仏教が誕生したのは2500年前、キリスト教なら2000年前、イスラム教は1400年前のことだった。ムハンマドと聖徳太子は同時代人である。それぞれの宗教が生まれた時代といまとでは、生活スタイルのみならず、性に対する考え方も大きく変わったのに、なぜ宗教は変わることができないのか。『性(セックス)と宗教』(講談社現代新書)の著者で宗教学者の島田裕巳氏による論考。 宗教の起源を性欲に求めるフロイト 19世紀の終わりから20世紀のはじめにかけて、宗教の起源ということがさかんに問われました。そのなかで、興味深い事例となるのが、精神分析学を開拓したフロイトの説です。フロイトの学説としては「エディプス・コンプレックス」がもっとも名高いのですが、彼はそれを宗教の起源についての探究にも応用しました。 原始社会においては、強力な父親が女たちを独占していました。そこで子どもたちは一致団結し、父親を殺して女たちを解