反田中の急先鋒であった石原慎太郎元東京都知事が田中角栄元総理の人生を一人称で書いた『天才』(幻冬舎)を出版した。タイトルが示す通り田中角栄という政治家を先見性に満ちた「天才」と評価し、戦後の日本を切り拓いた天才がロッキード事件によって葬り去られた事を惜しんでいる。 2011年3月に東日本大震災が起きた時、「津波は天罰」と発言して物議をかもした石原都知事は、同時に「こんな時に田中角栄がいたらなあ」とも発言し、私に「おや」と思わせた。 田中批判で名を売った人がようやく田中を理解するようになったのかと思ったが、おそらくこの本を書くために田中について調べていた時だったのだろう。『天才』の後書きで石原氏は「東京都知事としてやれなかった事がいろいろあるが、もし田中角栄が健在で相談をしていたらやれたかもしれない」という趣旨を述べている。 ロッキード裁判の一審判決が秋に予定されていた1983年初頭、私はT