科挙試験をめぐる男たちのヒューマンドラマ 中国の清朝中期を代表する文学作品と言えば、「紅楼夢」と「儒林外史」です。 高校の世界史の授業で習ったかと思います。 今回取り上げたいのは呉敬梓(ごけいし)作の「儒林外史」。 紅楼夢が美少年・美少女が登場する華やかで甘美な世界であるのに対し、儒林外史に登場するのは「普通の人々」。人々が「科挙試験」をパスして立身出世を目指そうと動き回り、その悪戦苦闘の中で起こる悲喜劇を描いたヒューマンドラマです。 1. 作者・呉敬梓と儒林外史 作者の呉敬梓は安徽省の名家の生まれ。 幼い頃から聡明で、20代前半で秀才に合格するも、父の死で家が傾きはじめ、親戚を交え財産争いに突入。そんな中で呉敬梓は道楽で財産を使い果たしてしまいます。33歳で故郷から南京に移った呉敬梓は、安徽省の長官から才能を見込まれて官職に就くように求められますが、それを拒否して54歳で客死するまで生涯