シンガポール・スリングというカクテルは、さまざまな材料からできているので、まったく同じ味に出くわすことはめったにない。そう考えると、天然ガスの世界的な取引を標準化するべく導入する価格指標に、このカクテルにちなんだ名前をつけるのはいささか不適切な感じがする。 だがそんなことは、株式、債券、デリバティブ(金融派生商品)を取り扱うシンガポール証券取引所にとっては、さして大きな問題ではなかったようだ。液化天然ガス(LNG)取引の世界的なハブを目指す取り組みの一環として、都市国家シンガポールは昨年、SLInGと呼ぶ(少しこじつけっぽい)価格指数を開発した。アジアにおけるLNGスポット価格の指標だ。 これを補完すべく、今年1月25日にはデリバティブ契約の取引もスタートさせた。だが先は長い。シンガポール証券取引所の幹部によれば、スポット市場は現在のところ、アジアで取引されているLNG量のたった5%を占め