自分の感受性くらい 茨木のり子 『自分の感受性くらい』 ぱさぱさに乾いていく心を ひとのせいにするな みずから水やりを怠っておいて 気難しくなってきたのを 友人のせいにするな しなやかさを失ったのはどちらなのか 苛立つのを 近親のせいにするな なにもかも下手だったのはわたくし 【…】 駄目なことの一切を 時代のせいにするな わずかに光る尊厳の放棄 自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ ●はじめに 高校から大学というのは実に多感な時期で、学校がどこであれ、この時期に何を学び取るかが人生を決める。赤川次郎(『三毛猫ホームズの青春ノート』岩波ブックレット、後に『本は楽しい』岩波書店所収)は次のように書いている。 一七、八歳から二二、三までの五、六年で、人の視野は決ります。どこまで世の中が見えるか、それを決めるのは学生時代なのです。 人生の目的の一つは自己実現だといえる。自己実現というのは