『地図にない町』 フィリップ・K・ディック ☆☆☆★ ものすごく久しぶりに再読したが、実はこれが、私が最初に読んだ記念すべきディック本だった。確か中学生の時である。その頃ブラッドベリなどのファンタジー系にはまっていた私は「あるはずのない駅で列車が止まる。駅前にひろがるのは地図にない町、そこで目にするものは……?」という裏表紙の紹介文を読み、叙情的なSFファンタジーを想像して本書を手に取ったのである。その他にもおもちゃの兵隊がどうたら、子供にお菓子をご馳走するクッキーばあさんがどうたら書かれているので、ほんわかしたおとぎ話系幻想譚、可愛らしい系の癒しファンタジーだと思ってしまった。だってこれ読んだら誰だってそう思うだろ。 で、冒頭の「おもちゃの戦争」を一読、異様に冷え冷えとした空気に「なんじゃこりゃ!?」と驚き、違和感を抱きながらもそのままどんどん読み進み、最後の「地図にない町」を読み終