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ブックマーク / blog.tatsuru.com (72)

  • 民主政の終わり - 内田樹の研究室

    都知事選の翌日にニッポンドットコムという媒体からインタビューを受けた。以下はその記事に少しリタッチしたもの。 今回の都知事選では、選挙は民主主義の根幹を為す営みであるという認識がかなり深刻な崩れ方をしているという印象を受けた。選挙というのは有権者が自分たちの立場を代表する代議員を選ぶ貴重な機会であるという認識が日からは失われつつあるようだ。 投票する人たちは「自分たちに利益をもたらす政策を実現してくれる人」を選ぶのではなく、「自分と同じ部族の属する人」に投票しているように私には見えた。自分と「ケミストリー」が似ている人間であるなら、その幼児性や性格の歪みも「込み」で受け入れようとしている。だから、仮に投票の結果、自分の生活が苦しくなっても、世の中がより住みにくくなっても、それは「自分の属する部族」が政治権力を行使したことの帰結だから、別に文句はない。 自分自身にとってこの社会がより住みよ

    kenjou
    kenjou 2024/07/12
    この人は状況に危機感を持つのはいいんだけど、言い方が大仰というか暗いんだよね。もうダメだ、もう終わりだといってると本当に終わりが近づく。それよりも、私はがんばるからあなたもがんばろうと呼びかけたい。
  • 東洋経済のインタビュー - 内田樹の研究室

    アメリカの学生たちを中心にガザ侵攻に対する激しい抗議活動が起こりましたが、若い人たちはたんにガザ侵攻だけに怒っているのでしょうか。人種差別や気候変動、あるいは、最近の大人たちなど多岐にわたって怒りをぶつけているように見えます。 そうだと思います。今の世界は「今さえよければ、自分さえよければ、それでいい」いう視野狭窄的なものの見方が支配的です。だから、人々は人口減や気候変動など長いタイムスパンの中で考察すべき危機に対しては考えようとしない。世界どこでもそうです。世界を見回しても、グローバルリーダーシップを取ることのできるだけの宏大なビジョンを語る政治家がいない。若い人たちが苛立つのは当然だと思います。 ―日では抗議運動もささやかですし、報道も下火な感じがします。 日はそもそも「抗議」とか「反抗」とか「抗命」ということに対して強い抑圧がかかる社会です。いったん大勢が決まると、全員がそれに

    kenjou
    kenjou 2024/06/30
    学校の無償化は進んでいて、そのあたりは人気取り政策でしかないのだろうけど、公共性はあるのではないかな。一方で研究機関とか図書館とか美術館などが虐げられている問題も発生しているけど。
  • フリーライダーの効用 - 内田樹の研究室

    高齢者の集団自決が高齢化対策の秘策であると公言した若い経済学者の発言が話題を呼んでいる。 彼の言う「人間は引き際が重要だと思う」ということにも「過去の功績を使って居座り続ける人がいろいろなレイヤーで多すぎる」という事実の摘示にも私は同意する。でも、使えないやつは有害無益だから、集団から追い出すべきだという論には同意しない。人道的な立場からというよりは組織人としての経験に基づいてそう思うのである。 組織に寄生して、何も価値を生み出さず、むしろ新しい活動の妨害をする「フリーライダー」はどのような集団にも一定数含まれる。この「無駄飯い」の比率を下げることはたしかに集団のパフォーマンスを向上させることにある程度までは役立つだろう。ただし、「ある程度」までである。というのは「無駄飯いの排除」作業に割く手間暇がある限度を超えると、その作業自体が集団のパフォーマンスを著しく低下させるからである。 組

    kenjou
    kenjou 2024/03/11
    老人がどうとか言うよりも、出生率を上げて若者が活躍しやすい環境を作る方が大事だよね。
  • メンターはどうやって見つけたらいいのでしょう? - 内田樹の研究室

