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ブックマーク / himaginary.hatenablog.com (52)

  • 減税と賃金の再説(少し難しい) - himaginary’s diary

    以前、法人減税がどの程度の賃上げにつながるかについてクルーグマンやマンキューやサマーズやファーマンやマリガンやデロングが議論を繰り広げていたが(cf. ここ、およびその後続記事)、クルーグマンが改めてその問題を表題の記事(原題は「Tax Cuts and Wages Redux (Slightly Wonkish)」)で論じている。 そこで彼は以下の3種類の説(および現象)を紹介している。 楽観論者の説 ケビン・ハセットやTax Foundationは以下のような説を唱えていた。 財や労働の市場は完全競争に近い。 米国は世界資市場の一部であり、その市場では税引き後の利益率は概ね均等化される。 従って、法人税率を引き下げると米国は世界から資流入を惹き付ける。資ストックの増加により資の税引き前利益率が下がり、労働を求める競争は高まる。そのため、賃金は上昇する。長期的には減税の便益はすべ

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  • 誰でもわかるケインズ主義 - himaginary’s diary

    「Keynesianism Explained」と題された15日エントリでクルーグマンが、ケインズ主義の簡単なサマリーとして以下の4項目を挙げている。 経済は時として能力よりかなり低い生産活動しか行わず、雇うべきよりもかなり少ない労働者しか雇わないことがある。その理由は十分な支出が無いためである。そうした状況は様々な原因で起こり得る。問題は対処方法である。 通常は経済を完全雇用に戻す力が働く。しかしその力の働きは遅い。不況下の経済における不干渉政策は、不必要な痛みの期間が長引くのを受け入れることを意味する。 金利引き下げのための中央銀行の貨幣創造力を利用して、「紙幣を刷る」ことによって痛みの期間を大幅に短縮し、人とカネの損失を大きく削減することが可能である場合が多い。 しかしながら、金融政策が効力を失う時もある。金利がゼロに近い時は特にそうである。その場合、一時的な赤字による財政支出は有用

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  • バーナンキ=サマーズ論争のクルーグマン裁定 - himaginary’s diary

    長期停滞を巡ってネット上でバーナンキとサマーズが論争を交わした。クルーグマンが彼なりの視点でその論争を整理しているので*1、以下にその概要をまとめてみる。 バーナンキのサマーズ批判は以下の通り: 米国が長期停滞に直面しているという最も説得的な証拠は、2001-2007年の精彩を欠いた景気回復。この時に米国は維持不可能な巨額の家計負債に支えられた大いなる住宅バブルを経験したにも関わらず、歴史的に見てそれほど印象的ではない景気拡大しか得られず、インフレもほとんど過熱しなかった。これは民需の根的な弱さを示しているように思われる。 しかし米国で生産された財やサービスへの需要が伸びなかった一つの理由は、巨額の貿易赤字にある。それは、中国やその他の新興国で巨額の外貨準備が蓄積されたことに対応している。 従って、サマーズの言う長期停滞の証拠は、実は世界的な過剰貯蓄を反映したものである。 その上でバーナ

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  • 保守派は左翼的経済政策を好む - himaginary’s diary

    イェシバ大学のAriel Malkaとトロント大学のMichael InzlichtがNYT論説でそう書いている(H/T Economist's View、石町日記さんツイート)。 Our research, which we published along with Christopher J. Soto of Colby College and Yphtach Lelkes of the University of Amsterdam, was the largest cross-national test of how a conservative personality style actually relates to cultural and economic attitudes. Analyzing responses from over 70,000 people fro

    保守派は左翼的経済政策を好む - himaginary’s diary
  • 史上最大の略奪:如何にしてナチスは欧州の金を盗んだか - himaginary’s diary

    「パリスの審判 カリフォルニア・ワインVSフランス・ワイン」の著者 ジョージ・M・テイバーが以下のを上梓し、その内容が表題のKnowledge@Wharton記事で紹介されている(原題は「History’s Biggest Robbery: How the Nazis Stole Europe’s Gold」;H/T Mostly Economics)。 Chasing Gold: The Incredible Story of How the Nazis Stole Europe's Bullion 作者: George M. Taber出版社/メーカー: Pegasus Books発売日: 2014/12/15メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (1件) を見る 以下は記事からの引用。 The centerpiece of Schacht’s economic policy

