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2008年1月14日のブックマーク (14件)

  • ユーザビリティ

    ユーザビリティ

  • 無色 - 短編 第64期 #13

    作者: kawa 文字数: 394 起き抜けに紅色のカーテンを勢い良く開くと、白紙よりも鮮やかな雪景色が広がっていた。この地域では冬でも降雪がめったになくて、今も雪は降っていないのだけれど、確かに玄関先には雲のようなものが地表を覆っていて、僕はすっ転びそうになりながらズボンを履き替え、ボタンをちぎりそうな勢いで上着を替え、毛皮のコートを羽織り階下に行った。両親の姿はない。チャンスだ。僕は扉を蹴飛ばし外に出、家の近くの公園に走ろうとした。その時にうっかり足を滑らせて頭を打った。雲は守ってくれなかった。 目を開けると、素っ気ない白色で一面が塗られた部屋にいた。ベッドも白いし服装も白い。目の前の女性の顔も白い。 「ほんまに、信じられん子やわあ。あんな所で頭打ちよるなんて」 「気ぃ付けぇよ。そんなことばっかしよるんやったら、おちおち出掛けることも出来へん」 二人は笑い合っていた。なるほどと僕は思っ

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    kits 2008/01/14
    事態の深刻さとは別にほのぼの感。
  • 数学と生活 - 短編 第64期 #12

    作者: 宇加谷 研一郎 ウェブサイト: kenichiro_u's stories 文字数: 1000 伯父は根津駅前の吉野家を指定した。私達はカウンターで早速牛丼を注文する。 「これはどちらかといえば計量社会学かもしれねえが、ってるもので性格がきまるという統計がある」 「うん」 「この牛丼のウマさには無駄がねえ。肉がぱさついてる、べられんというのはプチブルの見解であって意外にテタンジェの辛口にあう。それはともかく、飯をかき込む衝動が大事だ」 私達は店を出て、伯父の仕事場である校舎へ向かった。その日はゼミがあるらしく、同年代の賢そうな男女数名を交えて、議論が始まった。 「おい。虚数乗法論の高次元拡張についての谷山豊をふまえてねーな。それに座標に依存しすぎだ」 私は別次元の話に興味はなかったが、急に数学の先生っぽくなった伯父や、先輩のスパイクを受けているバレー部員のような、熱心な態度が教

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    kits 2008/01/14
    宇加谷さんらしい話
  • 剥がれてしまったので - 短編 第64期 #11

    作者: わたなべ かおる ウェブサイト: なべトーク 文字数: 1000 爪が剥がれてしまったので、医者に行った。 ちょっとした不注意で、左手の親指の爪を柱に突き立てるようにひっかけてしまった。数ヶ月前に心身の疲れから、あまり事がとれず、そのときの痕跡がくっきりと爪に現れていた。ガタンと真横に一筋、この部分が作られる頃に栄養不足だったのだよと、責め立てるように爪がくぼんでいる。そこで折れるだろうな、と思っていたら、やはり折れた。気をつけているつもりでも、こういうことは、避けられない。 まだ伸びきっていなかったので、生爪が5ミリほど剥がれた。爪が剥がれると破傷風になる。それが怖くて医者へ行った。 「どうしましたか」 「爪を柱にひっかけてしまいました」 私は一応、剥がれた爪を持参した。もげた腕や脚をつなぐように、爪も元通りに戻してもらえたらと思った。 「これは、当に柱にひっかけたのですか」

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    kits 2008/01/14
    なぜに箸(医者も看護婦も)。/ 契約を交わすとどうなるのだろう。
  • 二人 - 短編 第64期 #10

    作者: fengshuang 文字数: 797 ぐぅっと飲み込んだ言葉は消化不良を起こし、それが身体に蔓延していく。 煙草を吸う人より、この身体の蝕みかたは、早いと思う。 昔はこうじゃなかった。笑顔と共にいた。 あの頃の笑顔を今は浮かべることができず、過去の、笑顔で映っている写真が別人のようで、私はそれらの写真を焼き捨てた。 ただ、一枚。たった一枚、それだけは誰も知らない箇所にしまってある。 私だって笑えたんだという記憶と共に。 環境によって人の顔はこうも変わるものなのだろうか。歳も重ねた。けれど、変わらずにいる同じ顔を見ると、打ちのめされる。 笑おうと口の端しを上げても、引き攣ってみえる。自嘲するのは簡単。ふっと浮かべる笑みはすべて自嘲だと言い切ることすらできる。 それでも。都合の良い希望を持ち続けている。どんなに落ちぶれても、毅然としたものを持ち続けていたい。蝕んでいく中でも、最後の希

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    kits 2008/01/14
    もう少し具体的な出来事に踏み込んでほしかったような。
  • The Little House - 短編 第64期 #9