    韓国のある出版社から「韓国オリジナルの」を出すことになった。先方から質問を送ってもらって、それに僕が答えて、それで一冊にするという趣向である。 その中に面白い質問があった。「メンターはどうやって見つけたらいいのでしょう?」というものである。 「最近はオンラインでのコミュニケーションが活発になったおかげで物理的に遠く離れている人をメンターとする人もいたりします。 韓国では「オンライン先輩」「オンラインメンター」というような言葉もあります。良いメンターとメンティ、あるいは望ましい師匠と弟子の関係とはどのような形なのでしょうか?」 以下が私からの回答。 メンターにはいろいろな種類があります。生涯師として仰ぎ見て、ずっとその後についてゆく人もいるし、一時的にA地点からB地点まで移動するときの道案内をしれくれただけの人もいます。例えば、広い川の前に来た時に、渡し船が来て船頭さんに「乗るかい?」と誘

    kenjou
    kenjou 2023/10/24
    本を読む時もひとつでもいいところがあればいいか、という気持ちで読むと色々な本が読めるし身につくことも多くなる。あまり他人に期待しすぎない方がいい。自分だってそんなに期待できる存在じゃないわけだし。
  • 受験についてのインタビュー - 内田樹の研究室

    ある教育雑誌から受験についてのインタビューを受けたので、採録。 ――今の教育や受験制度についてどう思われますか。 内田 受験は、同学齢集団内部で「誰でもができること」を「他の人よりうまくできる」競争です。でも、「競争」と「学び」は違うものです。そして、僕が経験に言えるのは、相対的な優劣をどれほど激しく競わせても、それによって集団全体の知的なパフォーマンスが向上することはないということです。競争を強いると個人的には力を伸ばす人もいますが、集団全体としては弱くなる。 僕がかかわっていたフランス文学研究の世界でも、就職が難しくなってきてから、受験同様、研究者の間で優劣を競うようになりました。限られた教員の専任ポストを巡っての競争ですから、当然厳密な査定が必要になります。そして、精度の高い査定をするためには、「研究者ができるだけ多い分野」で「他の人より優れた業績」を上げることが求められます。当然で

    kenjou
    kenjou 2023/08/30
    外国語はあまり身についてないけど、翻訳本を読むと面白いと感じるのは自分とはぜんぜん違うものの見方や考え方に触れられるからなんだよね。日本人のだと自分と似たところが多いからあまり刺激にはならない。
  • 宮﨑駿『君たちはどう生きるか』を観て - 内田樹の研究室

    私は宮崎駿の映画のかなり熱烈なファンである。これまでいくつかの宮崎駿作品について映画評を書いてきた。宮崎作品を観た後は、いつでも語りたいことが湧き上がってきて、語らずにはいられないのである。 今回の『君たちはどう生きるか』についても、何かを語らずにはいられないことに変わりはないのだが、それはこれまでのように自分が観た映画について語ることを通じて「さらなる愉悦」を引き出すためではない。「これは一体どういう作品なのか」を何とか言葉にしてみないと、自分が何を観たのかがよくわからないからである。 これまでの宮崎作品なら、物語は完結し、ラストで伏線は回収され、映画の「メッセージ」も別に解釈の手間をかけずにもすんなりと伝わってきた。映画を楽しむためには、それで十分だった。そして、映画をたっぷり楽しんだ上で、「果たして物語はあれで完結しているのか?」「伏線はほんとうに回収されているのか?」「あんな『わか

    kenjou
    kenjou 2023/08/22
    もののけ姫を作った後で大きなもの(巨神兵やデイダラボッチ)を出せば客が喜ぶのはわかってるけど、そういうのはもうやりたくないと宮崎駿は語っていた。受ける定番の手段を用いるのに飽きたというのはあると思う。
  • 維新と加速主義 - 内田樹の研究室

