“それまでキャーキャーと呼び声でコミュニケートしていた人類が、系統だった言葉を生み出し話すようになったのは「五万年」ほど前のことらしい。その人類が音声を文字化することで、情報伝達の時間的、空間的制約をのりこえる技術を見出したのは「五〇〇〇年」前のシュメール文明の時代である。さらにその文字を機械的に複製することで、情報の大量伝達を可能にしたのが「五〇〇年」前の活版印刷術発明であった。” 『パピルスが伝えた文明 ギリシア・ローマの本屋たち』(出版ニュース社2002)で、ことばによるコミュニケーションの変遷を、箕輪成男はこう概括する(P81)。本という形態(メディア)の成立、そして本屋という生業の成立もまたその変遷と相似形をなし、ギリシア・ローマの時代に「本屋」が現れたのは、まず劇場であり朗読会場であったことを本書は教えている。 “先ず新しい作品は、最初は友人仲間に、そして後には一般聴衆に向って