竹内研究室の日記 2019 | 01 |
中村修二さんがノーベル賞を受賞されたことから、お祝いとともに、日本の科学技術の今後について心配する声など、メディアの方の取材の依頼を受けるようになりました。 本当はフラッシュメモリがフラッシュメモリにノーベル賞が授与され、開発チームの一員、当事者としてメディアの取材を受けたかったのですが仕方ない。日本の技術者の処遇を考えるきっかけになれば良いと思います。 問い合わせて頂く内容は例えば、 「日本の技術者は虐げられているのではないか」 「ノーベル賞は日本の経済が良かった時代のもので、これからの日本の科学技術は競争力があるのか」 「日本の技術者・研究者は報われないのではないか」 「日本の大学の研究環境は悪化するばかりではないか」 「特許法の改正で特許の帰属が発明者から企業に変わることで、更に技術者のモチベーションが下がるのではないか」 個々の取材にお答えするのも面倒なので、このブログでお答えしよ
私も青色LED、青色レーザーの材料の物性の研究を卒論、修士でやっていたので、今回のノーベル賞は20年前の自分の研究を思い出してとても懐かしく感じます。 私は当時、青色LED、レーザーで最も有力視されていたZnSe(セレン化亜鉛)の研究をしていました。LEDやレーザーそのものの研究ではなく、ZnSeを作成する企業の方にサンプルを頂いて、基礎的な物性を調べていました。 極低温に冷やし、紫外線レーザーを当てると、今のLEDやレーザーのようにZnSeが青い光を発していたのは本当に美しかった。 今回のノーベル賞でとても不思議だったのは、中村修二さんは当時主流だったZnSeの研究をせずに、なぜあえてGaNを選んだのか。 どのようなコンセプトがあったのか? 当時の状況を知る一人としては、GaNを選んだ理由がどうしもわかりませんでした。 日経ビジネスの記事「中村修二氏が語る、青色LED開発前に学んだ2つの
青色レーザーダイオードを実現した赤崎先生、天野先生、中村修二さんがノーベル賞を受賞されました。本当におめでとうございます。 特に中村修二さんは企業(日亜化学)での仕事で受賞したわけですから、私は中村さんよりも下の世代ですが、企業で技術者だった私は大変勇気づけられました。 大変失礼な言い方をすると、赤崎先生は偉すぎて雲の上の存在ですが、中村修二さんならひょっとしたら自分もなれるかもと、企業などで実用研究をしている技術者にも思われるところがあるのが、今回のノーベル賞は良いですね。 また実は私は学部、修士の時に青色レーザーに関連する研究をしていたので、昔(学生時代)を思い出して感慨もひとしおです。 当時は青色レーザーを目指して、今回受賞したGaNとZnSeが激しく競争。いずれの陣営も日本の企業・大学が中心で、「日本を制したものが世界を制する」という、日本の黄金期でした。 私は「負け組」であるZn
中村修二さんの青色LEDや私の元上司である舛岡先生のフラッシュメモリなど、発明者が特許の対価を求めて古巣の企業を訴えることが相次いだ時代がありました。 こういった元従業員からの訴訟のリスクを避けるため、特許を現行の発明者ではなく企業に帰属するように法改正する、という動きがあるようです。 この法改正によってエンジニアのやる気が奪われるのか? 結論を先に言うと、さして変わらないと思います。 むしろ、アメリカ企業と同様になると、特許を書くモチベーションは高まるかもしれません。 まず、現在の特許が発明者に帰属するという法律下でも、特許によって成功報酬としてエンジニアに補償金が払われるのは実際はそう多くないという現実があります。 特許は書くだけでは単なるコスト(出願にも維持にもお金がかかる)です。 そして、特許を自社で使うだけでも不十分。 例えば、ものすごくマニアックな技術を開発し、自社だけしか利用
東芝をやめて大学に移ってから7年が経ちました。大学に移った当初は全く研究資金が無くて金策に走る毎日。そうしているうちに助けて下さる方いて、何とか研究室を立ち上げることができました。 当時はまだ日本の半導体はそれなり頑張っていたので、半導体産業への期待という意味で国家プロジェクトが立ち上がり、その恩恵も受けました。 おかげさまで研究室が立ち上がり、研究スタッフも集まり、多くの方のご支援のおかげで、自分では思ってみないほどの成果をあげられました。 まさか毎年ISSCCで発表できるなんて、思ってもみませんでした。 研究はとても好調ですが、実は今、予想外の逆風にさらされています。 自分の研究は順調だし、古巣の東芝のフラッシュメモリ事業も絶好調、ビッグデータを蓄えるストレージ産業も絶好調。自分の周辺だけは何の問題もありません。むしろ、状況は良くなる一方。 ところが、気付くと、周囲の他の日本の半導体や
「半導体は基幹産業なので国として守る必要がある」 「電気自動車もロボットも基盤の技術はエレクトロニクスだから、電機産業を支援すべき」 ・・・確かに、半導体やエレクトロニクスは重要な技術で、日本から無くなって良いと思っている人は居ないでしょう。しかし、 「半導体が重要だからと言って、税金を浪費してよいのか。既に日本は巨額の借金がある。」 「農業や漁業を見てもわかるように、国が産業を支援したところで、産業が強くなるどころか、かえって弱体化するのではないか」 ・・・というのも正しいのではないでしょうか。 結局は、「重要な産業だけれども、今の状態で税金を突っ込んでも無駄ではないか」ということでしょうか。 私も電機産業の一員として、自分の分野が弱体化をするのは寂しいし、おそらくこれからも日本にとって半導体や電機が重要なのは間違いないでしょう。 その一方、現在「半導体や電機を支援せよ」と言っている方た
