分子生物学から見た進化 遺伝子重複による進化:最初の一創造、その後の百盗作 これまでの三回で注意深い読者はどうもダーウィン流の自然淘汰説だけでは分子レベルの進化は説明がつきそうにないことにお気づきだろう。第1回、第2回では主に赤血球色素のヘモグロビンを取り上げ、第3回は細胞内でタンパク合成を行うrRNAを紹介した。そのどちらもアミノ酸一次配列やヌクレオチド塩基配列の比較の話であった。生物はヘモグロビンにしてもrRNAにしてもその種特有の配列を持っているのだが、その変化も元をただせばある突然変異がまず一個体に出現し、それがなんらかの機構で種全体に広がり、種特有の変化としてやがて固定した結果(これを変異の置換という)なのだ。 この置換機構について自然淘汰万能主義者はそれが有利な変異だったからだというし、中立論者は変異は良くも悪くもなく置換は偶然の結果であるという。どちらの意見が正しいのか、実際