なぜ日本は停滞からなかなか抜け出せないのか? その背景には、日本社会を支配する「暗黙のルール」があったーー。 社会学者・小熊英二さんが、硬直化した日本社会の原因を鋭く分析します。 ※本記事は小熊英二『日本社会のしくみ』(講談社現代新書、2019年)から抜粋・編集したものです。 アベグレンは、「ある大手製造業企業」の管理職の全員と、職員・工員の10%を対象に、組織内の階層と学歴の関係を調べた結果を示している。そこで彼は、従業員が「大きく3つのグループに分類される」ことを見出した。すなわち、大卒の上級職員、高卒の下級職員、中卒の現場労働者である。 アベグレンは3つのグループを、家庭背景も含めてこう記述する。 まず、中学から採用された工員のグループがある。工員は通常、農村出身であり、貧しい家の出である。工場で採用され、その工場で集団研修を受け、全員が養成工、未熟練労働者として、ほぼ同じ立場で工場