ケインズではないが、経済学者というのは、エッセイを書く力が非常に大切なように思う。そこへ、当代きっての理論家である松井彰彦先生が「不自由な経済」を出されたのだから、これは、読まずばなるまい。日経掲載当時から楽しませてもらっていたが、なかなか示唆に富む良い内容である。 さて、松井先生はゲーム理論で知られるが、これを使うと、日本経済の長期停滞も解けるのではないかと期待している。まあ、掛け声だけではつまらんから、今日はちょっと書いてみることにしよう。理論があってこそ、現実は見えて来るということが、なんとなくイメージできるのではないか。 日本は、金利も賃金も低い。なぜ、経営者は、これらを組み合わせる設備投資をして、儲けようとしないのだろう。それは、リスクがあるからだ。「やれば儲かるとは思うんだが、内需が後退したりで大損を被るのは避けたい」といったところだろうか。機会利益を捨てているのであり、不合理