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ブックマーク / honz.jp (20)

  • 『潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景』宮城の海に潜り続けた男の濃密な半生を描く評伝 - HONZ

    その人にしか語り得ない境地というものがある。人生は十人十色だが、特殊な技能が必要で、なおかつ特異な環境に我が身を起き続けた人の軌跡はとりわけ面白い。 書は、若くして潜水の才能を発揮し、宮城の海から無数の遺体を引き上げてきた男・吉田浩文の激動の半生を綴る克明の記録である。 初めての遺体引き上げは1996年。死者は交番勤務の男性警察官で、車ごと海中に突っ込む入水自殺であった。 岸壁が関係者でごった返すなか海に潜り、遺体の青白い顔に鳥肌が立ったものの、車に手早くワイヤーをくくりつけ、的確にクレーン引き上げを指示した。祖父の代から潜水業を営み、高校は日で唯一の潜水土木を専門で教える岩手県種市高等学校に進学。29歳の若さとはいえ潜水士としては10年以上のキャリアを持つ吉田には容易い仕事だった。 機動隊や海上保安部のダイバー隊員をはるかに上回る高い技術を買われ、警察から次々と遺体引き上げ案件が舞い

    『潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景』宮城の海に潜り続けた男の濃密な半生を描く評伝 - HONZ
  • 『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって - HONZ

    にブックカバーはつけない。これを長年の流儀としてきた。 通勤電車でを開くと、目の前に座る人の視線がきまって表紙に注がれる。との出会いは何がきっかけになるかわからない。中には電車でたまたま見かけて興味を持ち、を買う人だっているかもしれない。出版文化への貢献のためなら、喜んで歩く広告塔になろう。そう考えて、どんなであろうと(たとえ『性豪』や『鍵開けマニュアル』といっただろうと)顔色ひとつ変えず公衆の面前でを開いてきた。それがハードボイルドな俺の流儀だった。 だが、書を手にした時、初めてその覚悟が揺らいだ。 いや、覚悟が揺らぐなんてちょっとカッコつけ過ぎである。正直に言おう。気後れしてしまったのだ。臆病な犬のように尻尾を股の間に挟んで後ずさりしてしまったのだ。カバンに手を突っ込んだまま固まっている俺を、目の前の女が不安そうに見上げた。銃を持っているとでも思われたのかもしれない。怯

    『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって - HONZ
  • 『国道16号線 「日本」を創った道』 - HONZ

    私が住む東京都町田市の小田急町田駅の東口の広場には「絹の道」という石碑がある。それをゼミ生に見せてからJR横浜線の下り線に乗り、八王子に向かう。その車中で、なぜ八王子と町田を結ぶこの街道が絹の道と呼ばれるか、学生たちに説明する。 このあたりの多摩丘陵の地形地質が桑畑に向いていて、それが地域の養蚕業を盛んにしたこと。そうして絹製品の産業基盤がこのあたりにあったところに、幕末期に盛んになった生糸輸出で、山梨や長野、群馬の生糸がいったん八王子に集まり、そこから輸出港横浜まで運搬されるルートができたこと。その流通加工拠点であった八王子には富が蓄積されたし、横浜までは生糸を馬の背に乗せて運ぶにも一日では歩ききれないので、行商人たちがその中間地点の町田で一泊してお金を落としたこと。横浜で生糸を売り捌いて懐が暖まった行商人たちが、おそらく帰路についた一泊目の町田で羽根を伸ばしたので町田には町の規模の割り

    『国道16号線 「日本」を創った道』 - HONZ
  • 『KGBの男 冷戦史上最大の二重スパイ』ソ連のエリートがMI6に、歴史を動かした二重スパイ - HONZ