    史上最大の略奪:如何にしてナチスは欧州の金を盗んだか - himaginary’s diary
  • 資本と富の違いと21世紀の民主主義 - himaginary’s diary

    ブランコ・ミラノヴィッチが、ピケティ理論の“パズル”に関するスティグリッツの論文についてコメントし、その概要をブログで報告している。 Stiglitz points out to several very important puzzles that cannot be easily accommodated in the current neoclassical framework: broadly constant rate of return despite massive capital deepening, rising share of capital incomes even if the production function studies tend to find elasticity of substitution between capital and labor

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  • 独裁者のインナーサークル - himaginary’s diary

    というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Dictator's Inner Circle」で、著者はPatrick Francois(ブリティッシュ・コロンビア大)、Ilia Rainer(ジョージ・メイソン大)、Francesco Trebbi(ブリティッシュ・コロンビア大)。 以下はその要旨。 We posit the problem of an autocrat who has to allocate access to the executive positions in his inner circle and define the career profile of his own insiders. Statically, granting access to an executive post to a more experienced subo

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  • 突然資源国になったらどうすべきか? - himaginary’s diary

    ある国で石油資源が見つかったことをエネルギー相が財務相に知らせる、という仮想的な状況を描いたエントリがIMFブログに上がっている(H/T Mostly Economics)。著者はSanjeev GuptaとEnrique Floresで、2人がAlex Segura-Ubiergoと共に書いたIMFスタッフディスカッションノートの解説記事になっている。 記事では、資源の呪いを回避できるような堅牢な制度が確立していない国では、資源からの収入を国民に直接配ってしまえば良い、と主張するXavier Sala-i-MartinとArvind Subramanianの論文を俎上に載せている。同論文の主旨は、直接分配のメカニズムによって非効率ないし腐敗した予算制度が迂回されるほか、分配した資源からの収入が税金を通じて政府に再吸収されれば、その使い道についての政府の説明責任を求める国民の声が高まる、と

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  • 悪質な経済学批判であることの18の兆候 - himaginary’s diary

    をカナダ・ビクトリア大学のChris Auldが自ブログエントリで挙げている。以下はその18項目。 マクロ経済予測を、経済分析の主要ないし唯一の目標と見做している。 政治的な枠組みで批判する。最も一般的なのは、経済学者は市場原理主義者である、という主張。 「新古典派」という言葉をあたかも政治哲学、一連の政治対策、もしくは実際の経済を指すかのように用いる。おまけ:「新−古典派」(“neo-classical” or “Neo-classical”)と綴る。 「例の」新古典派モデル(“the” neoclassical model )という形で言及する。さもなくば、すべての経済思想がワルラス(1874)に詰まっている、と言う。 「新古典派経済学」と「主流派経済学」を同義で用いる。おまけ:「新自由主義経済学」を両者と同義で用いる。 「新自由主義」という言葉をとにかく用いる。 「企業のご主人様」に

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  • クルーグマンと日本共産党の共鳴? - himaginary’s diary

    最近、クルーグマンが労働分配率の低下について時折り書いており、それをMBK48さんが訳されている(ここ、ここ、ここ、ここ、ここ)。 そのうちの6/30エントリはクルーグマンの6/21ブログエントリを訳されたもので、さらにMBK48さんによる分かり易い経済学の解説が付け加わっている。そこで示されたクルーグマンの問題意識を小生なりに単純化して解釈すると、次のようになる。 国民所得は、分配面から以下の3項目に分解できる。 国民所得=労働所得+資所得+超過利潤 ここで超過利潤は完全競争の場合には発生しないが、不完全競争の場合は発生する。その結果、労働所得のみならず資所得も減少しているのではないか、というのがクルーグマンの第一の問題意識である。 その場合でも、超過利潤が設備投資に回って経済のパイの拡大に貢献しているならばそれほどの問題とはならないかもしれない。しかしアップルに見られるように、企業

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  • 言語だけでなく方言もまた交易に影響する - himaginary’s diary

