まもなく新著を刊行する大澤真幸さんが、毎週「時評」を寄せてくださることになりました。第一回は、浜岡原発。ある政治的な決定に触れると、だれしも何か不満を触知する、そんな習性はどこに起因するのか、どうやって脱出するか。 ウィンストン・チャーチルは、労作『第二次世界大戦』の結末で、政治の役割、政治における決定の神秘について論じている。学者や専門家は、いろいろな案件について、複雑で多様な分析結果を提示する。その分析結果から示唆される選択肢のそれぞれに関して、それに賛成すべき理由ひとつに対して、反対すべき理由がふたつあるとか、逆に、反対すべき理由ひとつに対して、賛成すべき理由がふたつあったりする。専門家たちは、だから、必ずこう言う、「一方でOn the one hand...、他方でOn the other hand...」と。こうした状況で、誰かが、はっきりと決定しなくてはならない。決定というこの