スロヴェニアの鬼才、スラヴォイ・ジジェクは、超難解で知られるジャック・ラカンの精神分析理論を武器に、映画や社会批評などを幅広く手がける思想家として知られている。 本書は、そのジジェクがついに書いたラカンの入門書。 とは言っても、ラカンの理論を逐一解説していくような本ではない。 ジジェクは言う。 「最良のラカン読解法とは、ラカンの読書法をみずから実践すること、すなわちラカンとともに他者のテクストを読むことではなかろうか。」 ということで、ジジェクは、ラカン理論を直接解説するのではなく、これを映画や社会批評に応用することで、「なぁるほど、ラカン理論の“物の見方”はこういう感じか」ということを分からせようとする。 そしてその試みは、それなりに成功していると言っていいだろうと私は思う。 もちろん、本書で描き出されたラカン理論は、そのごく一部にすぎない。しかしそれでもなお、本書は、最上のラカン使いに