翻訳通信の主宰者である山岡洋一氏は、主要著作である『翻訳とは何か―職業としての翻訳』(日外アソシエーツ)において、「翻訳とは学び、伝える仕事で ある」(p. 100)とし、そのことを前提に「職業としての翻訳」(第6章)を論じている。また、「ある民族が別の民族から学ぶ一助になるのが翻訳なのである」(p. 275)とし、「文化としての翻訳」(最終章)を論じている。そして結論として、 「明日の日本文化を支える基盤を築く一助になるのが翻訳」であり、「翻訳[は]副業でも余技でもなく、職業として取り組むべきものである」と主張している (p. 279)。長年に亘り、翻訳に魂を注入し、翻訳と格闘してきた、まさに「戦う翻訳家」の異名をつけたい翻訳家の深淵な言葉である。 これはプロの翻訳者から見た「翻訳」の意味空間を表象した言葉であり、研究の視点から見た「翻訳」には、別の意味空間が広がっている可能性がある。そ

