昨日、カミさんの実家で地方紙「室蘭民報」日曜版(2009年11月15日)に目を通していて、あるコラムが目にとまった。一瞬、目を疑った。辺見庸の「コケを見にいく/光りしずまるもの」と題したエッセイが載っていた。その後半にこんな風に発音表記された言葉が引用されている。 いかいかがやくのではなく、いかいいうまる。いはいをそとへまきちあすのであなく、いかいをないぶへういこもうといていうようです。 何を言っているのか分からないでしょう。実は、これは辺見庸が五年半前に脳の病いに倒れ、歩けないどころか、ろくに話せなかったときに、付き添いの人にさりげなく渡され促されて、発声練習したときの文庫本、武田泰淳の『ひかりごけ』の一節を、そのときの発音のままに表記したものである。サ行とハ行とラ行の発音が舌がまわらなかったという。たしかに、ふだんぼくらはほとんど意識しないが、舌を激しく使う発音である。原文はこうである