    スパイ小説といえば007シリーズの作者イアン・フレミングや、ジョン・ル・カレといった英国の作家の名が頭に浮かぶ。「やはり、スパイ小説は英国に限る」と通ぶってみたくなるが、実は、ノンフィクションの世界にも同じようにスパイ分野の第一人者といえる作家がいる。 その一人が、書の著者ベン・マッキンタイアーだ。代表作には、第2次世界大戦中の対ナチス諜報を描く『ナチが愛した二重スパイ』『ナチを欺いた死体』『英国二重スパイ・システム』の3部作がある。どのも、歴史の裏側で行われた諜報戦の熾烈さと独創性に驚かされる。 戦後の冷戦時代を扱った『キム・フィルビー』も見事だ。その名が表題にもなっているキム・フィルビーは、英国で活動し、「ケンブリッジ5」と呼ばれたスパイの一人。MI6の略称で知られる英国の対外諜報機関の諜報員を務めた貴族階級出身の優秀な人物で、MI6の長官になるのではと目されてもいた。しかし、彼は

    『KGBの男 冷戦史上最大の二重スパイ』ソ連のエリートがMI6に、歴史を動かした二重スパイ - HONZ
    kutakutatriangle
    kutakutatriangle 2020/09/05
    面白そう
  • 裸で出っ歯の珍奇なネズミが、人類を救う? 『ハダカデバネズミのひみつ』 - HONZ

    2003年1月、ワシントンD.C.――スミソニアン国立動物園のほの暗い展示室で、薄桃色の毛のない小動物がうごめいている。「何かの赤ちゃんかな?」展示ケースに近寄った私は、思わず息をのんだ。 な、な、なに?? この動物、なに??? それが、ハダカデバネズミと私との衝撃的な出会いだった。ハダカデバネズミ、漢字で書くと、裸・出歯・鼠。名は体を表す。裸で、出っ歯の、鼠である。 動物好きではなくとも、名前くらいは聞いたことがある方も多いかもしれない。今やハダカデバネズミ(以下、デバ)は、変わった生き物を特集したテレビ番組や書籍の常連となっているし、国立科学博物館の大哺乳類展2のポスターではあまたの人気大型哺乳類たちを引き連れて先頭を歩く姿が描かれ、グッズもたくさん販売される、珍獣界のスターなのだ。 書は、その、裸・出歯・鼠を、からだのつくりから生態や研究のあゆみなど、豊富な写真やイラストとともに、

    裸で出っ歯の珍奇なネズミが、人類を救う? 『ハダカデバネズミのひみつ』 - HONZ
    kutakutatriangle
    kutakutatriangle 2020/08/26
    ハダカデバネズミを見ると『新世界より』を思い出してしまう
  • 『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』世界はくだらない仕事にあふれてる - HONZ

    待ちに待った邦訳がようやく出た。 デヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』である。 「ブルシット・ジョブ」とは、「クソどうでもいい仕事」のことだ。 もう少し丁寧に説明すると、「なんのためにあるのかわからない、なくなっても誰も困らない仕事」のことである。 近年、私たちの身の回りでブルシット・ジョブが増えている。 そして、確実にこの手の仕事は、働く人々の心身を蝕んでいる。 多くの人がこのことにうっすら気づいていたようで、2013年に著者があるウェブマガジンで「ブルシット・ジョブ現象について」という小論を発表したところ、国際的な反響を呼んだ。書はこの小論をベースに、その後の調査や考察を加えて一冊にまとめたものだ。コロナ禍でエッセンシャル・ワーカーに注目が集まる中、時宜にかなった出版といえる。まさにいま読むべき旬の一冊だ。 著者のデヴィッド・グレーバーは、イギリスの名門大学、ロンドンスクー

    『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』世界はくだらない仕事にあふれてる - HONZ
  • 『本を売る技術』本屋における暗黙知がこの1冊に! - HONZ

