ブックマーク / blog.goo.ne.jp/keisai-dousureba (6)

  • 平成金融史の背景と教訓 - 経済を良くするって、どうすれば

    西野智彦さんのは、すべて読んでいて、話の筋は承知しているはずなのに、『平成金融史』(中公新書)では、臨場感ある展開に引き込まれ、読む手が止まらなかった。金融危機の当時は、目くるめく出来事の中で、どんな事態になっているのか、正直、分かっていたとは言えず、後にして思えばということばかりである。そして、改めて西野さんの新著を読んで思うのは、繰り返えされることが起こっていたに過ぎないということである。 ……… 平成の金融にとって最大の課題は、バブル崩壊後にできた不良債権をいかに処理するかだった。ただし、それは、会計的には自明でも、マクロ的にどんな意味を持つかは別である。なぜなら、融資で買った土地が半値に落ちて不良債権になった側がいる一方、土地を売って濡れ手でアワの利益を現金で確定させた側もあるからだ。不良債権の処理は、これに充てる銀行の資産を減らすが、地主の資産はバブル前より増えているので、いわ

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  • 底辺への競争をもたらしたもの - 経済を良くするって、どうすれば

    山田昌弘先生のは、いつも興味深くて、『パラサイト・シングルの時代』以来、長く読み続けているのだけれど、団塊ジュニア、俗にロスジェネ世代の悲惨な運命を見るようで、だんだんに辛くなってきたよ。新著の『底辺への競争』は、名目ゼロ成長の20年間に、満足に就職も結婚もできなかった世代が寄る辺なき老後を迎えるという物語だ。山田先生は社会学者で、エコノミストではないので、今回は、なぜこうなったかと、どうすべきかを補ってみたい。 ……… 端的に言えば、日は、1997年から摘芽型の緊縮財政を始めたからである。これは、成長より財政再建を優先し、景気が上向いたところで緊縮を始め、格的な成長に至らせない政策である。そのため、雇用が引き締まらず、賃金上昇は鈍く、消費も停滞して、デフレが続くことになる。残念ながら、それでは設備投資も出ず、成長もしないから、財政再建もできずに、緊縮は半永久的に続く。裏返せば、雇用

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  • 内需不振? だって緊縮してるもん - 経済を良くするって、どうすれば

    シムズ理論を巡り、「ちょうど良い放漫財政なんてできるのか」といった議論で賑わっているが、実際、日が足元で放漫をしているのか、緊縮をしているのかについては、まったく、お留守だ。3/18公表の日銀・資金循環によれば、バブル期以来の財政再建を達成した模様である。これだけ緊縮しているのだから、財政破綻を心配したり、なぜ内需が不振なのかと悩んだりすることもなかろう。タコツボから頭をもたげ、経済の全体を眺めれば、容易に分かることである。 ……… 財政再建を声高に叫ぶ人は、財政しか見ていない。知見の出元になっている財政当局は、担当することがすべてだからだ。しかし、政府全体では、社会保障基金、要は公的年金だが、これが黒字を出しているので、赤字幅は、かなり縮小する。10-12月期の資金循環で、一般政府の資金過不足を見ると、年換算額のGDP比は-2.0%である。この水準は、リーマン・ショック直前を超え、おそ

    内需不振? だって緊縮してるもん - 経済を良くするって、どうすれば
  • 経済学を人類に役立てるために - 経済を良くするって、どうすれば

    たまたまなのだが、年末年始は、ジュディ・ダットンの「理系の子」とトーマス・カリアーの「ノーベル経済学賞の40年」を並行して読むことになった。前書の全米科学オリンピックを目指す子供たちの真実探求と問題解決にかけるひたむきさと、後書の「経済学は、そもそも何を発見したのか、何の役に立つのか」という根源的な疑念に貫かれた内容は、痛烈なほど対照的だった。 筆者も若い頃は、「常識的な知見を数式にしただけで、何がおもしろいんだ」と感じていたので、カリアー先生の疑念はもっともに思える。唯一、ケインズの「合成の誤謬」に触れたとき、「あぁ、この人は天才だ。現実の中に常識を超える知見を探し出してこそ、真の学問というものだろう」と感じた。そして、いまだ経済学は、これを超える「発見」をしていないのではなかろうか。 こうなってしまったのは、個々の利益の追求が最大効率をもたらすとする「経済学」が、政府の介入や規制を否定

    経済学を人類に役立てるために - 経済を良くするって、どうすれば
  • 「ユーロの正体」を読んで - 経済を良くするって、どうすれば

    はてブを眺めていたら、安達誠司さんがシノドスのインタビューに答えた「『ユーロの正体』の著者に聞く」があった。筆者は、安達さんの歴史研究を評価しており、このも、出るとすぐに読ませてもらった。ユーロ危機について、淵源からコンパクトに解説していて、頭の整理の役に立つ。「ユーロ導入によって長期金利が低下し、景気も良くなって、財政赤字が改善され、周辺国も加入条件を満たせた」というくだりは、押さえておきたいポイントだ。 では、「今後、ユーロ高の局面がある」という部分が目を引いた。実際、危機が小康状態となり、リスクが低下したせいか、ユーロは戻している。これに、銀行の体力低下による対外投資の巻き戻しによるユーロ高も出てくるとすれば、新興国にも影響が広がるから、先行きが心配である。また、ユーロ高は、中心国であるドイツ経済を牽引する輸出力を弱らせることにもなる。 政策論としては、粗く言ってしまえば、安達さ

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  • 経済運営から見たケインズ - 経済を良くするって、どうすれば

    山形浩生訳「一般理論」のイントロを書いたP・クルーグマンは、「料理に例えるならデサート」として、最終章は読みやすいとするが、果たして、読者は、どこまで深く読み取れるのかなと思ったりする。普通の人でもそれなりに読め、分かる人には深い意味が伝わる、そんな章のようにも見える。 ケインズは言う、「資の成長は、…低い消費性向に阻害される」と。まあ、普通は、消費という有効需要がないと、投資がなされず、資も増えないという読みだと思う。他方、分かる人からすると、高投資とは、イコール低消費なので、矛盾を感じる説明である。むろん、その問題を最終章までに解いて見せたのが「一般理論」ではある。 経済運営において、最も難しいのは、投資率を上げることである。GDPに占める投資の割合を上げることは、すなわち、成長率を上げることになるので、失業など、ほとんどの経済問題を解決することにつながる。教科書的、すなわち、古典

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