    作者: 虚構倶楽部 文字数: 1000 舞台の上の螺旋階段を、彼女は軽やかに駆けあがり、ベランダの柵をつかんで両足を踏ん張る。そして観客席の三列目の中央にいる僕に、視線を向ける。天井にぶら下がる照明の光を反射して、彼女の大きな漆黒の瞳がふたつ、その暗闇をいっそう際立たせる。 「わたしは木でできた人形。鼻の低いピノキオ。いつか人間になれる、いつか幸せになれると信じている、悲しい人形」 彼女は言った。叶わぬ恋の台詞を。 リハーサルは完璧だった。しかし彼女だけはそう思わなかった。スタッフが帰り支度を始めたころに、もう一度、と言ってきた。役者がやる気を見せてくれるのは演出家にとって幸せなことだ。彼女とふたりだけで、やることにした。 バージニア・リー・バートンの「ちいさいおうち」の翻案は、いささか衒学的だが台もよく、スタッフの仕事も充実していた。 「そして、あなたはピグマリオン。あなたは、わたしに

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    kits 2008/01/14
    捨てることはないのに。
  • 関係性の科学 - 短編 第64期 #8

    作者: makieba ウェブサイト: ヰタ ピグマリオニス 文字数: 1000 目に見えないが電波は飛んでいるはずだ。 にもかかわらずチャンネルが合わないのはなぜか。 考えられる可能性としては受信機の故障である。 以前から受信機は故障していたようにも思える。 しかし確信はない。 ちゃんと動作している状態の受信機を見たことがないのだ。 あるいは、この部屋は電波の届かないところなのかもしれない。 そういえば壁の層が厚い気がする。 しかしそれも確信はない。 私はこの部屋から出たことがないのだ。 この部屋に入ったとき、ドアには≪関係性の科学≫と書かれたプレートが貼ってあったと記憶している。 だからこの部屋はきっと≪関係性の科学≫の部屋だ。 さてながら私は、≪関係性の科学≫の研究者なのか、それとも被験者なのか。 さあ、わからない……。 いずれにしても当面の問題は、早急にチャンネルを合わせなければい

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    kits 2008/01/14
    結論の無い独白
  • 拳銃の神様 - 短編 第64期 #7

    作者: 笹帽子 ウェブサイト: 笹帽子の樹 文字数: 1000 ○予選通過作品 男が僕に拳銃を向けていた。 「な、なんですか」 「拳銃の神様だ。いいから入れなさい」と男がマスク越しに言う。 マスクだけじゃない。サングラスにグレーのハンチング帽、服は背広の上にコートで黒ずくめ、危ない匂いがぷんぷんする。確認もせずにドアを開けたのを後悔しても遅い。 「え、いや、神様? 拳銃?」 ずしりと重そうな拳銃を前にして、もうほとんど腰を抜かしている僕を半ば押しのけ、男は家の中へ入った。薄汚れた畳にどっかと腰を下ろし、早くもその空間になじんでいる。正直、こんなのになじまれたのが悔しい。 「まあ君も座れ」と自称拳銃の神様は言った。 男は、とりあえず出してみたオレンジジュースを飲んだ。出しといて言うのもあれだが良い年してなっちゃんをそんなおいしそうに飲むな。 「それで、あなたは、その……」 「拳銃の神様だ」

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    kits 2008/01/14
    冒頭からすっと話に入れました。
  • 君の瞳 - 短編 第64期 #6

    第64期 #6 君の瞳 作者: 八代 翔 ウェブサイト: Official web site 文字数: 1000 (この作品は削除されました) Twitterに呟く はてなブックマークに追加 予選時の票(2) Copyright © 2008 八代 翔 / 編集: 短編

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    kits 2008/01/14
    第一話から第二章とは予想外。/ そこで第四章が来るか。
  • 仰ぐ空と花言葉 - 短編 第64期 #5

    作者: 櫻 愛美 ウェブサイト: 桃色の櫻 散る 文字数: 1000 昼下がり。 まばらに浮かぶ白い雲と澄み渡る青空を仰いでいる。古ぼけた遊具のある公園の椅子に腰を沈め、雲の流れを目で追う。 時折ヤブツバキの甘い香りが香る。……そんなはずはない。真っ赤な花びらのヤブツバキは、遠慮気味に私の背後で息を凝らしている。 ヤブツバキが花開く冬の候。私はかじかんだ掌に息を吹きかけ、まだかまだかと貴方が来るのを待っている。 一途な彼は私の愛しい人。 『ツバキの公園に来て?』 理由も聞かされないまま言われたとおり、この公園に来た。 空から目を離し、ツバキを視界に入れた。葉は青々して、赤い顔も見せている花びらやまだ蕾のものもある。古ぼた公園とは対照に、咲き誇っているように見えるが、何故かツバキは一歩引いているように見える。 私は何故だろうと顔をしかめた。 近くには川原がある。川のせせらぎに耳を傾けながらう