    書店員の仕事にはマニュアルがなく、口伝や仕事を盗んで覚えるしかないと言われてきた。そんな中『を売る技術』というが売っていたので買ってみたところ、書には自分が書店員になったときに口伝で教わったことや、誰からも教わることなく、働いていた間にトライ&エラーを繰り返して、最適解だと思ってやっていた技術が書かれていた。書を読み終えたとき、書店員になったときに、このがあれば、あんなに苦労しなくても済んだのに!という思いが強く残った。 書店を辞めてから5年近くが経ち、だんだん書店員時代の記憶もうすれつつある。自分が書店員時代に見聞きした、書店における暗黙知のようなものが、書には論理的にまとめられていた。ここまで書店員の仕事を論理的に書いてあるはいままで見たことがない。とりあえず全書店員は書を教科書のように読んだらいいと思う。加えて、10年間書店員として働いていた際、自分が意識していたこと

    『本を売る技術』本屋における暗黙知がこの1冊に! - HONZ
  • 『人口減少社会のデザイン』「人口減少社会」に直面する日本に残された選択肢とは - HONZ

    厚生労働省は12月24日、2019年の人口動態統計の年間推計を発表し、それが大きなニュースになっている。2019年の日人の国内出生数は、最少だった2018年の91万8400人を下回り、前年比5.92%減の86万4千人となり、1899年の統計開始以来初めて90万人を下回った。出生数が死亡数を下回る人口の自然減も51万2千人と初めて50万人を超えて、2017年4月の国立社会保障・人口問題研究所の将来推計に比べると、人口減少ペースは2年も早まっている。 未来予測の中で最も確度が高いのが人口予測であるというのは、未来学者(フューチャリスト)のピーター・ドラッカーが以前から指摘していたことであり、人口の大幅な減少が今さら話題になるというのもおかしな話ではある。これだけ長期にわたる経済停滞が続き、社会がこれだけ若者と女性を痛めつければ、その結果がどうなるかは誰でも分かりそうなものだが、分かっていても

    『人口減少社会のデザイン』「人口減少社会」に直面する日本に残された選択肢とは - HONZ
  • 『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ

    具体的な数字やデータを示してもダメ。明晰な論理で説いてもムダ。そんなとき、あなたはきっとこう思ってしまうのではないか。「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」。 実際問題、日々の生活でそんな思いを抱いてしまう場面は少なくないだろう。失敗例がすでにいくつもあるのに、それでもまだ無理筋を通そうとする社内のプレゼンター。子育てのあり方をめぐって、何を言っても聞く耳を持ってくれないパートナーなど。また不思議なことに、たとえ高学歴の人であっても、「事実に説得されない」という点ではどうやらほかの人と変わらないようだ。 さて書は、冒頭の問いを切り口としながら、人が他人に対して及ぼす「影響力」について考えようとするものである。心理学と神経科学の知見を織り交ぜつつ、著者は早々に厳しい診断を下す。 多くの人が「こうすれば他人の考えや行動を変えることができる」と信じている方法が、実は間違っていた…。 数字や統

    『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ
  • 『ネオナチの少女』ドイツに根づくナチズムという悪夢 - HONZ

    書の題名は『ネオナチの少女』となっているが、著者のハイディ・ベネケンシュタインは自らを「ネオナチ」とは定義していない。「ネオナチの人々とは、思想も生い立ちもまったく違う」と言い切る。彼女はかつての自分を「ナチそのもの」だと定義する。 現代の若い女性が「ナチ」を名乗るのは少し奇異に感じるが、書を読み進めるとすぐに合点がいく。 彼女の祖母はヒトラーユーゲントの女子部門であるドイツ少女団の出身で現在もナチ信奉者。父は公務員で自信に満ちあふれカリスマ性を持つ男だが、やはりナチの信奉者だ。著者は幼少時よりナチズムの教育を受けて育った。 その徹底ぶりはすさまじく、敵性語として英語の使用が禁止されていたほどだ。さらに幼少の頃から、ヒトラーユーゲントの正統な後継団体であるドイツ愛国青年団で、準軍事教育や思想教育を叩き込まれた。 ドイツ愛国青年団のキャンプに参加する子弟のほとんどが医者や弁護士など中流階

