるか』(ちくま新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    3月21 橋陽子『労働法はフリーランスを守れるか』(ちくま新書) 7点 カテゴリ:社会7点 ウーバーイーツやAmazonの配達員など、近年になってギグワーカーとも呼ばれるアプリなどで仕事を請け負って働く人が増えています。 法律的に、彼らは労働者ではなく自営業者に近い位置づけなのですが、実際に彼らの働く様子などを聞くと、自営業者にあるような意思決定の自由がないことも見えてきます。 書は、こうしたギグワーカーを始めとしたフリーランスを、労働法においてどう捉えるべきなのか?  どのように保護していくべきなのか? ということを主にヨーロッパの状況と比較しながら論じたになります。 著者は労働法の研究者であり、タイトルからくる印象よりも硬めので、第2章が「労働法とは何か」となっているようにそもそも的な部分から説き起こしており、やや読むのが骨が折れるところもあるかもしれませんが、書を読むことで

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    kaikaji 2024/03/26
  • 飯田泰之『財政・金融政策の転換点』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    1月23 飯田泰之『財政・金融政策の転換点』(中公新書) 7点 カテゴリ:政治・経済7点 先進国では1980年代に退治したと思われていたインフレが復活し、景気対策は金融政策中心で財政政策は最低限度で良いとされていたスタンスがゆるぎ財政出動が叫ばれるなど、近年のマクロ経済政策は大きく揺れました。 書のはしがきに「常識はそれが「常識」になった時点から崩壊が始まる」(ii p)とありますが、まさにここ最近のマクロ経済学ではさまざまな常識が書き換えられてきたのです(例えば、ブランシャール『21世紀の財政政策』における、かなりの規模の財政赤字を問題なしとする立場など)。 書は、まずは財政政策と金融政策の標準的な理解を押さえながら、財政政策と金融政策の融合、「高圧経済論」といった新しい潮流を探っています。 メディアなどで見かける著者のイメージからすると、中公新書ということもあって「やや硬め」かもし

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    kaikaji 2024/01/26
  • 間永次郎『ガンディーの真実』(ちくま新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    10月18 間永次郎『ガンディーの真実』(ちくま新書) 9点 カテゴリ:歴史・宗教9点 今までのガンディーのイメージを書き換える非常に刺激的なです。ガンディーの生涯について書かれていますが、以下の目次を見ると、このが普通の評伝ではないこともわかると思います。 はじめに――非暴力思想とは何か第1章 集団的不服従――日常実践の意義第2章 の真実――味覚の脱植民地化第3章 衣服の真実――当の美しさを求めて第4章 性の真実――カリスマ性の根源第5章 宗教の真実――善意が悪になる時第6章 家族の真実――偉大なる魂と病める魂終章 真実と非暴力 第1章の「集団的不服従」はわかりますし、第3章の「衣服の真実」もガンディーがイギリス製品のボイコットを呼びかけ、チャルカーと呼ばれる糸車が運動の象徴になったことを考えれば理解できます。 一方、「の真実」、「性の真実」と言われても、それはガンディーにとっ

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    kaikaji 2023/10/22
  • 三牧聖子『Z世代のアメリカ』(NHK出版新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    10月11 三牧聖子『Z世代のアメリカ』(NHK出版新書) 7点 カテゴリ:政治・経済7点 ちょっと前から話題になっていたにもかかわらず、「若い世代がアメリカを変える」みたいな話であれば読まなくてもいいかなと思っていたのですが、先日行われた日政治学会で著者の報告を聞いて、単純にそういうでもないのだということがわかったので読んでみました。 読んだ感想としては、今のアメリカ政治や外交の行き詰まりを非常にわかりやすく指摘しているというもので、アメリカ国内の分極化や、アメリカ外交における後ろ向きな姿勢の背景を理解するのに役立つと思います。 「世代論」のように読もうとすると、もう少し細かいデータや分析が欲しくなりますが、現在のアメリカ社会の見取り図としては十分なのではないかと思います。 対テロ戦争や米中対立から、カマラ・ハリスの不人気の要因まで触れられており、来年のアメリカ大統領選挙に向けた

