藤森成吉の同名戯曲を鈴木重吉が脚色・監督した。公開当時に流行し、社会主義思想の影響を受けた「傾向映画」の代表作としても知られる。映画は大ヒットし、浅草では異例の5週間続映という記録を作った。また、翌年には新興キネマで鈴木監督・高津主演で『何が彼女を殺したか』が公開されている。1930年度のキネマ旬報ベストテンで第1位にランクインし、高い評価も集めた。オリジナルはサイレントだが、トーキーへの移行を見込んで最終エピソードのみ再撮影の上トーキー化したサウンド版も制作されており、初代江戸家猫八が効果音を担当した。しかし、使用されたレコードは現在も行方不明となっている[3]。 公開から半年後の1930年9月30日の夜半に、帝国キネマ長瀬撮影所が火災にあい[4]、また1931年に解散したこともあり、フィルムが紛失したまま「幻の名作」とされていた。キネマ旬報の「日本映画シナリオ古典全集」に台本が収録され