一年十二か月の行事や風物を描く「月次絵」は、平安時代以来のやまと絵における主要な画題でした。この伝統に沿って描かれた諸作例には、今も受け継がれる日本の伝統的な遊びや楽しみごとが数多く見出せます。それぞれの画面には、巡りくる春夏秋冬の移り変わりを愛おしむかのように、羽子板や雪遊び、花見や月見など、季節の遊びや宴に興じる人々が表情豊かに描かれており、子どもたちの無邪気な歓声や、にぎやかな祭礼の囃子の音色が聞こえてくるようです。 我が国の伝統的な「遊び」には、琴や琵琶を奏でる管弦の遊びや、左右に分かれて競う貝合、鶯の鳴き声の優劣を比べる鶯合などの鳴合、2種以上の香を薫き合せて香の異同を判別し、その香の名を言いあてる組香などが知られます。さらには蹴鞠や小弓、打毬に至るまで、平安時代の貴族が楽しんだ雅な遊びを起源として発展をみせた遊戯や楽しみごとが少なくありません。『源氏物語』を例に挙げれば、登場人