嗅覚と記憶には密接な関係があり、認知症になると嗅覚が衰える。反対に、嗅覚を刺激すると認知機能が改善されるという報告もある。そこで、高齢者の認知機能を改善するためのVRゲームが考案された。ただバーチャル空間を歩くだけのものではなく、さまざまな香りを提示する「嗅覚ディスプレイ」を用いた嗅覚VRゲームだ。 これまでも香りを使った認知機能改善の研究は行われてきたが、直接匂いを嗅がせるしか方法がなく効果に限界があった。そこに現れたのが嗅覚ディスプレイだ。東京科学大学総合研究院の中本高道特任教授は、2022年、さまざまな香りの元になる「要素臭」を20種類特定し、その精油を調合して瞬時に望む香りを提示する装置を発表した。パソコンやスマホのディスプレイが光の3原色を組み合わせたフルカラーの映像を作り出すように、要素臭から数多くの香りを作り出すことから「嗅覚ディスプレイ」と名付けられた。
