国内最大級の巨大再開発「六本木ヒルズ」の完成から10年。森ビルは「不可能」といわれた再開発を次々と実現してきた。その道筋は1人のカリスマから組織に受け継がれつつある――。 成長の原動力は地権者との共同建築 <街は生きている> 昨年3月に亡くなった森ビル前社長の森稔は、自著『ヒルズ 挑戦する都市』(朝日新書)でそう書いている。<その呼吸を止めるほうが不自然だ。都市は、いまこの瞬間を生きる人の営みを受け止め、これからのライフスタイルや価値観を実現するものでなければならない>。 あるいは、彼は<都市は生きている>とも書いている。 都市とは時代そのものを空気のように吸い込み、人がそうであるように長い年月をかけて成長していく。だから<本当の評価は誕生した時点ではわからない。時代の波を受け止めながらどう成熟していくのか、社会経済にどんな効果をもたらしたのか、それによって何を実現したのか、長い歳月をかけ