    という主旨の論文をUDADISIが紹介している。論文のタイトルは「Same Same But Different: Dialects and Trade」で、著者はAlfred Lameli(ドイツ言語地理研究所(Research Centre Deutscher Sprachatlas))、Volker Nitsch(ダルムシュタット工科大学)、Jens Südekum(デュースブルク=エッセン大学メルカトル経営大学院(MSM))、Nikolaus Wolf(フンボルト大学ベルリン)。以下はその要旨。 Language is a strong and robust determinant of international trade patterns: Countries sharing a common language trade significantly more with ea

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  • サッチャーの失敗した成功 - himaginary’s diary

    クリス・ディローが、意図しない形で成功を収めたサッチャーの功績として以下の3つを挙げている。 1980-81年の景気後退による労組の弱体化 この時に政策として採用されたマネタリズムは別に英国経済への体罰を意図したものではなく、インフレはもっとスムーズに低下するはずだった。しかし豈図らんや、失業とインフレのトレードオフはマネタリストの予想に比べ峻烈で、失業者は300万人に達した。 ただ、その結果として労組の交渉力は弱まった。そのため、利益率や予想利益やアニマル・スピリットは高まり、1980年代の投資を促進した。 確かにサッチャーは労組の弱体化を約束していたが、彼女は失業ではなく法の支配を通してそれを実施するつもりだった。 80年代初頭の信用統制の緩和 彼女が経済の自由化の一環として考えていたその緩和は、予想を超えた大きな経済的インパクトをもたらした。即ち、消費者主導の社会と経済を生み出した。

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  • 競争的労働市場での最適な最低賃金政策 - himaginary’s diary

    オバマ大統領が一般教書演説で最低賃金を7.25ドルから9ドルに引き上げるよう提案したことを受けて、エコノブロゴスフィアが最低賃金を巡って俄かに騒がしくなった。そんな中、EITCと最低賃金は代替的手段ではなく補完的手段である、と述べたマイク・コンツァルのエントリに、クルーグマンが「this is news to me」としてリンクした*1。 コンツァルは、EITCと最低賃金の「相補性原理」のソースとして、自らがインタビュアーとなってまとめた労働経済学者Arindrajit Dubeのインタビュー記事を挙げているが、彼がリンクしたジャレッド・バーンスタインも同様のことを述べている。コンツァルはさらに、こうした見解の理論的裏付けとして、David LeeとEmmanuel Saezの論文「Optimal Minimum Wage Policy in Competitive Labor Marke

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  • 組織犯罪の経済的コスト:南イタリアにおける実証結果 - himaginary’s diary

    UDADISIの2012年経済学論文ランキングから今日は(順番に従って)第5位の論文を紹介してみる(論文のタイトルは「The Economic Costs of Organized Crime: Evidence from Southern Italy」で、著者はボッコーニ大学のPaolo Pinotti)。 以下はその要旨。 I examine the post-war economic development of two regions in southern Italy exposed to mafia activity after the 1970s and apply synthetic control methods to estimate their counterfactual economic performance in the absence of organize

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  • なぜ右派はケインズ経済学を嫌うのか? - himaginary’s diary

    についてChris Dillowが考察している。 彼はまず、来は政治的立場とケインズ経済学に対する好き嫌いには関連は無いはず、として、その理由を4つ挙げている: (測定が困難な)財政乗数の大きさという問題は技術的な話であり、政治的見解の話ではない。乗数が0.5ではなく1.5だった、というのは、貴兄が左派か右派かには無関係な話。 大きな政府を支持せずにケインズ経済学を支持することは可能。それはケインズ自身の立場だった。Mark Thomaが述べたように、「政府の規模とケインズ的な安定化政策の間に必然的な関連は存在しない。」 短期の階級的な利己主義のために英国の保守党がケインズ経済学に反対している、というのも疑わしい。財政拡張策は雇用だけではなく利益にとっても追い風となる。もし拡張策が金利の上昇をもたらすならば、保守党の支持層の大きな一角を占める引退者層にとっても良い話。 50〜60年代には

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  • 米国の高校生から見た日銀の不作為 - himaginary’s diary

