『大原社会問題研究所雑誌』書評欄オンライン版 多田 茂治著 『大正アナキストの夢――渡辺政太郎とその時代』 評者:梅田 俊英 本書は,熊本県荒尾市の故中島康允氏が,1銭5厘の「赤紙」で召集された戦中派の怒りをこめて,定価1銭5厘と銘打って発行された個人誌『遺言』に連載されたものがもとになっている。連載中の1982年に中島氏は亡くなられたが,その後明治社会主義史の研究者柏木隆法氏が発行を続けられ,多田茂治氏の連載は無事完了したという。なお,多田氏は新聞記者等から文筆業に入り,社会小説を執筆されている。本書は次のような構成になっている。一見して明らかなように,渡辺政太郎の生涯とさまざまな人物との関わりがメインテーマとなっている。 第1章 1孤児とともに 2天間の平民床 第2章 1ヨカヨカ飴屋 2終生の肩書 3大逆事件の序曲 第3章 1赤羽巌穴『農民の福音』 2西川光二郎離脱 3縊り残され… 第