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    kaikaji 2023/10/14
    "Z世代は「テロとの戦い」に否定的であり2019年にアメリカ進歩センターが行った調査ではZ世代の7割が「中東・アフガニスタンでの戦争は時間、人命、税金の無駄遣いであり自国の安全には何の役にも立たなかった」と答え"
  • 浜忠雄『ハイチ革命の世界史』(岩波新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    10月3 浜忠雄『ハイチ革命の世界史』(岩波新書) 7点 カテゴリ:歴史・宗教7点 BLM運動が起きたことなどによって、黒人の歴史、奴隷の歴史というものに注目が集まっていますが、そうした黒人奴隷の歴史の中でも特筆すべき出来事が1791年に起きたハイチ革命です。 この革命によって西半球ではアメリカ合衆国につぐ2番目の独立国になり、1806年には世界初の黒人共和国が誕生しました。このようにはハイチは輝かしい歴史を持つ国です。 しかし、同時に現在のハイチは貧困と治安の悪化に悩まされており、日の外務省も危険情報でレベル4の退避勧告を出しているほどです(2022年10月に引き上げられた)。人間開発指数で見ても193カ国中163位で最貧国と言っていいレベルです。 なぜ、このようになってしまったのか? 書はハイチ革命だけではなく、その後のハイチを明らかにしていきます。 フランスから請求された多額の賠

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    kaikaji 2023/10/08
  • 及川琢英『関東軍』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月5 及川琢英『関東軍』(中公新書) 7点 カテゴリ:歴史・宗教7点 満州事変での行動もあって「暴走」「独走」といったイメージがついている関東軍ですが、その関東軍とはいかなる軍隊で、なぜ暴走していったか明らかにしようとしたになります。 関東軍の誕生からソ連の対日参戦による壊滅までを、あとがきまで含めて290pほどでまとめていますが、張作霖爆殺事件が起こるのが105p、柳条湖事件が起こるのが132p、一方で関特演の話が始まるのが251pからであり、張作霖爆殺事件までと、満州事変から日米開戦までの記述が厚いことがわかるかと思います。逆に壊滅の過程はあっさりしています。 記述としてはやや細かい事項が続いて大きな見取り図がわかりにくい部分もあるのですが、関東軍の作戦に重要な役割を果たした参謀などの個人名が逐一書いてあることで、同じ人物なのに中央にいるときは関東軍にブレーキをかけようとし、関東軍

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    kaikaji 2023/07/20
  • 今井むつみ・秋田喜美『言語の本質』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月18 今井むつみ・秋田喜美『言語の質』(中公新書) 9点 カテゴリ:思想・心理9点 もしも「日質」というタイトルの新書があったら、「ずいぶん大げさなタイトルだな」とも思いますが、「言語の質」というのもそれに匹敵する、あるいは上回るような大げさなタイトルだと思います。言語は人間のコミュニケーションだけではなく、認識にとっても鍵になるものだからです。 ところが、書はその大げさなタイトルに十分に応える内容になっています。 書はオノマトペと言語がいかに現実とつながっているかという「記号接地問題」を軸にして、まさに言語の質に迫っていくのです。 前半のオノマトペの役割や、世界のオノマトペとその共通点といった話題でも十分に1冊の新書として成り立つ面白さがありますが、さらにそこから子どもがいかにして言語を学ぶのかという問題、そして言語の質へと肉薄していきます。 言語哲学をかじった人に

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    kaikaji 2023/07/20
  • 加藤博章『自衛隊海外派遣』(ちくま新書) 6点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月11 加藤博章『自衛隊海外派遣』(ちくま新書) 6点 カテゴリ:政治・経済6点 Amazonの紹介ページには、「変容する国際情勢に対して日は何ができ、何ができないのか? ペルシャ湾、イラク戦争からウクライナ戦争に至るまで。自衛隊海外活動の全貌に迫る画期的通史。」と書かれていますが、「自衛隊海外活動の全貌」を知りたい人にとってはやや肩透かしをかもしれません。 書は、自衛隊海外派遣への道が以下に切り拓かれていったかという政治に焦点を合わせた内容になります。 書はあとがきまでで233ページになりますが、PKO協力法の成立について書かれているには154ページ目になります。 このページ数のバランスから言っても、書がPKO協力法の成立までの過程の分析に力を入れていることは明らかです。 逆に、自衛隊がカンボジアで実際にどんな活動をしたのかといったことについてはほぼ触れられていません。