    『ネオナチの少女』ドイツに根づくナチズムという悪夢 - HONZ
  • あなたはなぜ特定の色を好むのか?──『好き嫌い―行動科学最大の謎―』 - HONZ

    あなたは何色が好きですか? と聞くと大抵の人はペラペラとこんな色が好きですと答えてみせる(僕は灰色だ、地味だから)。初対面同士の飲み会ならなんか嫌いなものorべたいものでもあります? と聞くものだし、映画小説など、作品を鑑賞する際にも、好みは密接に関わってくる。巨大人型ロボット物は嫌い、という人もいれば巨大人型ロボット物ならなんでも大好き! という人もいるものだ。 その違いはなぜ発生しているのだろうか? べ物に関してはアレルギーなどがあるだろうが、そうでない場合は何が関係しているのか? 育ってきた環境の違いか、進化論的に脳に組み込まれているのか? 日々の選択は現在、未来の嗜好にどのような影響を与えていくのだろうか。ひょっとしたら、好き嫌いは完全にただの思いこみだったりするのかもしれない。書『好き嫌い―行動科学最大の謎―』はそうした好き嫌いに関連した行動科学についての一冊である。 た

    あなたはなぜ特定の色を好むのか?──『好き嫌い―行動科学最大の謎―』 - HONZ
  • 『性表現規制の文化史』えっちがいけないことなのは何故か - HONZ

    書、表紙が素敵なのだ。 裸の成人女性からうまい具合に乳首を隠したイラスト、線画の描写ゆえ生々しさはなく90年代に流行ったオシャレ系マンガの表紙のようである。 とは言えハダカはハダカ、サラリーマンばかりの通勤電車で読むのは平気だった私もさすがに目の前に小学生男子が立っている中では書の続きを読むのをためらった。 こんな風に感じるのは何も私だけではないだろう。そもそもたとえ乳首が隠されていたとしても裸の成人女性が描かれた表紙を人前で出すこと自体やりたくないという人も多いはずだ。(うん、屋さんでカバーかけて貰えるのってとっても大事かも)。 この「通勤電車ならいいや」と「でも小学生男子には刺激が…」の線引きをしている私の気持ちは一体どこから生じているのだろうか。 えっちなのは、いけません! 我々(少なくとも私は)はそう刷り込まれている。だから、公共の場でえっちなイラストの表紙のを出すのがため

    『性表現規制の文化史』えっちがいけないことなのは何故か - HONZ
  • 『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』 進化認知学、そして「唯一無二の人間」という見方からの脱却 - HONZ

    「動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか」。ずいぶん挑戦的な問いかけであるが、書の内容もそれに負けず劣らず挑戦的である。 フランス・ドゥ・ヴァールは、ベストセラー『チンパンジーの政治学』といった著書もある、世界的に著名な霊長類学者である。そんな彼が書で試みていることはおもにふたつある。ひとつは、彼の提唱する「進化認知学」というアプローチを明らかにすること。そしてもうひとつは、「唯一無二の人間」という見方(ないし偏見)を克服することだ。 第一の点について、象徴的なエピソードから始めよう。テナガザルは樹上性の小型類人猿で、ヒトや大型類人猿とも近縁な存在である。だがそんなテナガザルが、かつて行われた認知テストで意外なほど成績がわるかった。そのテストとは、棒を拾い上げてべ物を引き寄せるという一見単純なものである。では、そんなテストでさえうまくパスできないのだから、テナガザルは「愚か」だというこ

    『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』 進化認知学、そして「唯一無二の人間」という見方からの脱却 - HONZ
  • 『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』 ドリームのないアメリカ - HONZ