    ある講演会で大阪の維新政治15年の総括を求められた。行政、医療、教育、どれをとっても大阪市府の現状は高い評点を得られるものではない。だが大阪での維新の人気は圧倒的である。なぜ政策が成功していない政党を有権者は支持し続けるのか。 維新政治に批判的な人たちは有権者が維新政治の実態を知らないからだという解釈を採っている。大阪のメディアが維新の広報機関と化しているので、有権者は維新政治が成功していると信じ込んでいる。だから、真実を知らしめれば、評価は一変するはずだと言うのである。そうだろうか。私は違うような気がする。 大阪の有権者は大阪で何が起きているかちゃんと知っているのだ。それは日の未来を先取りしているということである。大阪は実は「トップランナー」なのである。 公務員は減らせるだけ減らす。行政コストは削るだけ削る。社会福祉制度のフリーライダーは一掃する。学校教育では上位者の命令に従うイエスマ

    kenjou
    kenjou 2023/04/16
    この人は大学やめて学生と接しなくなったころから話が雑になり、同じ話ばかりするようになって微妙な存在になっていった。単純に老いて思考力も落ちてるんだろうけど。
  • 岸田政権は何をしようとしているのか - 内田樹の研究室

    ある媒体からインタビューのオファーがあった。岸田政権の新年度予算成立を受けて、「なぜ政権はこれほど性急に防衛予算の拡大に進むのか」について訊かれたので、次のように答えた。 今回の防衛費増額の背景にあるのは岸田政権の支持基盤の弱さだと思う。 彼にとって喫緊の課題は二つだけである。一つは国内の自民党の鉄板の支持層の期待を裏切らないこと。一つは米国に徹底的に追随すること。日の将来についての自前のビジョンは彼にはない。 今回の防衛予算や防衛費をGDP比2%に積み上げるのも、米国が北大西洋条約機構(NATO)に求める水準に足並みをそろえるためであって、日の発意ではない。日が自国の安全保障戦略について熟慮して、必要経費を積算した結果、「この数字しかない」と言ってでてきた数字ではない。アメリカから言われた数字をそのまま腹話術の人形のように繰り返しているだけである。 国民がこの大きな増額にそれほど違

    kenjou
    kenjou 2023/04/02
    日本はほんと先がないよね。まともに改革を考えている人も一部にはいるのだろうけど権力を持ってないし、後はあきらめている人かダメな状況に適応しようとする人ばかり。
  • 『アメリカは内戦に向かうのか』バーバラ・F.ウォルター - 内田樹の研究室

    原題はHow civil wars start 「どのようにして内戦は始まるのか」。アメリカのことだけを論じているわけではない。「内戦論」である。さまざまな国におけるこれまでの内戦を統計的に分析して、どういう条件が整うと内戦が始まるのかを解説する。 これまでの世界各地の内戦を分析する箇所での筆致は学術的で抑制的である。しかし、ひとたび話題がアメリカに及ぶと、文体がいささか感情的になってくる。学術的な書き物の場合、筆者が個人的な恐怖や不安をあらわにすることはふつうしない。個人的感情を抑えて論文は書かれなければならないと大学院では教える。もちろん筆者ウォルターも大学教師だから、そういうルールは熟知しているはずである。でも、内戦の切迫が彼女の自制心を乱している。「アメリカにおける第二の南北戦争勃発の危険性に危機感を募らせるようになった」(21頁)からである。 でも、私はそのことをこの書物の瑕疵だ

    kenjou
    kenjou 2023/04/01
    日本には選挙結果を覆そうとする勢力はいないし、民族的にもいまのところはまとまっているので内戦のリスクがない。アメリカはその正反対なので内戦のリスクは現実的なものとなっている。
  • ある共産党員への手紙 - 内田樹の研究室

    共産党員で、私のの愛読者でもあるというSさんという方から手紙を頂いた。松竹伸幸さんの「共産党党首公選」をめぐる論争で私が松竹さんの行動を支持していることについてである。共産党の党規約はよくできていて、党運営も民主的であるのだから、松竹さんは「意見があるなら、党内でドンドン発言しなさい」という『しんぶん赤旗』の読者投書を引いて、私の行動をやんわりと批判するものだった。それに対してこんな返信をした。 Sさま はじめまして、内田樹です。 お手紙と投書拝見しました。ご指摘ありがとうございます。 松竹さんの件については、実は僕も困惑しています。 僕は非党員ですから、共産党の党規約というものがどんなものだか知りません。共産党の党内民主主義の実相についても存じ上げません。 松竹さんは現役の共産党員であり、長く党中枢にいた人で、僕が実際に存じ上げて、人間を信頼している方ですので、その方から「党首や党幹部

    kenjou
    kenjou 2023/03/29
    党の反応もダメだけど、議員たちがみなそろって同じことしか言わないのが一番気持ち悪かった。教条的な人たちに権力を預けるのは危険なので、あれではとても支持できない。
  • 3・11から学ぶこと - 内田樹の研究室