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    kaikaji 2023/07/11
    "PKO協力法に至るまで部分は面白くて読み応えがあります。一方、その後のテロ対策特措法とかイラク特別措置法、南スーダンへのPKO派遣の決定過程はあっさりと"
  • 嘉戸一将『法の近代』(岩波新書) 6点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    4月5 嘉戸一将『法の近代』(岩波新書) 6点 カテゴリ:政治・経済6点 書では冒頭に次のような問いが置かれてます。 私たちは、あるタイプの力の行使(例えば、略奪や侵略)を暴力として非難し、それとは異なる力の行使(例えば、徴税や土地収用)を権力として容認している。では、何によって権力と暴力は区別されるのだろう。型どおりに答えるなら、力の行使が合法的であるか否かだとなるだろう。では、何によって合法と非合法は区別されるのだろう。もちろん、法的根拠があるか否かだ。そして、近代においては、議会などの立法機関が制定した規範が法として通用している。 では、立法機関が制定した規範は、その内容を問わず、何であれ、法としてのステイタスをもつのだろうか。言い換えれば、私たちは立法機関を通じて、意のままに法を創ることができるのだろうか。(2p) 長々と引用していしまいましたが、これが書の中心となるテーマです

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    kaikaji 2023/04/08
  • 斎藤淳子『シン・中国人』(ちくま新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    3月29 斎藤淳子『シン・中国人』(ちくま新書) 7点 カテゴリ:社会7点 副題は「激変する社会と悩める若者たち」。急激な経済成長の中で生まれる世代間のギャップを主に恋愛結婚の面から見たになります。 改革開放が始まる以前の世代とそれ以降の世代では価値観やライフスタイルが違うというのは当然想像できるところですが、書はつづく90年代や00年代に生まれた世代も見ていくことで、さらなる価値観やライフスタイルの変化を明らかにしています。 中国では急速に少子化が進んでいますが、書を読めばそれも納得という感じで、現代中国における恋愛結婚・子育てが日以上に険しい道だということがわかります、 現代中国と、これからの中国を見ていく上で非常に面白い材料を提供してくれるだと言えるでしょう。 目次は以下の通り。第1章 世界一のジェネレーションギャップ―生活、金銭感覚、結婚観第2章 データで見る中国の恋

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    kaikaji 2023/03/30
  • 東大作『ウクライナ戦争をどう終わらせるか』(岩波新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    3月21 東大作『ウクライナ戦争をどう終わらせるか』(岩波新書) 7点 カテゴリ:政治・経済7点 タイトルを聞くと「そう簡単には終わらないよ」と反射的に言いたくなる状況ですが、それでも多くの犠牲者が出ている中で常に和平は模索されるべきですし、困難だからといって最初からあきらめるべきものではありません。 書はそんな困難な課題に、NHKのディレクターから研究の世界に入り、同時に国連のアフガニスタン支援ミッションなどにも参加した著者が挑んだものになります。  もちろん、戦争が終わらせる秘策が披露されているわけではありませんが、開戦1月後の2022年3月ごろにはトルコの仲介で停戦合意に近づいていたのも事実であり、このあたりから双方が妥協できそうなラインを探っています。 後半では、ウクライナ難民支援の現場の状況や、ウクライナ戦争に限定されない日の国際支援のあり方が論じられています。興味深い部分も

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    kaikaji 2023/03/21
  • 恒川惠一『新興国は世界を変えるか』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    2月28 恒川惠一『新興国は世界を変えるか』(中公新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 「新興国の経済成長によって世界は多極化しつつある」というような言説は溢れていて、枕詞のようにも使われているわけですが、では、「新興国とは具体的にどの国を指すのか?」、「新興国というまとまりに共通点はあるのか?」、そしてタイトルにもなってる「新興国は世界を変えるか?」と問われると、なかなか答えるのが難しいと思います。 例えば、「BRICS」だけをとり上げても、中国と南アフリカでは国としてのスケールも経済的な特徴も全く違うからです。  書は比較政治を専門とする著者が、上記のような問いに答えようとしたになります。 いくつかの特徴から29カ国を選び出し、経済発展の状況、福祉制度の発展具合、民主化のレベル、国際関係への影響などを探っています。 もともと「新興国」というのはまとまりのない概念なのですが、あえて

