ダムに沈んだ村に最後まで住んでいた一人の女性の物語 異質な価値観と出会ったときの心構え 堀 由紀子 編集者・KADOKAWA 岐阜県揖斐郡にある徳山ダムは、日本最大の貯水量を誇る。その水量は6億6000万立方メートル(東京ドーム約532杯分)というから想像もつかない。このダム湖の下にはかつて、徳山村という村があり、1500人ほどの人々が生活を営んでいた。村は1987年3月に廃村となり、以後、人々は徐々に集団移転地に移っていった。最後の一人となったのが廣瀬ゆきえさんだ。 本書『ホハレ峠――ダムに沈んだ徳山村 百年の軌跡』(彩流社)は、徳山村に30年以上通い、現地の様子を撮り続ける著者の大西暢夫さんが、ゆきえさんがなぜ最後の一人になるまで住み続けたのかを丹念に追った一冊だ。ゆきえさんは、1919(大正8)年生まれ。夫の司さんと暮らしていた。司さんが亡くなってからは、文字通り一人だった。 大西さ