    来年*1プリンストンに進学予定というフィリップス・エクセター・アカデミーの高校生経済ブロガーのEvan Soltasが、スタンレー・フィッシャー率いるイスラエル中銀は暗黙裡に名目GDP目標を追求している、と書き、WSJブログに取り上げられた(Mostly Economics経由)。 一方、その一つ前のエントリで彼は、日銀の不作為を槍玉に挙げている: Here I contend that the Bank of Japan hasn't even tried. While the Diet, Japan's parliament, has spent trillions of yen seeking to induce growth, the Bank of Japan has silenced nominal growth. Consumer prices have not change

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  • インターネットが技術革新を阻害している - himaginary’s diary

    SF作家のニール・スティーヴンスンがMITでの講演でそう述べたという。ジャスティン・フォックスの報告によると: A hundred years from now, he said, we might look back on the late 20th and early 21st century and say, "It was an actively creative society. Then the Internet happened and everything got put on hold for a generation." (拙訳) 今から百年後、20世紀末から21世紀初めを振り返って人々は次のように言うだろう、と彼は述べた。「それは活力ある創造的な社会だった。そこにインターネットが登場して、一世代もの間すべてが停滞してしまった」、と。 フォックスがリンクしたMIT Te

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  • 共産主義体制からの移行について私が学んだ7つのこと - himaginary’s diary

    お前が言うか、という気もするが、アンドレイ・シュライファーが表題の記事をvoxeuに書いている。マンキューやEconomist's Viewがリンクしているほか、Mostly Economicsが各段落の最後の文章を抜き出すという形で簡潔にその内容をまとめている。 以下はその7項目の概略。 改革者は成長軌道への早期の復帰を当てにしてはいけない。経済の移行というものは時間が掛かる。 移行に信を置け。資主義体制は当にうまくいく。 改革者はポピュリストたちの反乱を恐れる必要は無い(実際にそうした反乱は皆無だった)。その代わり、新しく台頭してきたエリートたちが政治を奪取してしまうことを恐れよ。 当時、制度をまず整備せよとか、政府が企業の民営化の準備をせよとか、バウチャーと投信のどちらの民営化方式が良いとか、ケースバイケースの民営化が良いとか、様々な理論が改革を巡って取り沙汰されたが、今にしてみ

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  • 結婚は金持ちのもの - himaginary’s diary

    と題した記事がEconomixに上がっている(Economist's View経由;原題は「Marriage Is for Rich People」)。内容はこちらのブルッキングス研究所の報告の紹介*1。 その報告内容は以下の図に集約される*2。 1970年代には、所得階層に関係無く中年男性は結婚していた。その後、既婚比率は全般に下がったが、中低所得者層でその低下幅が大きかった。上図は、30-50歳の男性について、所得階層別に、1970年から2011年に掛けての所得の変化と既婚比率の変化を描画したものだが、両者の相関が読み取れる。即ち、経済的な逆風に曝された層で、既婚比率の低下も大きかった。 具体的には、上位10%においては実質所得は増加した半面、既婚比率の低下幅は95%から83%に留まった。それに対し、中位値の所得はおよそ28%低下し、既婚比率は91%から64%まで下がった。一方、下位2

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  • いかにしてFRBはトルーマン大統領を打ち負かして独立性を手に入れたか - himaginary’s diary

    という記事をFTブログでGavyn Daviesが書いている(Economist's View経由;原題は「How the Fed defeated President Truman to win its independence」)。 以下はその概要。 第二次大戦中、米国人は愛国者の義務という名の下に大量の国債購入を促された。その彼らに損失を与えるのはまずいということで、FRBは短期国債について0.375%、長期国債について2.5%の上限を維持することを約束した。これにより戦費調達のコストが抑えられた。そのためにFRBがマネタイズを行わねばならないことは、状況に鑑みて副次的な問題とされた。 戦後、価格統制が外されるとインフレ率が上昇し、1947-1948年には年率が平均13%に達した。そのためFRBは短期国債への上限を外し、短期金利は1950年に1.125%まで上昇した。しかし財務省は長

    いかにしてFRBはトルーマン大統領を打ち負かして独立性を手に入れたか - himaginary’s diary