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    kaikaji 2023/02/28
    "インドでは権威主義を成り立たせる「供給」要因が弱かったためと考えられます。インド国民会議派は雑多な勢力の寄せ集めであり、ガンディーやネルーのような「カリスマ」は民主主義を志向していました"
  • 小泉悠『ウクライナ戦争』(ちくま新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    1月5 小泉悠『ウクライナ戦争』(ちくま新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、テレビなどで引っ張りだこになり、2021年6月に出た『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書)もベストセラーになった著者による待望の書。 今なお進行中の出来事を扱っており、なおかつ、かなりの突貫工事での出版だったと思いますが、さすがに侵攻前からこの問題をウォッチしてきただけあって内容は充実しています。 「ロシアウクライナの対立はどのような経緯をたどっていたのか?」、「なぜ、プーチンは武力行使を決断したのか?」、「当初のロシアの狙いはどのようなものだったのか?」、「ウクライナが善戦できた要因は何か?」、「東部で主導権を取り返すかと思われたロシアが再び劣勢に追い込まれたのはなぜか?」、「これからどうなるのか?」など、誰もが疑問に思う問題について現在分かる範囲で著者が分析

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    kaikaji 2023/01/05
  • 石山永一郎『ドゥテルテ』(角川新書) : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    12月15 石山永一郎『ドゥテルテ』(角川新書) カテゴリ:政治・経済7点 政治においてアウトサイダーが大きな期待を集めて政権を獲得し、結局その期待に応えられずに支持率を落として政権後半はグダグダになる。これは民主主義においてよく起こることですし、例えば、フィリピンでもエストラーダ大統領などはそのパターンでした。 書の主役であるドゥテルテ大統領も、なんとなくこのようなパターンをとるのではないかと思っていましたが、高い支持率を保ったまま今年大統領を退任しました。しかも、コロナの影響で経済が大きく低迷した時期を経験したにもかかわらずです。 書は、そんなドゥテルテ大統領の人気の秘密と、フィリピンという国の現状を探ったになります。著者は共同通信でフィリピン支局勤務などを務めたジャーナリストで、マルコス時代のフィリピンから取材している人物になります。 評価としては「ドゥテルテびいき」ではあると

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    kaikaji 2022/12/19
  • 秦正樹『陰謀論』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    11月9 秦正樹『陰謀論』(中公新書) 9点 カテゴリ:政治・経済9点 ネットが普及して、あるいはSNSが普及して可視化されたことの1つが書のテーマにもなっている「陰謀論」ではないでしょうか。 昔から「NASAは実はUFOと接触している」とか「M資金」とか陰謀論めいたことは語られてきたわけですが、SNSによって「ちゃんとしているはずの人」、例えば、大学の先生とか政治家が、陰謀論めいたことを発信したり紹介していることが可視化されました。 さらにトランプの扇動と「Qアノン」と呼ばれる陰謀論に乗せられる形で起こった2021年1月のアメリカ連邦議会襲撃事件は、陰謀論に人々を動かす力があることを見せつけました。 書は、そうした陰謀論について、その内容を紹介するのではなく、「誰がどんな陰謀論を受け入れるのか?」ということを中心に実証的に論じています。 ただ、陰謀論について調べるには難しさもあります

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    kaikaji 2022/11/13
    "「中知識層」「高知識層」のほうが「低知識層」に比べて、新型コロナウイルスの感染拡大に「武漢ウイルス研究所」や「中国政府」がかかわっているとする陰謀論を信じやすという傾向が出ています"
  • 中嶋洋平『社会主義前夜』(ちくま新書) 6点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    11月2 中嶋洋平『社会主義前夜』(ちくま新書) 6点 カテゴリ:思想・心理6点 「空想的社会主義」というカテゴリーでくくられている、サン=シモン、オーウェン、フーリエの思想と活動をまとめた。 この3人は18世紀後半に生まれた同時代人で、資主義と違った形の共同体を志向したという点では共通しているのですが、サン=シモンとフーリエはフランス人で、オーウェンはイギリス人、そして何よりも、著作活動を重視したサン=シモンとフーリエに対して、工場経営者から社会活動家のような形に転身したオーウェンでは、その人生のあり方が大きく違います。 そのため、この3人を一度に論じるというのはなかなか難しいものなのですが、書では当時の社会状況などを紹介しながら、社会問題に対する3者3様の取り組みを追っています。 目次は以下の通り。第1章 市民革命と産業革命―社会をめぐる動揺と混乱第2章 ナポレオンのヨーロッパ―

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    kaikaji 2022/11/09