クリント・イーストウッド監督最新作『アメリカン・スナイパー』はイラク戦争に4度にわたって遠征、アメリカ軍史上最多160人以上を射殺した伝説のスナイパー、クリス・カイルの半生を元に、残酷な戦場と幸せな家庭の狭間で精神が崩壊していく男の葛藤を描いた作品だ。現在日本でも大ヒット上映中の本作だが、本稿では映画では触れられなかったクリス・カイルを殺害した元海軍兵のエディー・レイ・ルース(以下ルース)の半生について書きたいと思う。決して多くは語られない伝説のスナイパー殺人事件の背景、そこにはアメリカが抱えるもう一つの闇があった。 エディー・レイ・ルース(27) 1987年、テキサス州で生まれたルースはダラス郊外の小さな町で3歳年上の姉と共に教育熱心な両親の下で育った。母親が小学校の教員助手だった事もあり、整った環境の中で教育を受けていたルースは、この地で幼少期を過ごす多くの少年達と同様、父親から猟銃の