    3.11の時、東京電力福島第一原発では炉心溶融、建屋爆発が連続発生し、事故はチェルノブイリ原発事故と同レベルの過酷事故と認定された。以後再稼働することなく廃炉作業が続けられている。廃炉作業にどれほどの歳月と費用が必要なのかもまだわからない。経産省は2016年に22兆円と計算したが、2019年には民間シンクタンクが最高81兆円の試算を示した。政府のこの種の試算はだいたい後になって大幅に上方修正されるのが通例であるから、いずれ81兆円を超えても私は驚かない。 日列島は、全世界のマグニチュード6以上の地震の20%が周辺で発生する世界有数の地震多発地帯である。世界標準を超えるレベルの安全基準を採用するのが当然だと私は思うが、原発を建てた人たちはそうは思わなかったらしい。 東電の旧経営陣3人が業務上過失致死傷で起訴された裁判で、東京高裁は「巨大津波の襲来を予測することはできず、事故を回避するために

    kenjou
    kenjou 2023/03/10
    実際に東電はまともな企業ではないと社会からみなされるようになり、いまだにそれを引きずっているよね。電気代が東電だけ高いという現象で反映されている。東電は一度解体してやり直さないとダメじゃないかな。
  • 桜を見る会再論 - 内田樹の研究室

    もうこの話をするのにも飽き飽きしている。「桜を見る会」についての話である。 どうして「飽き飽き」しているかというと、ふつうの人間の受忍限度を超えて、この話が続いているからである。 続く理由は簡単で、ふつうは申し開きのできない証拠をつきつけられて「申し訳ありませんでした。私がやりました」として「犯人」が白状して、火曜サスペンス劇場が終わるところで、ぜんぜんドラマが終わらないからである。 でも、「私がやりました」と言わないというのは、ある意味では「合理的な」ふるまいなのである。 昔、東京地検に勤めていた友人から、推理ドラマはあれは嘘っぱちだという話を聴いたことがある。検察官に供述の矛盾を衝かれて、顔面蒼白となって、「もはやこれまで」と自白するのは「自分が知性的な人間である」ということにおのれの存在根拠を置いている人間だけだというのである。 「そんな人間は実はめったにいないんだよ。そんなのはね、

    kenjou
    kenjou 2020/02/01
    安倍を支持する人間が4割くらい安定して存在しているのだから、既に日本はバカが支配する国になっているのでしょうね。間違いなく衰退するでしょう。
  • 図書館について - 内田樹の研究室

    「最終講義 韓国語版 あとがき」としてこんな話を書いた。 みなさん、こんにちは。内田樹です。 『最終講義』韓国語版お読み頂きまして、ありがとうございます。 これは講演録です。講演録といっても、録音を文字起こししただけだと、話がくどすぎたり、逆に説明が足りなかったり、言いかけた固有名詞や年号や数値が思い出せなかったり、間違えたりというころがあるので、読みやすくするために少しは加筆しています。でも、だいたい話すときは「こんな感じ」です。 「あとがき」に書いてある通り、講演のときに僕はあまり準備をしません。その場に行って、看板を見上げて「あ、今日はこんな演題なんですか」と驚くことさえあります。それでも、「どういう演題でお話頂けますか?」という問い合わせに対して自分で選んだ演題ですから、その時点では「こういう話をしよう」という腹案があったはずです。自分の腹の中のどこかにあるものなら、探せば出て来ま

    kenjou
    kenjou 2019/07/21
    たったひとりで膨大な知の集積と向き合うのっていいですよね。大学の図書館のひとけのないところで、よくそういう時間を過ごしていました。
  • 廃仏毀釈について - 内田樹の研究室

