光はどのようにして自らの行くべき最善の道筋を知るのだろう? 最小作用の原理を発見したモーペルテュイは、それを「神の叡智」によると信じた。ライプニッツの「可能世界」の概念とも結びつき18世紀に自然哲学上の議論を呼んだこの原理は、解析力学が成熟するにつれ、形而上学的意味を失っていく……。本書は、最も合理的な解の解法をめぐる400年の物語だ。 オイラー、ハミルトンらによる解析力学の数学的発展、「力学を幾何学の領域へ連れて行った」ポアンカレ。数学によって世界の新たな見方を切り拓いた天才たちの離れ業には、魅了されずにいられない。著者はビリヤード球の運動を例に、可積分系から非可積分系への移行、計算から幾何への移行やカオスをわかりやすく描出している。 さらに同じビリヤードを使ってグロモフの「古典力学の不確定性原理」が解説されるのも、偉大なパズルが解けていくような驚きと痛快さがある。力のある読者はぜひ、ガ