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    kits 2008/01/14
    甘ーい。/ ツバキ立場無いような。
  • 真夜中の待ち合わせ - 短編 第64期 #4

    作者: 柊葉一 文字数: 816 午前2時。タイムオーバだ。 加也は携帯のディスプレイに溜息を落とし、パチンとそれを閉じると、部屋の明かりを名残り惜しく消してベットに潜り込んだ。 もう2週間が経とうとしている。 すっぽりと頭まで布団をかぶった暗がりの中で、加也は指折り数えた。 もう、2週間会ってないんだな。 溜息が自分へ追い討ちをかける。いい加減自分に飽きたのかしらと、自虐的な思いに身を委ね、そんな自分がまた情けなくなった。 もともと誠実な恋じゃないのは理解している。しかしもう、そんなジレンマに苛まれることもなくなった。感覚麻痺とはこのことだろうか。 目をつむる。しつこく溜息を一つ。聞こえてしまえばいい、と思った。 そのとき枕もとの携帯が、待ち焦がれていた特別な着信音を歌いだした。飛び起きてベットに座り込み、携帯をつかみ取る。なんて素早い動作だろうと自分で関心するくらい。 「……もしもし」

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    kits 2008/01/14
    也がつくと男の名前に見える。
  • 憩いのひととき - 短編 第64期 #3

    作者: 茹でたうどん 文字数: 1000 日曜日の午後は、家の近くの喫茶店で時間を潰すのが日課だ。仕事の事みたいな面倒な事を忘れて、のんびりとした暖かいひとときを過ごすのだ。 いつもと変わらない時間に喫茶店に入ると、いつも店に入る時と同じウェイトレスが店内を歩き回っている。 手近な席に座ると、最寄のウェイトレスが歩いてきた。綺麗に掃除された店内が輝いて見える。 近くを歩いていたウェイトレスに注文を聞かれて、いつもと同じようにミルクティーを頼んだ。「かしこまりました」と言って歩き去って行くウェイトレスを見ながら、いつもと変わっていない事にささやかな安堵を感じた。 最近疲れているような気がする。日曜日に家から歩く、ほんの僅かの距離だけでも、足が重くなっていく。きっと連日連夜の残業のせいなのだろう。 ミルクティーはまだかと店の隅々まで見ていると、向こうから歩いてくるウェイトレスが視界に入った。真

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    kits 2008/01/14
    話の筋とは別にウェイトレスの描写が詳しい気がする
  • お支払いはカードで。 - 短編 第64期 #2

    作者: Draw 文字数: 998 カードで。 口癖になってしまったみたいだ。 なんて素晴らしいんだろう。 これさえあればどんなものだって買える。 所詮世の中は金。何で今まで気付かなかったんだろう。 「お支払いは?」「カードで。」 なに、後で返せばいいんだ。後でね。 仕事も辞めて遊んで暮らすことにした。 今日も起きると、予約しておいたリムジンが出迎える。 確か、ママは宝石を欲しがってたな。 このリムジンの使用料は勿論、何から何までカードで払う。 どんなものも最高級品でないとね。 それにしても、貧乏人は可哀想で馬鹿だ。 なんでカードを作らないんだろう。 それに引き換え、僕は天才だ。僕は偉いぞ。 リムジンが宝石店に着く。 もう一回行くのは面倒だから、あれもこれも全部買ってあげよう。 初老の店員が何故か頭を下げてきた。恐れ入ったのだろうか。 店員は口を開いた。 「お客様のカードは会社側で引き止め

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    kits 2008/01/14
    最後は力の勝負になるのか。
  • rocketttt - 短編 第64期 #1

    作者: 藤舟 ウェブサイト: . 文字数: 918 僕の仕事はロケット花火を分解して中の火薬を集めることだった。仲間の水城の仕事は適当な大きさの軸棒にそれを詰めることだった。 「ペンシルロケットってんだよ。」 水城は相変わらず偉そうに言った。 一号機はアルミのキャップに厚紙の尾翼を付けたささやかなV2ロケット。何事も小さい積み重ねから始めないといけないのだ、いきなり手を広げて失敗しちゃったお前の親父みたいになるからな、という水城の意見には賛成だった。今でもばかなオヤジは水城の親父と時々飲みに行って調子に乗っておごったりしてるみたいだが、しかし実のところやっぱり僕の家より水城の家の方が金がないのは変わっていなかったのだった。 感動の初打ち上げになるはずだった初号機は導火線がキャップの口にとどいた瞬間に軽く爆発した。 「成功に犠牲は付き物だろ?」 それよりも俺たちの失敗時の安全対策がうまく働い

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    kits 2008/01/14
    郷愁的な何か。/ 火薬で遊ぶのは楽しい。