    昨日の寺子屋ゼミで「廃仏毀釈」についての発表があった。いくつかコメントをしたので、備忘のためにここに書き留めておく。 神仏分離・廃仏毀釈というのは不可解な歴史事件である。すごく変な話なのである。歴史の教科書では「合理的な説明」がよくなされているが(水戸学が流行していた。明治政府が欧米列強に伍するためにキリスト教に対抗して国家神道を体系化するために行った。江戸時代の寺檀制度に増長した僧侶の堕落のせいで民心の仏教から離反していた・・・などなど)、どうも腑に落ちない。 神仏習合というのはそれ以前にすでに1300年の伝統のあるほとんど土着した日の宗教的伝統である。それを明治政府の発令した一篇の政令によって人々が軽々と捨てられたということがまず「変」である。この人たちにとって、千年を超える宗教的伝統というのはそんなに軽いものだったのか? 神仏分離令の発令は慶應四年(1868年)である。「五畿七道

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    kenjou 2019/05/31
    司馬遼太郎がこういった事態を指して、日本人はすごく変わり身が早いと指摘していた気がする。身分のある人間ほど節操がなくて、庶民の方が節義がある人が多いんだとか。
  • 「天皇主義者」宣言について聞く――統治のための擬制と犠牲 - 内田樹の研究室

    『福音と世界』8月号に天皇制についてのインタビューが掲載された。 キリスト教系の月刊誌なので、当然天皇制については批判的である。そこにレヴィナスの時間論を連載しているわけなので、「天皇主義者」を名乗った真意はいずくにありやということでロングインタビューを受けることになった。かなり手厳しく問われたけれど、これくらい攻めてもらった方が僕の真意は伝わりやすいかもしれないと思う。 以下文 2016年8月、平成天皇はいわゆる「おことば」を発表し、高齢のため「象徴天皇」としての務めを担うことが難しくなっている旨を述べた。これを受けて誌で「レヴィナスの時間論」を連載中の内田樹氏(武道家、哲学者)は、この「おことば」が「象徴天皇」の役割をはっきりと述べた画期的なものであると高く評価し、現在の日で象徴天皇制は「統治システム」として非常によく機能していると考えるに至った、と表明した(「私が天皇主義者にな

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    kenjou 2018/07/23
  • 「愛国的リバタリアン」という怪物 - 内田樹の研究室

    金満里さんたちが出している「イマージュ」という媒体が、相模原の「やまゆり園事件」についての考察を特集した。そこに私も一文を寄稿した。あまり目に触れる機会のない媒体なので、私の書いたものだけここに再録する。 相模原の大量殺人事件のもたらした最大の衝撃は、植松聖容疑者が事前に安倍晋三首相宛てと大島理森衆院議長宛てに犯行を予告する内容の書簡を届けていたことにある。それは権力者を挑発するための犯行予告ではなく、自分の行為が政権と国会多数派には「好ましい」ものとして受け止められ、権力からの同意と保護を得られるだろうという期待をこめたものだった。逮捕後も容疑者は「権力者に守られているので、自分は死刑にはならない」という趣旨の発言をしている。 もちろん、これは容疑者の妄想に過ぎない。けれども、何の現実的根拠もない妄想ではない。彼の妄想形成を強化するような現実が今の日社会内部にはたしかに存在しているから

    kenjou
    kenjou 2017/08/03
    内田氏の記事に関する一部のブコメを見ていると、コメントしている人たちの思考の歪みが表出されているのが面白いですね。
  • 対米従属テクノクラートの哀しみ - 内田樹の研究室

