「帰ればいいんだよ」。難民に認定してほしいと申請しているクルド人の青年に、入管職員が鋭くとがった言葉を突きつける。近く公開されるドキュメンタリー映画「東京クルド」の一場面だ。この青年のようなクルド人の若者たちは、人生の大半を日本で過ごし、教育を受け、なめらかに日本語を話す。帰れる場所、生きたい国は、日本なのだ。だが、難民の認定率が1%を切る「難民鎖国・日本」に安心できる居場所はない。6月20日は「世界難民の日」。日向史有監督(40)に、作品の背景を聞いた。【和田浩明/統合デジタル取材センター】 「自分の居場所でない」地で生きる葛藤 日向さんはシリアなどから日本に逃れ、難民認定を申請した人たちの生活を記録し、発表してきた。関心の根源には、マイノリティーのアジア人として小学生時代を過ごした英国での体験があった。「自分の居場所ではない」地で生きる葛藤の記憶だ。 2004年ごろには訪れたスペイン・