    2016年6月に出版された原書はアメリカでベストセラーとなり、世界中で高い評価を受けた。英エコノミストは「2016年に出版されたの中で、アメリカを知るために最も重要な一冊」と評している。1984年生まれの若き白人のアメリカ人である著者J.D.ヴァンス自身が述べるように、彼はイェール大学ロースクールを卒業し経済的成功を収めてはいるものの、「人生で何か偉業成し遂げたわけではない」。そんなヴァンスの人生を綴った書が大きな話題を呼んだのは、彼の故郷に暮らすアメリカの白人たちの姿がトランプ支持者のそれとピタリと重なったから。トランプ現象を支える人々の実像を追い求めて、多くの人がこのを手に取ったのだ。アメリカの繁栄から取り残された白人たちの現実は、多くのアメリカ人たちにとっても、これまで知ることのなかった驚くべきものだった。 ケンタッキー州北東部出身であるヴァンスの家族の祖先は、アイルランド島北

    『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』 ドリームのないアメリカ - HONZ
  • 連載再開発表『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博も一目置く鬼才、岡本倫のススメ | マンガ新聞

    中学生の頃、過労で肺炎になり入院してしまいました。 その時の主治医の先生が無愛想な強面の男性で、正直言って苦手でした。 しかし、ある日のこと。 病室でも、多分に漏れず多くの時間を漫画を読むことに費やしていた私。何回読んだか判らない『HUNTER×HUNTER』を読んでいた時、その先生がやって来て 「それ、面白いよね!」 と普段見せない笑顔で話し掛けてくれました。 その時私は「いい人だなあ」と思ってしまったのです。 ……我ながら何というチョロさでしょう! ともあれヒソカが好きだというその先生と、退院した後も通院時にハンタートークで盛り上がったものです。 そんな時期もありつつ、物心付いた頃からジャンプっ子でもあった私にとって『HUNTER×HUNTER』は連載開始時からずっと追い続けている愛着のある作品。今までで最長となる二年超の休載を経ての今回の連載再開の一報、当に嬉しい物でした。 よく巷

    連載再開発表『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博も一目置く鬼才、岡本倫のススメ | マンガ新聞
    kutakutatriangle
    kutakutatriangle 2014/04/28
    皇帝=アナルショップ先輩というキャラを生み出したという事実一つだけで鬼才と呼ぶに相応しい才能の持ち主だと個人的に思っている。
  • 『ツイッター創業物語』-編集者の自腹ワンコイン広告 - HONZ

    つい先日IPOも果たしてビジネス的にもそこそこ好調っぽいツイッター。 その始まりは、ほとんど失敗に終わって破綻しかけていた「オデオ」というITベンチャー企業でした。そこで、社員をクビにしまくったあと、残った人たちで考えたプロジェクトが「ツイッター」でした。 書は、いまや3億ユーザが使う世界的ツールになった「ツイッター」の創業秘話を追ったものです。 編集し終わっての率直な感想は―― 「フェイスブックだけじゃなくて、ツイッターの社内でもこんなにもドロドロな権力争いと裏切りが起きていたのか!?」 たんなる成功物語ではなく、「友情」と「嫉妬」に揺れ動き、「一人の女性を奪い合う」若者たちの姿はまるで青春ドラマを見ているかのようにハラハラ、ドキドキ、そして時にムカムカします。アメリカテレビドラマ化が決定したのも納得。ストーリーとしておもしろいです。いまや世界中で使われているサービスも、当に「普通

    『ツイッター創業物語』-編集者の自腹ワンコイン広告 - HONZ
  • 『代替医療解剖』文庫版訳者あとがき by 青木薫 - HONZ

    稿は、2013年8月に文庫化された『代替医療解剖』の訳者あとがきです。2010年1月に刊行された単行『代替医療のトリック』の翻訳者あとがきはこちらから(※編集部) この文庫版のための訳者あとがきでは、書の単行が刊行されてからこれまでに起こった代替医療関係の出来事のうち、とくに興味深いと思われるものを2つほど取り上げてご紹介したい。 まず1つ目は、書の著者の1人であるサイモン・シンが、英国カイロプラクティック協会に名誉毀損で訴えられた一件である。2008年、書の原書がイギリスで刊行されるのに合わせ、シンは『ガーディアン』紙のウェブ版のコラムで、子どもの腹痛や喘息などを治療できるとして、子どもに施術しているカイロプラクターがいると述べた。 英国カイロプラクティック協会はそれに対し、シンの書き振りは、まるで協会の指導部がそれと知りつつインチキ療法を許しているかのように読め、事実上、協