    という標題の文章を「サンデー毎日」に寄稿した。発売日からだいぶ経ったから、ブログにも掲載しておく。 私たちが「問題」と呼んでいるものの多くは長期にわたる私たち自身の努力の成果である。だから、それは「問題」というよりむしろ「答え」なのである。 私見によれば、現代日の問題点の多くは、私たちが久しく「ある現実」から必死に目を背けてきた努力の成果である。私たち目を背けてきた「ある現実」とは「日アメリカの属国であり、日は主権国家ではない」という事実である。この事実を直視することを集団的に拒否したことから、今日のわが国の不具合のほとんどすべてが派生している。 日は属国だというとすぐに怒り出す人たちがいるので、同じことをそれよりは穏やかな表現に言い換えてみる。日国民は憲法制定の主体ではない。 日国憲法は1946年11月3日に公布された。公布時点では「上諭」というものが憲法の「額縁」として付

    kenjou
    kenjou 2017/06/11
    わかりやすい戦後の日本の精神史のまとめ。どうやって今後、対米自立心を養っていくかが今の日本の課題ですかね。明治憲法への回帰は一種の逃避なんでしょうね。
  • 村上春樹の系譜と構造 (内田樹の研究室)

    最初にお断りしておきますけれど、僕は村上春樹の研究者ではありません。批評家でもない。一読者です。僕の関心事はもっぱら「村上春樹の作品からいかに多くの快楽を引き出すか」にあります。ですから、僕が村上春樹の作品を解釈し、あれこれと仮説を立てるのは、そうした方が読んでいてより愉しいからです。どういうふうに解釈すると「もっと愉しくなるか」を基準に僕の仮説は立てられています。ですから、そこに学術的厳密性のようなものをあまり期待されても困ります。とはいえ、学術的厳密性がまったくない「でたらめ」ですと、それはそれで解釈のもたらす愉悦は減じる。このあたりのさじ加減が難しいです。どの程度の厳密性が読解のもたらす愉悦を最大化するか。ふつうの研究者はそんなことに頭を使いませんけれど、僕の場合は、そこが力の入れどころです。 いずれにせよ、僕が仮説を提示するのは、みなさんからの「真偽」や「正否」の判断を求めてではあ

    kenjou
    kenjou 2017/05/15
    この人の文学に関する話は面白いですね。あとレヴィナスも。
  • なぜトランプ政権のスタッフは嘘をつくのか? - 内田樹の研究室

    というタイトルの記事が眼に止まったので、訳したみた。なかなか面白い。 Why Trump's staff is lying? Bloomberg View 23 Jan 2017 by Taylor Cowen 発足したばかりのトランプ政権のもっとも際立った特徴の一つは嘘の政治的利用である。先週話題になったのは、ドナルド・トランプの報道担当官ショーン・スパイサーが「トランプは就任演説でアメリカ史上最多の聴衆を集めた」という明らかな虚偽を申し立てたことであった。この事件をてがかりに、リーダーが自分の部下に嘘を言わせるとき、彼は何をしようとしているのかについて考えてみたい。 誰の目にも明らかなことは、この指導者が大衆をミスリードしようとしており、彼の部下たちにも同じことをさせようとしているということである。多くの市民は事後にファクト・チェックなどしないので、大衆をミスリードすることは別に難しい

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    kenjou 2017/01/25
    いわゆる「馬鹿」の語源となった逸話にそっくりな話ですね。鹿を連れてきて「これは馬です」と主張し、認めなかった者を処刑したという権力者の話と。
  • 「細雪」文庫版解説 - 内田樹の研究室

    『細雪』文庫版解説 音楽雑誌ではときどき「無人島レコード」というアンケート企画を行う。「無人島に一枚だけレコードを持っていってよいと言われたら何を選ぶか」という究極の選択である(私も一度このアンケートに回答したことがある)。 無人島レコードの条件は「何百回、何千回繰り返し聴いても飽きず、つねに高い水準の悦楽をもたらすこと」である。難しい条件だ。そのときはずいぶん悩んでアンケートに回答したことを覚えている。しばらくして、アンケート結果が掲載された雑誌が届いたときに、他の回答者はどんな音源を選んだのか気になってぱらぱらと頁をめくった。すると大瀧詠一さん(この人をどういう肩書きで呼んだらいいのか、よくわからない。私にとっては私淑する「師匠」である)が選んだのはレコードではなく『レコード・リサーチ』というカタログであった。それも1962年から66年までの分でいい、と。その理由を大瀧さんはこう述べて

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    kenjou 2016/08/03
    細雪ってそういう話なんですね。一度読んでみようかな。