毎日新聞火曜日夕刊コラム欄の第十二回(最終回)です。 団塊の世代とは、昭和二十二 (一九四七) 年から二十四(一九四九) 年の三年間に生まれた世代で、その数八百万人にも及ぶ。来年は団塊の世代が初めて還暦を迎える年である。 拙著「ウェブ進化論」 (ちくま新書) で、私はこれからの社会を「総表現社会」と定義した。IT(情報技術 )とネットの進化によって、私たち一人ひとりが、自分の考えや作品を自由に世界に向けて発信できる時代がやってきたのである。二〇〇六年のブログブームは、その先駆けである。 本欄の読者をはじめ、世の中には、途方もない数の「これまでは言葉を発してこなかった」面白い人たちがいる。私は「ウェブ進化論」の書評や感想をネット上で一万以上読み、そのことを心の底から実感した。人がひとり生きているというのは、それだけでたいへんなことなのだと思った。 たとえばあるとき私は「これは凄い書評だ」と目