オバマ大統領が来日した際、日本未来館で東大発のロボットを開発するベンチャー、シャフトの創業者たちと彼らの製品のロボットと会ったそうですね。 ロボットと言えば、日本のお家芸。今でも産業用のロボットは非常に日本企業が強いです。 その一方、二足歩行のようなヒューマノイドのロボットはおもちゃとしては面白いけど、なかなか産業として離陸することが難しい。 介護ロボットとして有望と言われていますが、実用化はまだ遠そうです。 産業が広がらないために、シャフトもなかなか日本では資金を集められなかったと言われています。 結局、グーグルに買収された(してもらった)。 投資対象としてロボットを評価する時に、おそらく日本のメーカーは、ハードウエアとしてロボット単体の商売を考えたのでしょう。 そうすると、最近のロボットは、高度なセンサを搭載し、AIなどを使って賢いアルゴリズムを実装して高機能化してきたと言っても、まだ
STAP細胞は研究成果の疑惑から博士論文のコピペにまでなってます。 あたかも成果さえ出れば博士論文なんてどうでも良いのでは、ということまで言う人が出る始末。 そこで、そもそも博士論文とは何か?、について書いてみようと思います。 まず私は大学院は修士で卒業して博士課程は行っていません。 博士論文は東芝での研究をまとめたもので、論文博士。博士とは何たるか、語る資格が自分にどれだけあるか、自信があるわけではありません。 むしろ、博士課程の学生を指導しながら、自らも博士とは何たるかを学んでいるところもあります。 ですから自分ができているかはさておき、「博士とはこうあるべき」という、いわば自分が理想にしていることについて書こうと思います。 技術や科学は日進月歩で進化するもの。逆に言えば、世界初の成果も、すぐに否定されるのです。 ISSCCのようなトップ学会では、「世界一であるか」が厳しく問われます。
就活は勝負どころになりましたね。 就活は11、12月から始まり、ダラダラと長く続くのですが、実質的な選考は3月からの短期決戦。 この数週間で一気に内々定が出だすので、乗り遅れると厳しくなる。ダラダラやってないで、12月ごろにさっさと早く決めればいいのに、と思わないでもないですが。 それはさておき。 先日、Wedgeの4月の就活特集“「就活」が日本をダメにする”で取材を受けました。 ちょっとだけ私のコメントも掲載されていますが、取材の時に記者さんとお話してとても印象的だったことは、 「リクナビのようなネットで就活する悲劇は、学生がさも平等で誰でもチャンスがあると錯覚する」 ということ。 なるほどなあ。 現実は、ネットによる応募も大学名によって落とされたりするようですし、採用で「完全な平等」なんてあるはずないですよね。 日本企業は一度雇用してしまったら解雇は難しいから、より慎重な上にも慎重にな
日本ではITやエレクトロニクスはダメダメですが、一歩、国外に出れば成長産業。 私が研究しているSSDや半導体メモリを使ったストレージは、ITのクラウド化で猛烈に成長している。 例えば、Flash Memory Summitという8月にシリコンバレーで行われたマーケティングの会合では、400件以上の発表が行われ、4000人もの参加者が。 でも、日本の半導体やITはリストラなどの後ろ向きばかり。GoogleやAmazonのように、世界はドンドン進んでいくのに、日本はどうするんでしょうね。 私は日本の大学に居るし、国(税金)からも予算を頂いて研究している部分もあるので、何としても、日本の企業に貢献したい、復活のお手伝いをしたいと思っています。 ですが、共同研究などのお話をしていると、愕然とすることばかり。 研究するには、それなりにお金が必要ですが、「金は出さないけど、権利は全てよこせ」というケー
エルピーダメモリは私の研究の重要なパートナーだったので、倒産は私の研究への影響は大きい。このところ、様々な投資家さんとお話しすると、自分の考えの甘さを実感する。 どうしても、自分のやっていることは重要だと思いたいし、いろいろな思い入れがある。 第三者から、「今はあなたのアイデアは良いけど、大企業がすぐにコピーして、追いつくのではないか?」 「将来も優位に立ち続けることができるのか?」 「絶対にあなたしかできないことは何か?」 「チームの中で、本当にこの人は必要なのか?」 と突っ込まれると、考え込んでしまう。 投資家という第三者の厳しい目でそぎ落として行った時に、何が残るのかを、時々考えた方が良いですね。 これは、研究計画、ベンチャーのビジネスプラン、個人のキャリアプランすべてに言えること。 組織に守られていると、自分がどれだけの価値があるか、見失いがち。 事業をやめることになった時や、会社
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