あなたは、20万トン級タンカーを運転したことがあるだろうか? ま、私だって、むろん無い。しかし、昔、大学に入りたてのころ、大学祭で船舶工学科の学生が作った「タンカー・シミュレーション」をさわらせてもらったことがある。当時まだパソコンが普及しておらず、そのシミュレーターは大学の大型計算機に接続されており、船の位置はX-Yプロッターに書き出すようにできていた。手のひらに載るゲーム機でフライト・シミュレータが動いてしまう今からは、信じられぬほど大昔の話だ。 しかし、タンカー・シミュレーションの仕組みはそれでも十分、実用的なリアルタイム性をもっていた。なぜなら、タンカーの運転はとてもゆっくりした作業だからだ。シミュレータ上には運河の線が描かれており、その曲がった岸壁にぶつからないように舵を切っていかねばならない。しかし、何度やっても私のタンカーは曲がりきれずに岸壁にぶつかって沈没してしまう。タンカ