    『代替医療解剖』文庫版訳者あとがき by 青木薫 - HONZ
  • 『血盟団事件』 - 交わるはずのなかった二つの格差 - HONZ

    アルバイト店員が内輪向けのネタ画像をアップして炎上するなどの騒ぎが相次いでいる。この問題における一つの論点となっているのが、学歴の格差というものだ。「低学歴の世界」というセンセーショナルなフレーズとともに、多くの言葉が交わされているが、一昔前によく見かけた、都市と地方の格差という議論にもよく似た印象を受ける。 格差、就職難、ワーキングプア、社会からの孤立。これらの問題のルーツとなるようなものを辿っていくと、昭和初期に起きた一つの奇妙な事件に行き当たる。それが書で取り上げられている「血盟団事件」というものだ。 この事件は、日蓮主義者・井上日召に感化された若者たちが引き起こした連続テロ事件のことを指す。殺されたのは、元・大蔵大臣の井上準之助と三井財閥総帥の団琢磨。暗殺した小沼正、菱沼五郎の両者は、共に茨城県大洗周辺出身の幼馴染みの青年集団であり、日蓮宗の信仰を共にする仲間でもあった。 ※法廷

    『血盟団事件』 - 交わるはずのなかった二つの格差 - HONZ
  • 『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』締め切りを守れないあなたへ - HONZ

    「9」日は眠れない。9日、19日、29日の夜、私はビール片手にうなっている。HONZのレビューを翌朝までに仕上げなければいけないからである。HONZの熱心な読者ならばご存じかもしれないが、HONZのレビューは輪番制。10日、20日、30日とゼロの付く日が私の当番日であるため、前日の夜ともなればオリンピックどころではないのである。 だが、考えてみれば、私の当番日は何ヶ月も前から自明なのである。「新刊の書評」というHONZの制約を差し引いても数週間先を見越してのスケジュール調整は可能なはずだ。それなのに、前日の夜、というよりも当日の未明になるまでレビューの執筆に着手しないのは我ながら何なのだろうか。なぜ、五輪のなでしこJAPANの決勝戦をまともに見れずに書評を書くハメになったのか。いきなり先制されたではないか。マンションの隣の住人がうるさくてたまらないではないか。ぎりぎりまで手をつけないなんて

    『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』締め切りを守れないあなたへ - HONZ
  • 『猟奇博物館へようこそ 西洋近代知の暗部をめぐる旅』 新刊ちょい読み - HONZ

    猟奇的という文脈のもとに、古今東西の異貌のオブジェを博物館さながらに紹介している一冊。キュレーションのお手のような構成だ。 書には解剖学ヴィーナス、デカルトの頭蓋骨、腐敗屍体像にカタコンベ、奇形標などのグロテスクな写真がふんだんに登場する。それでいて上品さが損なわれていないのは、対象人物や、その思想へのリスペクトを欠いていない著者の語り口によるものであろう。 例えば哲学者デカルトは、紆余曲折を経て頭蓋骨と身体が別々の場所に葬られている。この事実を紹介した後の、著者のコメントが憎い。 それにしても、心身二元論の標榜者にふさわしく、デカルトは今日もなお、形而上的な頭蓋と形而下的な四肢の骨とを別々の場所に眠らせているのだねぇ。 また、功利主義思想家のジェレミー・ベンサムも負けてはいない。一望監視装置「パノプティコン」の考案者にふさわしく、自身の姿をロンドン大学にて衆人環視の中にさらし続けて

    『猟奇博物館へようこそ 西洋近代知の暗部をめぐる旅』 新刊ちょい読み - HONZ
    kutakutatriangle
    kutakutatriangle 2011/12/29
    面白そうな本だなと思ったら、筆者、大学で言語学教わった時の先生だし!
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